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4Pでは不十分?「サービス」を売るための7Pとは?

ビジネス

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2018.07.10 2019.04.26
星野 陽介

予約ラボ所長。2012年に(株)リザーブリンクに入社し、3000件以上の予約管理の課題解決に関わる。国内最大規模のクラウド型予約システムであるChoiceRESERVE事業部責任者を経て、2018年より予約ラボ所長として、利用者と事業者双方の視点で「予約の知見」と「サービスの現場」を研究・発信中(twitter)。旅、料理、野球が好き。1985年浦和育ち・世田谷在住。「予約」と「サービス・マーケティング」の専門性を活かした顧問サービスのご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

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先日、父の日記念で、義父と恵比寿でランチをすることになり、一休.comレストランでお店を予約しました。その日は、「恵比寿」「ランチ」「日付」「禁煙」「価格」で絞り込み検索をして、気になるお店があれば、駅からのアクセス、お店の雰囲気、メニューの詳細を確認。実は私の場合、一休だけでは決められず、このタイミングでGoogleマップを検索します。理由は、Googleマップで地理感覚と移動時間をつかみたいのと、そこにアップされている写真が見たいからなんです。一休の写真は、とても綺麗に撮影されている反面、利用者がiPhoneで撮影するような生々しさには欠けるため、実際どんな雰囲気のお店なのかを理解するために、両方の写真を見ることで、おおよその検討をつけておきます。これは、サイト上のきれいな写真に乗せられて、現地でがっかり、、という過去の経験からくるもので、私なりのリスクヘッジ策です。もしかすると人によっては、インスタやFacebookを参考にする方もいらっしゃるでしょう。

実は、こういったユーザーの行動が、無形商材の販売を考える上で、重要だと考えています。前回の投稿で「無形商材/サービスを売るためには、まず5つのサービスの特性を押さえたい。」ということで、「無形性」「異質性/非均一性」「同時性/不可分性」「消滅性」「変動性」について簡単に紹介させていただきました。私がレストラン選びでとった行動はまさに、この無形性や異質性から来る「現地でがっかり、、」なリスクを回避するために、必要な情報を他の情報源から補足しているということになります。

少々回りくどい話にはなりますが、今回はこれら5つのサービスの特性から生じる利用者のリスクをどのように回避するのかを考えるためのフレームワークをご紹介します。それがタイトルに記載した7Pです。

※初めて、予約ラボの記事にたどり着いていただいた方は、前回投稿の「なぜ予約ラボがサービス・マーケティングを語るのか?」という文章だけでも併せてお読みいただけますと幸いです!

無形商材/サービスを売るためのフレームワーク「7P」とは?

いわゆるマーケティング・ミックスの4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:プロモーション)に、あと3つ(People:人、Physical evidence:物的環境、Process:提供過程) を付け足して7P。これを手元の書籍・論文では「サービス・マーケティング・ミックス」などと呼ばれています。もっと簡単にいうと、「誰が」「どんな雰囲気で」「どんな順序で」サービスが提供されるのかと理解しています。Productに、この3つを含めて考えることもできるかと思いますが、この3つをあえて切り出しておくことで、私の中ではサービス商品の訴求時、より漏れなく考えられるようになりました。これは余談ですが、利用者としてサービスを選択する際も、自分がどこに「がっかり」するのか、ポイントを押さえられるようになったので、情報収集時に役立っています。

People:誰がサービスの提供に関わるのか?

ヒトサラ「料理人名鑑」より引用ヒトサラ「料理人名鑑」より引用

今回は、飲食店選び&予約で、一休.comレストランを利用したのですが、他にも株式会社USEN Mediaが提供するヒトサラを利用することがあります。ヒトサラは「料理人の顔が見えるグルメ・レストランサイト」とうたっており、まさに「誰が」どういうこだわりで料理を提供しているのかを知ることができます。飲食店の場合、料理という有形財があり、それを写真やテキストで表現することはできますが、こうして料理人の顔や経歴が見えてくると、お店の運営方針や素材の仕入れなど、その飲食店が本来提供する品質を知る手がかりになります。よく「創業者の想い」や「現場スタッフの一日」といったコンテンツがありますが、競合店・競合サービスとの差別化をする上でもサービス提供側の「人」に着目することは一つ重要なポイントだと思います。

さらに言うと、サービスの提供においては、利用者側もその品質に影響します。飲食店向けの予約ソリューションを提供するTableCheck社の谷口さんもおっしゃっていましたが、一部の高級レストランなどは「AさんとBさんは隣り合わせのテーブルにはしない」といった配慮までされるそうです。本当は静かにご飯を食べたかったのに、隣のお客様が大きな声でお話をされていて、雰囲気が台無し、、といったご経験が皆さんにもあるかもしれません。「利用者の声」や「口コミ・レビュー」「事例紹介」といったコンテンツは、どのような人がサービスを利用しているのかを知る一つの手がかりとして存在していると捉えることができます。

Physical evidence:どんな雰囲気でサービスが提供されるのか?

「物的環境」というと、またお固い感じがしてきますが、簡単に言うとお店の「雰囲気」を大きく形成する項目と捉えています。飲食店で言えば、その内装・インテリアや家具、カトラリーや食器、ピザ窯や鉄板などの設備にあたる部分。4PのPlaceは、どちらかというと流通や立地に関する項目で、Physical evidenceは、形のないサービスの中でも有形物としてサービス品質の手がかりになる項目です。

株式会社HUGEより引用株式会社HUGEより引用

レストラン ダズルやリゴレットを展開する株式会社HUGEのコーポレートサイトTOPでは、各店舗の重要なPhysical evidenceであるインテリアを写真で大きく表現し、各ブランドを伝えようとしているように感じます。私も利用させていただいたことがあるのですが、HUGE社の場合は、写真の描写と実際の雰囲気にあまり相違がないと感じました。ただ、HUGE社の場合「100年前も、100年後も、人が人を迎える場所。」とうたわれており、テーブルごとに担当がつくようなサービススタイルになっているので、リクルートサイトで表現されているようなPeople重視の打ち出しも見てみたいなと思ったりもします。

Process:どんな順序でサービスが提供されるのか?

3つ目の「P」はサービスのProcess=提供過程です。私が今回、父の日に利用したレストランであれば、前日に座席とコースを予約をして、当日現地に行き、予約内容を伝え、全員がそろい次第ウェルカムドリンクを選択、次に前菜を選択、メインを選択と、順々に料理が出てきて、途中途中でお水をつぎにスタッフの方がいらしたり、ワインを勧めてこられたり。最後にデザートと飲み物をチョイスし、会計をして、お店を出る。。といったサービスプロセスがありました。「当たり前じゃないか!」と怒られるかもしれないのですが、お店によっては選択肢のないコース料理もありますし、お水をつぎに来ないオペレーションも存在します。もっと特殊な事例でいうと、渋谷にある「きになるき」は店主の営業スタイルならではの予約方法(予約システムで予約後、さらにFBメッセンジャーでメッセージを送って予約完了)や、サービス手順(食事やお酒が店主の説明とともに提供され、焼酎はおススメの銘柄で提供されるなど)があります。

このようなサービスにおけるProcessを写真やイラスト、テキスト、動画などを使って丁寧に説明しておくことで、利用前後の期待値と実際のギャップが生じるリスクを一部回避することが可能です。仮に「きになるき」で、自由に注文ができると思ってご来店された方がいらっしゃると、本人の不満足と同時に、それが他のお客様にも伝播して、その日のお店全体のサービス品質に影響する可能性すら起こりえます。きになるきは、サイト上のテキストと、利用者による体験ブログ、口コミでその点を補っていると言えます。

Tadakuより引用Tadakuより引用

最後に、他の事例とは毛色の異なるサービスのプロセスを可視化している事例を紹介します。Tadakuという、日本在住の外国人=ホストが自国の家庭料理で、異文化の食体験を提供するCtoCサービスです。キャプチャのように、まずはウェルカムドリンクをいただきつつ、ホストの家に全員が集まったら、ホストを中心に複数名のゲストと一緒に料理を一緒につくります。その間に異文化を学んだり、秘伝の味を教えてもらったり、最後はつくった料理を一緒に食します。この3時間~4時間をぎゅっと凝縮したのが上に掲載した「当日の流れ」です。普通のレストランとも、料理教室とも異なる、CtoCの新しい食×体験領域のサービスだからこそ、そのサービスが一体どういう流れで提供されるものなのか、相対的に理解されにくいことが予想されます。「当日の流れ」というコンテンツは、Tadakuを認知したゲストにとって、Tadakuの本当の価値を知る重要な手がかりになっていると思います。

ちなみに、この投稿をじっくり読んでくださった方は、すでにお気づきかもしれませんが、TadakuのProcessの表現では、PeopleやPhisycal evidenceも含まれていることに注目して欲しいです。これが仮に、料理や飲み物だけの写真だったり、ホストのキッチンの写真だけだと、食体験を提供するTadakuの魅力を伝えるには不十分なのではないか?とサービス・マーケティングでは考えることができる、ということになります。

まとめ

以上今回は、形がないサービスの価値を訴求するための施策を考える上で、私が参考としている7Pという、いかにもマーケターが語りそうな切り口ではありますが、、、事例と合わせて解説してみました。ご紹介した事例も、本来の提供価値を想像しながら、サービス・マーケティングという観点で、ピープル、フィジカル・エビデンス、プロセスに当てはめてみると、いくつかの仮説を立てることができるかと思います。例えば、Tadakuが食体験を提供するサービスであれば、「当日の流れ」の最後はホストとゲストが一緒に食事をしているシーンの写真があったほうが、利用者がサービスを理解しやすくなるのではないか?といったことです。たかが7P、されど7P。貴社のサービスは4Pの掲載だけで終わってしまっていませんか?取材させていただいたカークメンズフォーマルというタキシード店の岩田さんともお話したのですが、意外としっかりできているサービスは多くないです。皆さんも、自社のサービスの仮説立てに、ぜひ使ってみてください!
※予約ラボが発信している各記事や、提供している「顧問サービス」は、基本的にこの7Pであったり、5つのサービスの特性をふまえたものになっています。

■参考
サービス・マーケティング・ミックスと顧客価値の創造/Service Marketing Mix and Customer Value』近藤隆雄/Takao Kondo
※リンク先は直接PDFダウンロードです。

サービスの諸特性とサービス取引の諸課題』小宮路雅博

サービス・マーケティング入門 』(日経文庫)

サービス・マーケティングの原理』クリストファー ラブロック, ローレン ライト

星野陽介

予約ラボ所長。2012年に(株)リザーブリンクに入社し、3000件以上の予約管理の課題解決に関わる。国内最大規模のクラウド型予約システムであるChoiceRESERVE事業部責任者を経て、2018年より予約ラボ所長として、利用者と事業者双方の視点で「予約の知見」と「サービスの現場」を研究・発信中(twitter)。旅、料理、野球が好き。1985年浦和育ち・世田谷在住。「予約」と「サービス・マーケティング」の専門性を活かした顧問サービスのご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

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