ホテル ザ セレスティン銀座総支配人が語る、ホテル業界における「予約」の課題とこれから

ホテル ザ セレスティン銀座総支配人・川幡さま

2017年10月に銀座にオープンした「ホテル ザ セレスティン銀座」。三井不動産ホテルマネジメントから新たに生まれたブランドは、「華麗なる静謐」をコンセプトに、邸宅のようなホテルが銀座に新たな魅力を生み出しています。

今回は本ホテルを統括する川幡直樹総支配人に、ホテルにおけるこれまでの予約管理の歴史と今の課題、そしてこれからについて伺いました。

約30年間、観光業界の現場に

予約ラボ まずご経歴についてお伺いさせてください。

川幡さん 三井不動産ホテルマネジメントの前はOTA※1におりました。ネットでの航空券販売がメインの会社なのですが、そこで法人事業部とインバウンド事業室に在籍していました。
さらにその前は、ホテルや旅館の事業再生分野で働いていまして、新卒でシティホテルに入社してから、ずっと観光業界に勤めていることになります。バブル後半の時期に入社し、ホテル業界が絶好調の時期からその後、下降する時期。そして昨今のインバウンド需要で再び盛り上がる時期までを経験していることになりますね。

※1 OTA(Online Travel Agent):インターネット上だけで取引を行う旅行会社

ホテル ザ セレスティン銀座の外観と内装。銀座の中でもハイクラスホテルとして開業から高い稼働率を誇っている。

当時の予約受付は「電話」と「FAX」

予約ラボ 早速ですが、「予約管理」についてお伺いさせてください。シティホテル当時、お客様からの予約はどのように受けていたのでしょうか?

川幡さん電話やFAXです。お客様の予約管理自体はどのホテルでもPMS※2で管理していましたが、予約の受け口としては電話が基本でした。
JTBさんのような大手は予約専用の端末を持っているところもありましたし、GDS※3という今でも航空業界が使っているシステムを使っているホテルも一部ありました。
ただし、当時は携帯電話も発売される前。『じゃらん』のような雑誌媒体もありましたが、当然、インターネット予約はなく、直接、ホテルや旅館に電話するのが主流でした。

※2 PMS(Property Management System):ホテルや旅館の宿泊について管理するシステム
※3 GDS (Global Distribution System):コンピューターを利用した 旅行関連の予約・発券システムの総称

予約ラボ電話でほぼすべての予約が来ることは大変だったのではないでしょうか?

川幡さん日本中のホテルがみんながそうでしたからね(笑)
在庫(空室)の管理はPMSを使っていましたが、予約の管理・コントロールはホワイトボードのようなものに手書きで書き込んでいました。ブッキングコントローラーが人力で対応し、システムを使ったコントロールは全くなかったです。当然みんなパソコンを使っていなかったので、それで困ることはなかったですね。

抵抗も生まれた「インターネット」導入期

予約ラボ その後は時代の流れとして、システムを導入していったのでしょか?

川幡さん当時、シティホテルでインターネット導入担当だったことがあります。ただインターネットというもの自体がわからないんですよ。“WWW”(World Wide Web)とはなにか、から始まって、メールがどういうものかも誰も知らなかったんです。
それでもインターネット導入担当として色々調べて、ホームページを立ち上げたのですが、これで予約が入るのか・・と当時の社長に怒られたのを覚えています。

予約ラボ その段階ではホームページを作って、メールで予約を取ろうという話だったのですか?

川幡さんそこまではいきませんね。まずはホームページを作ろうとか、メールというコミュニケーション手段を加えてみよう、というレベルでした。画像が出てくるにも2,3分かかっていた時代ですから。

予約の95%がネット経由。在庫と値段の管理がシステム化してきた。

予約ラボ次のステップとしてはどのように進んでいったのでしょうか?

川幡さん『じゃらん』や『楽天トラベル』が出てきて、一気にネット予約の時代に入っていきました。ただ当時、ホテル業界としてはそれをやっていいのか?という感じでした。
というのも、それまでの予約はエージェントさん経由か電話での直接予約だったのですが、じゃらんや楽天トラベルが入ってきてからは、ホームページから直接予約が入るようになりました。となるとエージェントさんを経由することがないので、それはエージェントさんのお客様を取ってしまっているのでは、という考えがありました。
当時、いち早く、ネット予約に対応した関西のチェーンホテルさんに関して、「ホテルがエージェントを中抜きした」という新聞記事が大々的に掲載されたこともありました。ネットが商流を乱すのではないか、ということに対して大きな抵抗がありましたね。

予約ラボ 現在はインターネット化が進み、ユーザー側としては便利になった感覚がありますが、ホテル業界側としてのメリットは増えたのでしょうか?

川幡さん増えたと思います。例えば、当ホテルで言えば、現在は予約の95%がネットからになっています。電話での予約は5%程度しかありません。
サイトコントローラー※4の普及も相まって、在庫や値段の管理もやりやすくなり、ネットを通じて瞬時に在庫やレートを変えられるようになりました。

※4 サイトコントローラー:複数の宿泊予約サービスを一元管理できるオンラインのシステム

ホテル ザ セレスティン銀座の内装

予約ラボ予約データや顧客データを蓄積していくことによって、それを分析し、適切な値段・在庫管理・サービスを設計するようなことはされているのでしょうか?

川幡さんレベニューマネジメント※5の部分ですよね。ほとんどのホテルでは、ブッキングコントロールを自動最適化するところまでは至っていないと思います。現在は人のスキルベースで、キャンセル・ノーショーの可能性、イベントの有無などを考慮して需要予測を行い、価格と在庫を最適化しているのが主流です。
顧客データに関しても、ホテル単体でシステム部を持てていないこともあり、ホテル側はそこまで活かしきれていないのが現状ではないでしょうか。データを活用して、なにかをクロスセルしよう、という業界ではないので、多くのホテルでは費用対効果が見合わない、というのが正直なところだと思います。
もちろん、部屋数と会員数も多く、常連のお客様のリピートがほとんどを占めるホテルであれば、メリットがあると思いますが、その時々によって、ホテルのホームページ、じゃらん、楽天トラベル、旅行代理店など、予約する経路を変えているお客様が多い。予約を受ける経路がバラバラだと、顧客情報を統合して分析がしづらい、という障壁はありますね。

※5 レベニューマネジメント:需要予測をもとに販売をコントロールすることで収益の拡大を目指す体系的手法

旅前・旅中のアクティビティやレストラン利用も、ネット予約化できる。

予約ラボ川幡様として、今後ホテル業界はこの方向で進化していった方がいいなどのお考えはありますか?

川幡さんいわゆるクロスセルというか、旅行会社のように売れるものは売ったほうがいいと思っています。例えば、旅前・旅中のアクティビティをどんどんネット予約できるようにする、などです。
現状、当ホテルにおいては、宿泊いただくお客様からはアクティビティよりも、レストランを予約してほしいという要望を一番多くいただいています。今はコンシェルジュが人力でさばいていますが、ここにも課題があり、コンシェルジュはハンドリングに試行錯誤しています。
海外ではコンシェルジュのシステムが存在するようなのですが、日本ではまだありません。この課題を解決するシステムは今後、国内でも出てきて欲しいところですね。


予約ラボ現状はどのように対応されているのでしょうか?

川幡さん宿泊予約以外の「予約」に関する要望に対して、現状はExcelで対応しています。Excel以外の方法も検討したのですが、まだコストも時間もかかりそうなので、まずは営業支援ツール※6を入れてみたところです。
その中で何が難しいのかが見えてきたのですが、お客様からのリクエストはかなり不確定要素の高い状態でいただくのです。
例えば、チェックインからチェックアウトするまでのどこかの日で、どこかの天ぷら屋さんの予約が取れれば良く、ランチでも、ディナーでもどちらでもいいというようなご要望が多いのです。そうした要望を現状のシステムで対応することは難しいため、人力で対応せざるを得ない状況があります。
現在は、Excelの延長で対応していますが、将来的にはお客様からご要望が上がった時点で予約内容を固めてハンドリングし、できるだけスムーズな予約対応を実現していきたいですね。
宿泊以外のお客様からのリクエストに対して、どのスタッフでも質の高い情報提供、素早い対応ができるようにしていきたいと思っています。

※6 営業支援ツール: webデータベース型の業務アプリ構築クラウドサービス。マウス操作で直感的に自社に合ったシステムが作成できる

まとめ

ホテル業界でも進むIT技術。ホテル ザ セレスティン銀座の場合、ネット予約が95%と、多くのユーザーがネットを通じて予約をするようになり、ホテル側にもユーザー側にも多くのメリットをもたらしました。

ただその一方で、今回話題に上がった予約受付ではまだかなりアナログに対応している面があり、予約データ・顧客データの活用に関してはまだ道半ばのようです。

やや保守的な傾向もあるというホテル業界において、川幡直樹総支配人のような新しい考えを持ったリーダーと、今の技術と既存の課題を結び付けられるような人材が今後業界を大きく動かしていくのかもしれません。

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