小売業界で注目を集める「店舗DX」。店舗運用にデジタル技術を導入することで、顧客満足度の向上、業務効率化、コスト削減などを実現し、市場での競争優位性を高めます。この記事では、店舗DXの目的や必要性といった基本情報から、効果的な施策、導入メリット、実施する上での課題、成果獲得のポイントまで分かりやすく解説します。

「店舗DX」とは? 導入の目的は?

はてなマークと黒板

店舗DXの「DX」は、デジタルトランスフォーメーションの略称です。つまり、店舗DXとは、店舗型ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションという意味になります。店舗運営の様々な領域にデジタル技術を導入して、顧客体験の向上業務プロセスの改善を実現することが狙いです。

近年では、あらゆる領域でのデジタル化が加速し、また、コロナ禍による生活様式の変化が進んだことから、店舗DXへの注目と期待が大きく高まっています。

店舗DXの代表的な施策を紹介

デジタル化のイメージ画像

店舗DXの施策は、「オフラインの施策」「オンラインの施策」の2種類に分けられます。それぞれどのようなものがあるのか、順番に見ていきましょう。

店舗DX オフラインの施策

オフラインの施策とは、おもに実店舗での施策を指します。キャッシュレス決済やセルフレジの導入など、店舗運営に関する様々なことをデジタル化し、顧客サービスの向上や店舗業務の効率化を目指します。代表的な施策は以下の通りです。

  • 非対面でのオーダー
  • セルフレジの導入
  • キャッシュレス決済対応
  • 事前注文受付
  • 顧客情報、会員カードの電子化
  • 自動売上集計システムの導入
  • クラウドを利用した勤怠管理

各施策の概要を簡潔に紹介します。

非対面でのオーダー

テーブルに備え付けのセルフオーダー端末や、顧客自身のスマートフォンから注文が行えます。スタッフを呼んだり待ったりする手間がかからず、顧客にとってベストなタイミングで注文が可能です。ピーク時のスタッフ不足やオーダーミスなどの問題も解決します。

セルフレジの導入

セルフレジとは、顧客自身で精算を行うレジのこと。レジの回転率向上、釣り銭ミスの防止、人件費の軽減などのメリットがあります。店舗側のレジ業務が軽減されるため、人材不足の解消にも有効です。

キャッシュレス決済対応

現金を使わずに、クレジットカードやスマホ(QR決済)、電子マネーで支払いができます。カードやスマホを決済端末にかざすだけなので、スピーディーに会計が完了します。ピーク時におけるレジ混雑の緩和にも効果的な施策です。

事前注文受付

事前にWebで注文を受け付けることで、来店時の待ち時間をなくします。顧客が来店する日時が分かっていれば、ギフトラッピングやカスタムオーダーにも余裕をもって対応できます。顧客も自分のペースでゆっくりと注文を検討し、希望するタイミングで商品を受け取れます。

顧客情報、会員カードの電子化

顧客リストのデジタル化や会員証アプリの導入によって、顧客情報の一元管理が実現します。データベース化することで、販売促進のための分析や属性別の販促施策に活用することもできます。

自動売上集計システム

レジの売上データをタイムリーに自動集計し、売上状況を表やグラフで表示するシステムです。時間帯別の売上や客数、売れ筋商品など、詳細な情報まで確認できるシステムもあります。日報の作成売上分析にも活用できます。

クラウドを利用した勤怠管理

クラウド型の勤怠管理システムを導入すれば、スタッフ間で最新のシフトを共有できます。また、タイムカードの集計や給与計算といった手間のかかる作業を自動化できるため、勤怠管理の効率化が実現します。

店舗DX オンラインの施策

店舗DXにおけるオンラインの施策とは、おもに店舗体験のデジタル化を指します。インターネットを介して、顧客に店舗の疑似体験を提供します。代表的な施策は以下の通りです。

  • 実店舗のEC化
  • オンライン接客
  • バーチャル店舗

各施策の概要を簡潔に紹介します。

実店舗のEC化

実店舗のEC化とは、インターネット上で商品が売買できるよう、Webサイトやネットショップを開設することです。インターネット環境さえあれば、いつでもどこからでも簡単に商品が購入できるようになります。顧客の維持、拡大に効果的な施策です。

オンライン接客

ビデオ通話やチャットツールを使って、インターネット上で接客することをオンライン接客といいます。商品の購入を検討している顧客に対して、リアルタイムで説明やアドバイスを行い、購買意欲を高めます。お互いの顔が見えるビデオ通話であれば、対面接客のようなきめ細かなコミュニケーションが図れます。

バーチャル店舗

バーチャル店舗とは、VRやフルCGを活用して仮想空間に店舗を再現したものです。店内を360度見渡したり、気になる商品を様々な角度からチェックしたりして、自由に見て回ることができます。AIチャットボットなど、Web接客ツールの併用も可能です。

店舗DXはなぜ必要? 取り組むべき理由

DX(デジタルトランスフォーメーション)という飾り文字

店舗型ビジネスのDX化は、なぜ必要なのでしょうか。店舗DXを推進すべき理由として、以下の課題が挙げられます。

ビジネス環境の大きな変化

近年ではコロナ禍の影響もあり、混雑した環境での買い物や飲食は敬遠されるようになりました。その結果、実店舗に足を運ぶ顧客が減り、店舗の売上に大きく影響したケースも少なくありません。

足が遠のいてしまった顧客を呼び戻すには、店舗来店時の不安や不満を解消する必要があります。店舗DXにより、レジ混雑の緩和、事前予約受付、デリバリーサービスの導入などが実現すれば、顧客の安心や利便性の向上につながり、売上の増加も期待できます。

他店舗との差別化

現代は、以前と比べて物が売れない、売れにくい時代になったといわれています。また、利便性の高いECの拡大により、実店舗からオンラインショップに顧客が流れやすい点も課題の一つです。

従来の販促方法で売上が伸びない問題に対処するには、時代の流れに沿った施策を積極的に導入するなど、他店舗との差別化を図る必要があります。例えば、店舗のEC化を実現すれば、実店舗とオンラインショップの両方からのアプローチが可能となり、市場での競争優位性を高めることができます。

店舗運営に関わる問題の解消

店舗運営では様々な問題が発生します。問題を解決するための適切な方法が見つからず、ひとまず現状維持で様子を見ている店舗も少なくないのではないでしょうか。

  • 来客が多い時間帯はレジに行列ができる
  • 注文ミスや会計ミスが頻発する
  • 慢性的な人手不足
  • 人件費や販促費がかさむ

このような問題を解決に導くのが、店舗DXです。店舗のデジタル化や自動化が進めば、スタッフ一人ひとりの負担が減り、充実した接客やコスト削減が実現します。さらには、顧客満足度の向上や売上の増加も期待できるでしょう。

店舗DXの導入で得られる8つのメリット

「Merit」と書かれた卓上ボード

店舗DXの実施で得られる主なメリットを一覧にまとめました。

  • 顧客満足度の向上
  • ヒューマンエラーの削減
  • キャッシュレス化の促進
  • 省力化による人手不足の解消
  • 適切な在庫管理の実現
  • 販促施策による集客力アップ
  • 勤怠管理の効率化
  • 各種コストの削減

各メリットについて詳しく見ていきましょう。

1. 顧客満足度の向上

顧客のニーズに合った店舗DXを実施することで、顧客満足度の向上が期待できます。例えば、キャッシュレス決済の導入やセルフレジの設置は、顧客にとって利便性の高い施策といえるでしょう。スピーディーな会計が可能となり、レジの待ち時間短縮にも有効です。

また、インターネットショッピングが普及した現代では、ECサイトを開設したり、AIチャットボットツールを導入したりして、オンラインサービスを充実させることも顧客満足度向上につながります。

2. ヒューマンエラーの削減

人為的な業務を自動化するシステムを導入すれば、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。良い例が、飲食店でのセルフオーダー端末を利用した注文です。顧客自らが端末を操作して注文を行うため、スタッフが注文を聞き間違える、伝票に誤ったオーダーを記入する、といったミスを防げます。注文内容は自動で集計されるため、会計ミスも起こりにくくなります。

3. キャッシュレス化の促進

キャッシュレス化の促進は、顧客と店舗の双方にメリットがあります。キャッシュレス決済であれば、紙幣や小銭を出さずに会計が完了するため、レジ対応にかかる時間を短縮できます。釣り銭の受け渡しが必要なく、レジの回転率が向上します。

キャッシュレス決済が定着すれば、レジ打ち業務の負担が軽減され、スタッフ配置の最適化や人的コスト削減も実現するでしょう。

4. 省力化による人手不足の解消

店舗の省力化や各種業務の自動化が進むと、人手不足の問題を解消できます。小売業界や飲食業界では、慢性的な人手不足が問題視されています。コストをかけて人材を採用してもすぐに辞めてしまう、なかなか優秀な人材が集まらない、といったケースも少なくありません。

人手不足の解消に効果的な施策が、セルフオーダー端末やセルフレジの導入です。接客にかかる時間を大きく削減できるため、スタッフの少人数化が実現します。

5. 適切な在庫管理の実現

在庫管理システムを導入すれば、店舗の在庫状況をリアルタイムで可視化できます。適正在庫を把握することで、在庫不足と過剰在庫を回避し、機会損失や廃棄ロスを防ぎます。在庫数だけでなく、発注状況、入荷データ、賞味期限情報なども確認できるため、正確かつ効率的な在庫管理が実現します。棚卸業務の負担が軽減できる点もメリットです。

6. 販促施策による集客力アップ

店舗の販促活動をデジタル化することで、より多くの人に情報を発信し、集客力アップを狙うことができます。具体例として、SNSで新商品の情報を発信する、店舗アプリでお得なクーポンを発行する、といった施策が挙げられます。

また、チラシやDMを利用した販促活動では、印刷代やポスティングにコストがかかりますが、SNSや店舗アプリではこれらのコストが発生しません。集客力アップのみならず、コスト削減も期待できます。

7. 勤怠管理の効率化

シフト管理や給与計算などを一元化できるツールを導入すれば、勤怠管理にかかる手間や負担を大きく削減できます。勤怠管理ツールの種類は豊富で、シンプルで使いやすいものや、低コストで導入できるものなど、様々なものがあります。店舗に最適なツールを選んで、勤怠管理の効率化を実現しましょう。

8. 各種コストの削減

店舗DXを導入することは、各種コストの削減につながります。中でも注目したいのが、人件費の削減です。今まで人の手で行っていた業務を省力化、自動化できれば、少人数のスタッフで効率的に店舗業務が行えます。人的コストの削減のみならず、人手不足の問題解消にもつながります。

また、チラシやDMによる販促活動を、SNS、メールマガジン、店舗アプリなどに切り替えることで、販促費の削減が可能です。各種コストの削減は、店舗DXの大きなメリットといえるでしょう。

店舗DXの導入における課題と注意点

書類を確認する二人

店舗DXを実施する上での課題や注意点を紹介します。

導入から成果獲得まで時間がかかる

店舗DXの導入から成果獲得までには、ある程度時間を要します。まずは、店舗に必要なDX化が何であるのかを明確にし、適切な施策やツールを検討するところからスタートしなければなりません。また、導入後は、DX化を定着させた上で成果を確認する必要があります。

導入・運用コストが発生する

店舗DX化には、導入コストや維持管理費がかかります。店舗の経営状況を踏まえた上で、費用対効果の高い施策から戦略的に進めていくことが重要です。店舗DXにかけられる予算が少ない場合は、販促活動のデジタル化や業務管理アプリの導入など、低コストで実施できる施策に目を向けてみるといいでしょう。

店舗DXに対応できるよう、人材の育成が必要

店舗DXのスムーズな導入には、現場スタッフの理解と協力が欠かせません。システムの操作方法や業務フローの変更について、丁寧に周知することが大切です。ITリテラシーが低いスタッフが多い場合には、事前に研修を行うなどして、DX化の目的や機器の使い方を分かりやすく説明する必要があります。

DX化の必要性が高い店舗とは?

商品陳列棚とショッピングカート

店舗のDX化によって、多大な導入効果が得られる店舗がある一方で、あまり導入効果が見込めない店舗も存在します。店舗が抱える課題だけでなく、顧客層や事業規模を踏まえた上で、DX化の必要性を検討することが肝心です。

例として、DX化の必要性が高い店舗の特徴を以下に挙げます。

  • 混雑時、レジに行列ができることが顧客の不満につながっている
  • アナログ管理でミスが起こりやすく、クレーム処理や修正に時間を取られる
  • 電話対応が多いことで適切な接客ができず、機会損失が生じている
  • ギフト包装など手間のかかる注文が入ると、レジの待ち時間が長くなる
  • 売上予測と在庫管理ができておらず、商品の廃棄や欠品が頻発する
  • オンラインショップへのアクセス数は多いものの、購入までに至らない

上記のような特徴を持つ店舗であれば、DX化の必要性が高いと考えられます。DX化に向けた施策の検討を行いましょう。

店舗DXを成功に導くポイント

上向きの矢印

店舗DXで成果を得るために、押さえておきたいポイントを紹介します。

まずは業務内容やフローを明確化する

店舗DXの第一歩として、まずは業務内容を洗い出し、フローを明確化することから始めましょう。業務全体をチェックして、無駄な作業や非効率な人材配置があれば、適切な業務プロセスに改善します。業務内容やフローを最適化した上で、デジタル化すべき業務の選定を行いましょう。

適切なツールやサービスを導入する

店舗DXに役立つ多種多様なツールがリリースされています。機能性、操作性、コスト面などを比較して、店舗に最適なツールを見極めましょう。そのためには、店舗の課題や顧客ニーズの把握が不可欠です。

また、来店する顧客層のITリテラシーを考慮して、利用しやすいツールを選ぶことも大切です。

スモールスタートでリスクを回避する

店舗DXを成功させるためには、スモールスタートが肝心です。まずは、低予算で小規模に展開し、段階的に規模を拡大していきましょう。この方法であれば、万が一失敗したとしても損失を最小限に抑えることができます。

デジタル化の経験が少ない店舗であれば、紙ベースの売上管理表や顧客リストを電子化したり、低コストな勤怠管理アプリを導入したりするところから始めてみるといいでしょう。

他店の導入事例を参考にする

他店の導入事例をリサーチし、具体的な成功例を知ることで、DX化の成功イメージが湧きやすくなります。同じ業種やよく似た規模の店舗の導入事例は、特に参考になるはずです。導入事例に関する情報は、店舗DX事業を展開する企業のサイトなどで確認できます。

現場スタッフへの周知と理解を図る

店舗DXの施策を成功させるためには、現場スタッフの協力が必須です。導入目的やシステムの操作方法を丁寧に説明し、しっかり理解してもらう必要があります。

特に、セルフレジやセルフオーダー端末など、顧客自らが操作する機器を導入した直後は、現場が混乱しがちです。顧客からの呼び出しや質問に余裕を持って対応できるよう、一定期間スタッフを多めに配置したり、システムに精通した人物を常駐させたりするなど、対策を講じておくとスムーズです。

費用対効果を検証する

導入した施策が定着したら、費用対効果の算出と検証を行いましょう。このまま運用を継続するべきか否かの判断材料になります。かけた費用に見合った結果が出ていれば、店舗DXの施策は成功です。その反対に、費用対効果が見込めない場合は、施策の見直しや再検討を行わなければなりません。

施策の効果がなければ無駄なコストになってしまうので、費用対効果の検証は必ず行いましょう。

店舗DXを実現するツールやサービスは多種多様

システムとネットワーク

2023年現在、店舗業務をデジタル化するためのツールやサービスは数多く存在します。まずは店舗に必要な施策を選び出し、それに合ったツール、またはサービスを比較検討するといいでしょう。導入をイメージできるデモサイトの活用や、同じ業種の導入事例を参考にするのもおすすめです。

今回初めてデジタル化を検討している店舗であれば、コストをかけずに取り組める施策からスタートしてみてはいかがでしょうか。

店舗DXで業務効率化と顧客満足度の向上を

この記事では、店舗DXの必要性や効果的な施策、導入メリット、成果獲得のためのポイントなど、店舗DXに関する情報を幅広く紹介しました。店舗DXには様々な施策があり、施策を実施するためのツールも数多く存在します。

まずは、店舗に必要な施策を明確にするところから、じっくり取り組んでいくことが大切です。店舗に最適なデジタル技術を導入して、業務効率化や顧客満足度の向上を実現させましょう。

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