美容院店長兼飲食店オーナーに聞く、顧客体験を高めるための予約の役割とは?

日常の様々な場面で必要となる「予約」。ネットが発達した現代では、電話だけでなく、オンラインで手軽に予約できるサービスも数多く存在します。一方で、経営の現場にとって予約とはどのような意味を持つのでしょうか。

そこで今回は、Hairsalon BREEN Tokyo店長を務めながら、焼肉 森の家オーナーとして現場にも立つ松川竜道さんにお話を伺いました。

美容室×&飲食店という異色の組み合わせですが、双方とも予約が重要な業態なのは間違いありません。お客さまによりよいサービス提供するための予約の在り方をインタビューしました。

チェックすべきは3ヶ月以内に再来店する人数——予約データからサービスを改善する

星野:松川さんは、美容室の店長で焼肉店のオーナーと伺っています。今日は、特に予約が営業の基本である美容室のお話をメインで伺いますね。店長としてのお仕事は接客以外に何をされているのですか?

松川:主にシフトの管理やお客さまへの販促、集客などに携わっています。特に販促と集客において、予約から得られるデータを活用し、お客さまにより良い体験を提供できるよう、サービス改善へとつなげています。

Hairsalon BREEN Tokyo店長/焼肉 森の家オーナー 松川竜道さん

星野:美容院の予約ですと、個々のお客さんの性別や年齢から、来店回数や頻度などの幅広いデータが集められますよね。具体的にどのようなデータに注目されているのでしょうか?

松川:美容院にとって大切なのは、お客さまの再来店率です。それを測るために、「何ヶ月ごとに来店されているか」という来店頻度に注目し、何ヶ月後に再来店いただけたかでカルテを4段階に分類。中でも当店では、3ヶ月以内に再来店していただけている方のカルテを「稼働カルテ」と呼んでいます。この稼働カルテの数を増やすことが特に重要なんです。このようにお客様の状況をデータで管理することで、再来店いただけなかったお客さまの接客に、どのような改善余地があるかなどの戦略を立てやすくなるんです。

うちのサロンの課題は、3回目に来てもらえるかどうかですね。現状は10名新規のお客さまがいらっしゃっても、3回目に来ていただけるのは2名だけ。リピーターになっていただくためにも、いかにサロンで心地よい体験をしていただけるかというUX(ユーザーエクスペリエンス)を高められるよう配慮しています。

たとえば、ご来店いただいたときにスタッフがご挨拶に向かうとか、施術前のヒアリングで丁寧にお話を伺うとか、ご来店いただいたあとに頃合いを見計らってお手紙をお送りするといった工夫をしています。その一環として、予約のUXをより良くできたらと考えることはあります。

星野:サービスを受ける前段階のUXが高いと、そこをまた使おうという気持ちになれますよね。私も松川さんの美容院にお世話になっていますが、確かに細かい気遣いが印象的でした。個々の美容師さんもデータを元にサービスの改善を図っているのでしょうか?

松川:はい。週に2回、情報共有し、改善に向けたミーティングを行っています。どのようなタイプのお客さまが離店されるのかを分析した上で、必要なトレーニングを考えたり、サービス向上のための勉強会を開いたり。

星野:週に2回も!内容もかなり密なんですね。美容室はカルテが作れるからこそ細かい戦略作りができますが、焼肉屋で同じことを実践しようとしたら難しいですよね。

松川:そうなんですよ。たとえばご予約いただいたお客さまの性別と年齢さえわかれば、用意するお肉の肉質の種類を多少変えるなど、ある程度UXを高める工夫ができるんです。ですが今は電話での予約受付しかできていないので、情報が取得できず、戦略を立てるのが難しい。美容院とは勝手が違いますね。

予約ラボ所長 星野陽介

星野:美容院は電話とオンラインの両方で予約できるんですよね?それぞれの予約のメリットやデメリットって何でしょうか。

松川:電話でご予約をいただく場合は、すぐにその場で空き時間を確認して最もお待たせしない時間をご案内できるため、効率的な営業に繋がります。ただ、電話での予約ばかりが立て込んでしまうと対応をするためにスタッフのリソースを割かなくてはならないのが難しいところですね。

オンラインの場合は、接客以外の時間で対応ができるので現場のリソースは確保できます。しかし、予約を受けた時点で自動的に一定の時間がブロックされてしまうため、特に空ける必要のない時間に空白ができてしまうことがしばしばある。そこがネックですね。

予約=予測。現場を回しながらお客さまにとって最適なタイミングをご案内したい

星野:確かに、美容院のように個々の美容師さんの空きと鏡の数に加えて、施術メニューによる所要時間の違いを組み合わせる業態だとオンライン予約は稼働効率が落ちるリスクもあるのですね。飲食店は配席の采配問題もありそうですが、利用者側としてはオンライン予約はやはり便利です。ただ、美容院に比べて、飲食店の予約無断キャンセルって怖いですよね。10名の団体予約で、当日連絡もなく来ませんでした…なんていう場合特に。

松川:間違いないですね。特に焼肉店のように原価の高い食材を提供していると死活問題です。

星野:美容室だと、一度固定客になってしまえば美容師さんとお客さんの一対一の関係性になるので、無断キャンセルは起こりにくくなりそうです。反対に、飲食店のように一回きりの関係になりやすい業態だと、関係性が築きにくいからこそ無断キャンセルが起こりやすいのかもしれません。あるいは、急な人数変更やキャンセルをしたくなってもわざわざ電話をするのは面倒ですし、そもそも予約時に店舗と幹事さんとの間で予約ステータスの確認がとれているのか、という問題もあるのかなと思います。

松川:美容室に継続的に来てくださるお客さまは、次回の来店日をその場で決めてくださる方が多いんです。予約全体の約4割はその枠。これは店舗経営的にすごく重要で、だいたい3回ほどご来店いただくとそのお客さまが髪を切る周期がわかるので、再来店を打診しやすくなります。

星野:リピーターが4割入るのは大きいですね!施術後に再来店の予約を促す工夫は、サービス業における不確実な需要を事前に確保して売上予測が立てられるという点で重要な施策ですし、お客さんとしても改めて予約する手間が省けるので非常に便利ですよね。先程おっしゃっていたようなカルテの分類もこういうところに効いてくるんですね。焼肉店の場合、来客数の予測はできるんですか?

松川:それが実は全然できないこともしばしばあります(笑)。たとえば金曜日なんて絶対に大勢の人が来そうじゃないですか?でも、うちの店舗は池袋の隣駅にあるので、金曜日は池袋まで出られる方が多く、店は空いているんです。近所にある競合の焼肉屋の定休日とうちの定休日を敢えてずらしているので、競合店の定休日と土日はほぼ確実にフル稼働です。でも、それ以外が全く予想がつきません。たとえば、先日大雪が降った日は、なぜか大忙しでした。

星野:それはびっくりですね(笑)。焼肉店で、美容院で導入されているようなオンライン予約を導入する予定はないんですか?

松川:管理側では、予約台帳としてレストランボードを利用して、スマホのアプリで予約状況を確認しています。一方、オンライン予約の方は、お客さまのデータを取りたい気持ちはあるのですが、今のところは難しいかなと思っています。というのも、「焼肉森の家」の客単価は平均4,000円ほど。ひとり4,000円の店に行くために予約はあまりされません。導入にかかるコストと比較すると微妙だろうと考えています。
また、忙しい時間帯に当日オンライン予約が入ると、予約を見逃して取りこぼす恐れもあります。時間に対する一人あたりの生産性を金額で表す「人時生産性」という指標があるんですが、美容室ではこれが4,000円を超えると「忙しいな」と感じます。一方焼肉店では、一番忙しいとき6,000円を超えていることもある。その状態だと目先の仕事以外本当に何もできなくなるんです。そこで入る急な予約が怖いですね。

星野:それこそ予約システム側で、2日前まではオンライン予約OKといった制御をしてみたりするのはどうでしょうか。また、稼働率アップを狙って、サービス在庫が消滅するギリギリまでネット予約を受付ける場合も、通知の仕方を工夫すれば、電話が突然かかってくるよりはスタッフの業務を妨げずに、機会損失リスクを減らせるかもしれませんね。

信頼関係を築きたいなら、メッセンジャーのような気軽さを

星野:以前、松川さんとFacebookのメッセンジャーを通して予約をさせてもらったときに「これすごく楽だな」って感じたんです。さきほども言いましたが、やはりお客さんにとって予約という行為は手間ですから。メッセンジャーとかLINEみたいな形で予約を受けるチャネルがもっと増えてほしいなって個人的に思います。

松川:確かに便利だと思います。ただ、僕はお客さまとコミュニケーションをとるのが好きなのでアリだなと思っていますが、マメな人でないと続かない気もしますね。レスポンスが遅いと入りかけた予約を逃してしまうかもしれない。いかにコミュニケーションを途切れさせずスムーズに予約に繋げるかが鍵だと思います。そこが円滑に回せるようになれば、お客さんとの距離も縮まりやすそうですね。

星野:お店にとって大切なのって、お客さんとの関係性ですもんね。焼肉店の方でも、継続的な関係性が作れれば、無断キャンセルも減るでしょうし、リピーターのお客さんを増やすこともできると思うんです。

メッセンジャーのような「コミュニケーションのしやすさ」に重きに置いた予約方法は、電話をかける習慣やタイミングがあまりない層や、電話が苦手なお客さんにとって予約しやすくなることはもちろん、お店にとっては混んでいない時間を打診できるメリットがあります。混んでいない時間であれば落ち着いて過ごしてもらえる。そこで良い体験を提供できれば、また利用しようという気になるかもしれない。

来店当日のカットのスキル、お肉のおいしさ、接客といったサービスの中核となるUXに配慮される方は多いと思うのですが、お客さまにとってサービスのUXは、すでに来店前の認知から始まっていますよね。その中でも、「予約」というポイントは、お客さまとの最初のコンタクトポイントの場合もあるわけです。なので、サイト閲覧~予約手続き~予約確認~予約日時に店舗へ移動~店舗到着といった、来店前のUXに着目してみるのもサービス体験を改善する上では、とても大きな可能性を秘めていると思います。

文/藤坂 編/小山和之

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