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ECサイトが実店舗を構えるケースが増加中!その意図とは?

ビジネス

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2018.03.28
予約ラボ編集部

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ECサイトで商品・サービスを提供してきた事業者が実店舗を構えるケースが増えてきています。実際に商品を手に取ってみたいという消費者のニーズに応えたり、潜在顧客層にアプローチしたり、話題作りのためにポップアップストアを出したりと狙いはさまざま。

店舗を持たずにコストを削減してきたECサイトの事業者。運営コストの増加や在庫管理など一定のリスクを抱えながら、あえて出店するケースが増えたのはなぜでしょうか。

ECサイトが実店舗を構える理由

時間や場所を選ばずに買い物できる点が魅力のECですが、購入前に商品を手に取れないという課題もあります。商品を確認できないことで、特にアパレルなどでは、サイズが合わない、色味や素材感がイメージと違うといった、消費者の想像と実際の商品との間にギャップが生まれることは少なからずあるでしょう。

このギャップを解消するため注目されているのが、常設店をオープンする・ポップアップストアを利用するなどの「O2O戦略」です。O2Oとは「Online to Offline」の略。ECサイト(オンライン)で情報を知った顧客を実店舗(オフライン)に誘導したり、実店舗で気に入った商品をECで注文してもらう販売戦略のこと。自社の商品・サービスを購買してもらうために、オンラインとオフラインが連携し、相乗効果での売り上げ増を目指します。

D2C (Direct to Consumer)モデルの台頭も、実店舗を持つECが増えている理由のひとつ。D2Cとは、自ら企画・製造した商品を自社ECサイトのみで販売するビジネスモデルのこと。中間業者を極力省き、質の高い商品をリーズナブルな価格で提供することを可能にしているD2Cモデルですが、実店舗を持たないことで顧客層がある程度限定されてしまうデメリットもありました。

経産省の調査によれば日本のEC化率はまだ5.43%。アメリカの7%、中国の15%に比べると日本のECサイトはあまり普及しているとは言えません。

参考:平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)

いまだに多くの取引が非ECで行われているため、D2Cモデルの企業もポップアップストアやショールーム形式の実店舗を持ち、新規顧客獲得やECサイトのフォローアップ体制を整えようとしています。

ポップアップストアと常設店の狙いの違い

実店舗の出店形式には、大きく分けてポップアップストアと常設店の2パターンがあります。かかるコストも店舗の展開できる幅も異なるそれぞれの狙いはどのようなものでしょうか。

ポップアップストアは、期間限定の一時的な店舗。常設店と比較すると規模が小さい事が多く、コストを抑えられ、事業者は柔軟に販売を行うことができます。

カフェを併設したり、限定コラボ商品を企画してECサイトと異なる雰囲気を演出するなど、常設店と比べるとユニークな業態が取られやすいという特徴もあります。SNSでの投稿を増やすため、話題性をもたせたり撮影ブースを設けるケースもみられます。

一方の常設店は、商品を試せるショールームとしての役割、購入後のメンテナンスやフォローを行うサポート目的で出店されるケースが目立ちます。具体的にそれぞれの事例を見ていきましょう。

ポップアップストアを次々に展開するECサイトの巨人『Amazon』

AmazonはAmazonプライム10周年を記念し、2017年7月9日〜7月11日までの期間限定でポップアップストアを六本木にオープンしました。Amazonプライムの特典・サービスを無料で体験できるコーナーを用意。イベントなどが開催されました。

来場者は、生鮮食品を取り扱う『Amazonフレッシュ』の試食や、100万曲が聴き放題の『Prime Music』の視聴、電子書籍サービス『Kindleオーナーライブラリ』の閲覧など、各種サービスを無料で体験。

専用ボックスに日用品を詰めて配達する『Amazonパントリー』では、ボックスにぴったり3kgの商品を詰めることができた来場者にAmazonギフト券を進呈。最短1時間で商品が届く『Prime Now』注文体験では、先着で毎時間10名に商品プレゼントを行いました。

本イベントは、Amazonプライムが提供するさまざまなサービスを知ってもらい、Prime会員を増やすことが狙い。Amazonはこのほかにも銀座にBarを出したり、年末のセール時期に合わせて渋谷に限定ストアをオープンしたりと、多数ポップアップストアを展開し、消費者とのリアルな接点を増やす動きを見せています。

作品の展示・販売だけでなくワークショップも開催!『minneハンドメイドマーケット』

手軽にハンドメイドの作品を売買できるサービス『minne』は、渋谷ヒカリエShinQsにてポップアップストアをオープン。2018年1月11日〜24日の期間限定開催、minneで活躍する100名以上の作家による10,000点以上の作品が集結しました。

作品の展示・販売を渋谷ヒカリエShinQsの4フロアで展開。各フロアごとに、お菓子、小物、ファッションアイテム、インテリア雑貨の4つカテゴリに分離し、統一感を演出。

作家自身が売り場に立つ対面販売や、初心者でも参加しやすいワークショップなど、人気作家と直接コミュニケーションが取れる取り組みも。 スクイーズやオリジナルパフューム、刻印キーホルダー、つまみ細工などバラエティに富んだワークショップが多数開催されました。

このイベントは、実際に商品を手に取れるだけでなく、作家と消費者が交流することでファンを作り、今後の購買につなげていこうという試み。作家側も消費者の反応を直接確認できるので、作品作りの励みになります。

『minne』は定期的にポップアップストア形式のハンドメイドマーケットを開催するだけでなく、東京世田谷、神戸、福岡の3カ所に常設のアトリエも設けています。ワークショップや勉強会の開催はもちろんのこと、作品の撮影スペースや作家同士の交流の場を作ることで、ECサイトだけではカバーしきれないきめ細かいフォローを行っています。

恵比寿にショールーム形式の常設店をオープン!EC専業家具ブランド『LOWYA』

『LOWYA(ロウヤ)』は高デザイン・高品質・低価格を実現させている家具ブランド。実店舗での販売を行わず、開発から製造販売まで一貫体制をとることで極限までコストを抑え、幅広い年齢層に支持されています。2014年からは家電開発にも参入しました。

自社ECサイトはスマホからのアクセスが7割を超え、「スマホで家具を買う」体験を提供してきたLOWYAですが、2016年3月15日、東京恵比寿にショールーム形式の常設店をオープンしました。

家の中で大きな存在感を放つ家具は、実際に目で見て確認したいお客さまも多く、ショールーム形式の店舗をオープンすることでニーズに応えました。常時50点ほどの商品を展示し、ECサイトでは伝えきれない質感や使用感を確認することができます。

ショールーム形式では来店予約をしなければならない場合が多いのですが、LOWYAのショールームは予約不要。展示商品はLOWYAサイトで確認できるので、気になる商品があればいつでも気軽に訪れることができます。インテリアについて幅広い知識を備えたコーディネーターが常駐し、コーディネートの相談や製品の紹介をしてくれる点も魅力。

ECサイトフォローのため直営店をオープンしたメガネブランド『Oh My Glasses』

『Oh My Glasses 』は世界中のメガネを取り扱うメガネオンラインストア。日本人の顔かたちや生活スタイルに合うオリジナルブランドも展開しています。試着や細かなサイズ合わせが必要なことから、通販は難しいとされてきたメガネですが、常識を打ち破るきめ細かいサービスを提供することで業績を伸ばしてきました。

『Oh My Glasses 』が提供する試着サービスでは、気に入った製品を5本まで自宅で試すことが可能。手持ちの服と合うかどうか確認したり、身近な人から意見をもらったり、じっくりメガネを選ぶことができます。

購入後のサポートも充実。届いたメガネを使ってみると、なんとなく度数が合わない気がする…そんな時は3カ月以内ならレンズ交換を無料で行えます。

オンラインでも顧客満足度の高いサービスを提供する『Oh My Glasses 』ですが、東京を中心に千葉、神奈川、大阪、広島に直営店をオープン。試着商品の返却や視力測定、商品のクリーニングなど、オフラインでのサポートを行っています。

オンライン経由で商品を最寄り店舗に取り寄せ、購入前に試着やフィッティングを行うことも可能。経験豊かなスタッフと相談した上で購入が可能です。

直営店のみならず、ポップアップストアも多数展開。蔦屋書店やロフトなど『Oh My Glasses 』の顧客に近い層が多数来店する場所を選び、既存客サポートや新規顧客へのアピールに努めています。

変わりゆく実店舗の存在意義

商品を手にとり、吟味して買う時代から、ECサイトを活用して手軽に買い物を楽しむ時代へと変化してきた昨今。店舗で確認してからネットで買う、『店舗のショールーミング化』やフリマアプリを活用した中古市場の伸びも加速しつつあり、買い物の仕方が多様化しています。

ECサイトのメイン顧客であるミレニアル世代やZ世代では、「店舗で試着したあとネットで買いたい」「すぐ欲しいからネットで注文して最寄り店舗で即日受け取りたい」など、従来とは異なる目的で実店舗を活用するケースも目立つようになってきました。

こうした消費者の流れに応え、ショールーム形式の店舗やオンラインのサポート業務のための直営店を出すECも増えてきています。商品を購入する場ではなく、購入前の意思決定をサポートしたり、アフターサービスを行う場所としての実店舗が存在するようになってきているのです。

今後EC化が進むに連れて、実店舗の役割はますます多様化していきそうです。

文/野口美晴 編/小山和之

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