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ポルトガルの歴史地区にあるシェアオフィスを訪ねてみた!

世界の名建築を周りながら旅している山Cです。
前回記事のインド編から一変、今回はアジアからも遠く離れたヨーロッパの西端、ポルトガルをレポート!

ポルトガルにも訪ねてみたい建築がたくさんあります。途中に知り合った人たちのおすすめを含めると、一度の滞在では回り切れないほど。風光明媚で温暖な気候、物価の安さも相まって、行く前から期待に胸が膨らみます。

ポルトガルは西の辺境とも言われ、産業はオリーブやワイン生産など農業中心。日本の4分の1ほどの国土で人口は一千万人程度。平均的な収入を見ても、経済状況は決して良いとは言えません。

にも関わらず、有名な建築物がたくさんあるのは、ポルトガルの英雄的建築家アルヴァロ・シザといった、世界的な建築家たちの存在も影響しています。建築物の前に立ち止まって眺めていると、道行く人に「これは偉大なる建築家の〇〇が設計した建築だぞ!(二コリ)」と声かけられることもしばしば。何気ないアパートなどを眺めていてもそんな風に声を掛けられるのですから、ポルトガルにおける建築家の社会的地位が伺えます。

何気なく現れる、著名建築家設計の集合住宅

彼らが設計した建築巡りはポルトガル訪問の目的の一つですが、今回はもうひとつ。ポルトガル第二の都市・ポルトで活躍されている日本人建築家(Ren Ito Arq. 代表・伊藤廉さん)のもとを訪ねることも、楽しみにしていた目的の一つです。

海外で活躍する設計の大先輩であることもさることながら、彼の設計事務所が入居しているのは、ポルトの市街地にあるシェアオフィス(コワーキングスペース)。日本でも一般的になってきているシェアオフィスですが、コストを抑えつつ、他の事業者と交流したり、情報交換できたりするシゴト場のひとつ。他のクリエイターとの共闘、協力が不可欠な、お店づくり等のデザインに携わっていきたい自分にとっては、魅力的で他人事ではいられない仕事環境のひとつです。

遠い地で活躍している方のシゴト場×自分にとって魅力的と感じるシゴト場であり、今後オフィスを構えることになったとき、または気持ち良い作業空間をつくるヒントになってくれるかもしれない…ということで、今回はポルト在住日本人建築家が入居するシェアオフィスについて、レポートしたいと思います!

路地に寄り道しながら、シェアオフィスまで。

シェアオフィスまではまず、地下鉄を利用して最寄り駅まで向かいます。地下鉄(metro)とはいうものの、線路の大部分は地上。ポルト市街地は起伏がとても大きいため、地上までの距離が長くなりがちなことも要因なのかな~…と思っていましたが、どうやら地中の岩盤が地表に近いからだそうです。

地下鉄構内に描かれたドローイング

市街地を走る路線は一本にまとまっており、「降りてすぐ目的地」みたいなことはあまりなさそうです。駅を降りてから目的地まで、しばし歩くことが多くなりますが、ポルト市街地は地形の起伏が大きいので、市民の足である路面電車は大活躍。歩き回るのはなかなか大変ですが、ひとまず歩いてみました。

いつ見ても満員の気がするポルトの路面電車

坂道途中の細い路地が「近道かも…」と誘ってきますが、通り抜けできるかというと、経験上では80%以上の確率で通り抜けできません。急がばまわれ…しかし観光目的で歩くなら、迷路みたいで楽しいですけどね。

予想外に変わっていく景気を楽しむ

ポルトの市街地は、街丸ごと「ポルト歴史地区」として世界遺産に登録されており、街の裾を流れるドウロ河の眺望も、目を楽しませてくれます。

エッフェル塔のような橋上をメトロが走ります

坂道の高低差が大きいので、歩いている途中、突然視界が開けた先にあらわれる対岸の景色などは気分爽快。東京のように、地下鉄から地上に上がった目の前に迫力ある街が!みたいなことはあまりないですが、歩きながら大きく変化していく視界を楽しむことこそ、ポルト市街の魅力を味わう最適なプランのようにも思えてきます。訪問のアポイント当日は良く晴れた正午前、ピクニック気分で、シェアオフィスを目指します。

壁の奥に広がる開放的な大人のアソビ場

上りと下りが交互に現れる坂道をしばらく歩くと、道路に沿って建物が隙間なく並んだ、静かなエリアに。住居が比較的多いようで、生活感がありながら、アートビストロ(?)、アートバー(?)というような飲食店が点在していて、文化的な雰囲気も漂います。

通りを歩く人の数も観光地と違いまばら、通りに点在するローカルな食堂は衝撃的な価格(肉料理のプレートが3ユーロ!)。落ち着いて仕事をしつつ、気軽に外で食事もしやすそう、そんなエリアに今回訪ねるシェアオフィスはあります。働く場の立地としては最適な気がしますね。

シェアオフィスらしき建物の前にて

地下鉄駅を降りて歩くこと十数分、事前に教えてもらっていた住所に到着しました。向かって右側は大きくガラス張りになっており、中の部屋の様子がうかがえます。ガラス面には大きく「COWORKING WITH US」とあるので、ここでまちがいないでしょう。が、ガラス面のドアは開きそうにありません。さて、どうやって入るのか…。ジグザグの黄色い駐車ライン(?)が少し気になりますが、ひとまずそれはは置いといて。

ガラス面に向かって左手の庇下はオートロック式エントランスのようですが、オフィスの名前などは見当たりません。しょうがないので向かって右のガラス越しから、中にいた女性に「私はこの建物の中に入りたい、しかし入る方法がわからない…」と大きめのジェスチャーで伝えてみました。返ってきた反応は、「とりあえず左まわって入ってこい、そうしたら入れる(というジェスチャー)」。

しかし、左は前述のような、名前のないオートロック式エントランス。…これ絶対違うだろ、ボタンの周りに何も書いてないし。と思いつつも、「1」の番号が付いたボタンを押してみました(1階はこのオフィスだけだろうと思ったので)。…が、無反応。無関係の部屋の呼び鈴を鳴らしていたことを思えば、無反応はある意味幸いですが。

どうにもならないので再度ガラスの前に戻り、さきほどの女性に「わ か ら な い!!」と全身でアピールしてみたところ、エントランスまで来てくれそうな雰囲気で左方向に消えていきました。良かった〜と思いながらエントランスで待っていると…

実際開けてみると想像より更に重いです

エントランス向かって更に左の、とても重そうな、どでかい鉄門扉から女性が。まさかそっちが開くとは…!
どうやらシェアオフィスは中央のエントランスを挟んで、コの字型になっているようす。プライベートガレージのような鉄扉を通り抜けると…

暗めの入口がアジト感を醸し出してます

奥に広がる明るい空間…!倉庫のような広々とした空間、壁の上部、天井には、大きな窓がいくつもあり、太陽の光が存分に差し込んでいます。建物がびっしり並んだ外の通りを考えると、まるで外部と内部が逆転したような開放的な空間。

外からは想像つかないこの感じ、秘密基地っぽくていいですね。作業にも自然と力が入りそう。

程よい距離感で様々な活動が点在する「ラボ」空間

ガレージを抜けると、手前では子供たちを対象にしたワークショップのようなものが催されている様子。木材を組んでつくられたパーティションが、広々とした空間を丁度良い具合に仕切ってくれています。無邪気に楽しむ子供たちの姿は、ものづくりの原点を見ているようで、心が洗われます。

自由に楽しむ子供たちに癒されます

F1ゲーム用に作られたアイルトン・セナのマシン

工作室のような通り沿いの部屋

「OPOLAB(オポラボ)」という名前のこのシェアオフィス。運営形態としてはシェアオフィスと言えるものの、振れ幅広く色んなプロダクト、プロジェクト、活動がひとつの空間の中に同居していて、それぞれの活動が「材料」として、入り混じった光景が「実験」のようにお互いを化学反応させているようで、まさにラボ的な空間です。

上の写真にある通り沿いの部屋は、将来一般に開放する3Dプリンターなどを置いてプリンター待ちの間お茶をする「ラボカフェ」を作るそうです。気軽に立ち寄れる「街のラボ」といった感じでいいですね!

リーズナブルにモノづくりの製作から発表まで

PC作業などに使えるデスクは一つの幅が1m強、3つ並べて3m程度の長さが全部で6列ありました。場合に応じてデスクの数が変わったりもあるようです。後でご紹介する伊藤さんは1つのデスク60ユーロ、6つのデスクでディスカウントがあり300ユーロ/月(光熱費込み)で利用されているそうですが、使う時間、使い方によってもバラツキがあるみたいです。ポルトガルは比較的暖かいですが、暖房設備(カフェのオープンテラスなどで見るようなストーブ?)もあり、それでこの利用料はなかなかリーズナブル。しかも日貸しもしているそうで、デスクひとつ単位で3ユーロ/1日支払えば利用できるというのがまた良し。

スペースの仕切りもあいまいで、大きな試作品や家具をつくったりするタイプのフリーランスには、とっても使い勝手良さそうです。

広い空間の端には休憩できるようなソファ&読書スペース、来客時に利用できるガラス戸で囲われた打ち合わせスペース、高い天井を活かし、オフィス奥には打ち合わせコーナーを備えた中2階もあります。建築やプロダクトデザインをする人にはうれしい3Dプリンタ、ミーティングなどに使えるプロジェクター、セミナーに使えそうな登壇台まで、製作から発表まで、すべてここで行えそうです。
PCで図面描いてすぐに隣でおおきな試作模型を作る…みたいなことも普通に行えそうな雰囲気がいいですね~。こんな条件、環境のオフィス、東京にあったら最高かも。

打合せコーナー脇のソファは待合としても

ガラス入り建具で囲われた打ち合わせコーナー

中二階には会議スペースもあります

後編へ

一通りオフィス内を眺めてみて、世代、業種、価値観などがバラバラな人たちが気兼ねなく同居している印象を受けました。日本のシェアオフィスに感じるオシャレ感を打ち出したイメージと異なり、ものづくりに特化した公共施設のような雰囲気だったのが特に印象的でした。定年後のおじいちゃん・おばあちゃんが通う行きつけのシェアオフィス、なんてのがあっても不思議ではないように思えてきます。
こういったフラットな場の空間づくり、空気づくりって結構難しそうですが…次の記事ではここを利用されている日本人建築家の伊藤廉さんにお話を伺いながら、実際にどんな人がいて、どのように利用されているかなどをお伝えしたいと思います!

OPOLAB公式webサイト: http://www.opolab.com/

文・写真:山C
編集:星野陽介

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山C

ハウスメーカーの営業職を経た後、一級建築士事務所にて店舗、住宅、商業ビルなどの建築設計・インテリアデザインに携わる。2016年6月下旬より、海外の建築やその地域の生活模様を体感する旅中。

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