2019/07/02

年間3万人の予約を管理する、野菜のテーマパーク「カゴメ野菜生活ファーム富士見」立ち上げの舞台裏。

2019年4月、長野県にオープンした「カゴメ野菜生活ファーム富士見」。
“農業・ものづくり・観光”をテーマに据え、苗植えや畑での収穫、調理などのリアルな体験が楽しめる新基軸のテーマパークです。
工場見学は以前から実施されていたのですが、今回は複合的な大規模施設としてリニューアル。そのため、来場者に向けた予約システムの構築や運用などが喫緊の課題だったとか。
こうした点をどのようにクリアしていったのか? ファームの運営に携わるカゴメ株式会社の水野慎也さん、高橋 由貴乃さんに、その舞台裏を伺います。

社名の由来は、トマトの籠から?

水野カゴメ株式会社は、今年で創業120周年を迎えます。創業者である蟹江一太郎が愛知県東海市で西洋野菜の栽培に着手、1899年に最初のトマトの発芽を見たのが会社のはじまりです。
カゴメという社名の由来は、当時使用していた会社ロゴがトマトなどを収穫した際に入れるカゴの網目に似ていたことから。そのマークをカゴメ印として商標登録し、その後1963年に社名を愛知トマト株式会社からカゴメ株式会社に改称しました。

予約ラボ事業規模はどれほどになるのでしょうか?

水野海外を合わせた2018年度の売上高は2098億円です。事業としてはトマトジュースや野菜生活などの飲料事業が約40%、ケチャップやトマトソースなどの食品事業が約30%です。近年、海外の事業も増えてきましたが、まだ全体の20%程度に留まっています。世界中でトマトは生産されますが、海外でのカゴメブランドで一般の生活者の皆様への販売は発展途上で、現在はおもに業務用のビジネスを中心に展開しています。

予約ラボカゴメというとトマトをイメージしますが、近年はいろいろな事業にも拡大されているそうですね。

水野そうですね、現在は「ニッポンの野菜不足をゼロにする」を中期ビジョンに掲げ、トマトだけでなく、さまざまな野菜をおいしく、簡単に摂ることができるよう、ビジネス展開をしています。青果売り場での洗浄ずみベビーリーフの販売や、業務用の冷凍野菜などが一例です。

また、商品だけでなく“コト”領域も強化しています。
たとえば、毎年夏に「カゴメ劇場」というチャリティミュージカルを47年間開催していますが、その演目も子どもたちに野菜を好きになってもらうようなストーリー構成にしています。そのほかにも小学校・幼稚園・保育園にトマトジュース専用のトマト苗“凛々子(りりこ)”を全国で1000校・1万人規模で配布して、野菜を育てる楽しさと食の大切さを学んでいただいています。

そして2019年4月26日にオープンしたのが「カゴメ野菜生活ファーム富士見」です。
“野菜の時間、はじまる”をコンセプトにした、体験型の野菜のテーマパークです。

年間3万人の来場を想定し、野菜生活ファームを事業として立ち上げ

予約ラボ「野菜生活ファーム」のプレスリリースには、雇用確保や八ヶ岳エリアの観光、地域活性化といったキーワードが挙げられています。カゴメさん的にはどういった目的で、このテーマパークを開業されたのでしょうか?

水野野菜生活ファームは、「農業」「工業」「観光」が一体化した体験型「野菜のテーマパーク」です。八ヶ岳の雄大な自然を背景に、野菜と豊かにふれあいながら、農業や食、このエリアの魅力を体験できるユニークさが特徴です。
来場されたお客様が野菜と密に過ごす、かけがえのない体験を通して、カゴメならではの新しい「野菜時間」を提案していきます。

地域活性や雇用という目的ももちろんありますが、テーマパークを通じファンを作る場と考えています。もちろん、事業として単体でも成立できるよう、レストランのクオリティや建物のデザインなど、この地で長年やっていこうという決意を持って展開しています。
中期ビジョンで掲げた「ニッポンの野菜不足をゼロにする」という社会課題解決の拠点になることを意識しています。

予約ラボ「野菜生活ファーム」で体験できるメニューについて教えてください。

水野まずは、広大な畑。この畑で旬の野菜を収穫する「収穫体験」がメインのコンテンツです。また、収穫した野菜を調理したり、ピザ作りなどの体験教室もメニューとしています。
そして、併設される野菜生活の主力工場である富士見工場への見学コースも見どころです。
メインとなるファームハウスと呼ばれる建物は、体験教室を開催するホールのほか、本格的なピザ窯のあるレストランとショップが併設されています。
収穫体験や体験教室は有料、工場見学は無料で開催し、すべて予約制で運営しています。

予約ラボ来場者の見積もりはどのようにおこなったのでしょうか?

水野周辺の施設へのヒアリングをおこない、おおよその来場者の規模をシミュレーションしました。これまでの工場見学運営は、工場稼働日(おもに平日)を中心にオープンしていたため、休日の来場者シミュレーションは困難でしたが、オープン初年度は運営のキャパシティに応じ、開催日や回数を決定しました。
また、土日祝日が来場のピークであるとはわかっていましたが、工場は非稼働であるため、土日祝日の工場見学を開催するかどうかは、大きな議論となりました。
寒冷地であるがゆえの、冬季の運営についても大きな課題でした。
(※2019年度は土日の工場見学は開催。冬季についてはクローズ予定。)

予約をインターネット受付へ。オフラインで管理していた従来の課題は?

予約ラボ既存の工場見学以上の人数を呼ぶとなると、受付の混雑回避の狙いでインターネット予約システムを入れようという流れだったのでしょうか?それとも他社さんをリサーチして、今はネット予約が一般的かつ利便性が高いと判断されたのでしょうか。

水野従来の予約受付は各工場の総務担当がおもに電話で受け付けていました。工場のみなさんへの負担にもなっており、改善の要望は上がっていました。
工場見学だけをとってみても、予約受付は倍増、収穫体験や体験教室なども合わせると年間3万人の予約受付が必要となり、専用の窓口設置と予約受付システムの導入が必要となりました。

予約ラボ予約が少ない状態であれば問題ないでしょうが、特定日に予約が集中したりすると空きがなかったり、バッティングしたりと、クレームになりがちですね。
予約の日時や人数の変更なども、受付者の負担になりそうです。

水野そうですね。お客様の利便性の担保と、受付者の負荷軽減の両方を実現しなければいけません。予約サイトで空き状況を正しく見せ、インターネット経由で受付することは重要だと思いました。

予約ラボネット予約化された今、電話での受付も残されているのでしょうか?

水野予約受付はネット一本にしています。ただし直前の変更や問い合わせのため、電話での連絡経路も残しています。

予約システムは自社開発?それともクラウドサービス?評価のポイントは?

予約ラボインターネット予約の導入を決めたのち、どのように実現方法を検討されたのでしょうか。システムを自社開発するか、クラウドサービスを利用するか?といった情報収集や選定も必要ですよね。

高橋最初は自社で作らなければいけないと思っていました。オープン半年くらい前になり「そろそろどうする?」とドキドキしていました。自社ホームページ運営のパートナーから予約管理に特化したクラウドサービスがあることを教わって「ここまでできるの!」と驚きました。
いくつかピックアップしたサービスを絞り込み、最終的にふたつのサービスをデモサイトなどで比較して評価しました。

予約ラボ何かシステムを作るとき、セキュリティやインフラ面などが見えにくい、ほしい機能はあるが実際の運用に合うのかなど、考慮すべき点が多くありますよね。単純比較がなかなかできないなかで、最終的にクラウドの予約システムを選択した理由はなんですか?

高橋作るよりは圧倒的に安くて、早くて、丈夫ですね。

水野それは実感しました。

予約ラボQCD(Quality:質、Cost:コスト、Delivery:納期)のすべてにおいてクラウドが優れていたということですね。

水野公開されている他社さんの事例も参考にしました。実際に運営されているサイトを訪れ、リザーブリンク社のご担当にどこまでが標準機能で実現できるか?どう設定すればやりたいことが実現できるのか?しっかり切り分けていくことができました。

システムの設定・登録、予約管理の運用設計と分担

予約ラボシステムの導入と並行して、運用についても企画・検証されていたかと思います。ネットで予約を受け付けたあと、その管理表を現場の方が適切に運用していくための方法論は、どのように構築していったのでしょうか?

水野野菜生活ファーム側の担当と何度も打ち合わせを重ねてきました。予約がキャンセルされたらどうするのか?あとから予約変更になった場合は?といったケースを想定して何度もシミュレーションしています。

予約ラボ水野さんたちのいらっしゃるカゴメ本社の役割と、野菜生活ファーム側の役割はどのように分担されていますか?

水野最終的には野菜生活ファーム側ですべて運営してもらう必要があります。予約システム導入の早い段階で、すべてのメニューのスケジュールや説明、運営方法などのガイダンスを予約システムへ登録しました。
初期設定などは高橋が担当し、野菜生活ファーム担当者へ説明をおこないました。

予約ラボたとえば工場見学で、ネット予約した方と当日来館の方がいたときに、実際の窓口では受付を分けていらっしゃいますか?

水野受付カウンターはひとつしかないので、そこで両方のお客様を対応しています。当日の枠にどれだけ残数があるかによって、当日来館の案内をどうするか決めます。

予約ラボ具体的にWEBから予約が入って、メールが飛んで、対応して、というシミュレーションなどもされたのでしょうか。

水野はい、受付者や工場見学・体験教室などをアテンドする各担当のマニュアルに、予約受付から来場までのフローを記載しています。

カゴメのものづくりをアピールする工場見学の内容

予約ラボ工場見学や調理体験など、野菜生活ファームとしてのサービスメニューは今回ゼロから構築されたんですか?

高橋そうです。以前からやっていた工場見学の内容も、新しく設計しなおしました。
工場自体が新しくなったわけではないので、見せ方の面で大きく進化させました。
土日祝日など、工場ラインが動いていないときも楽しんで頂きたいので、プロジェクションマッピングやジオラマなどを活用しました。

水野もともとあった工場の建物を大幅に改築するわけにはいかず、そういう点では大いに苦労しました。

予約ラボ工場見学コンテンツの設計やサービスの運営も自社で完結しているんですか?

水野もちろん設計や構築は外部のパートナーといっしょに進めました。野菜生活ファームの運営同様、工場見学の運営も野菜生活ファーム従業員がおこなっています。工場見学といってもミュージアム型のコンテンツ構成になっていて、野菜生活で使用されている野菜の展示や、畑の中を歩いたり、野菜生活の歴史なども紹介しています。

工場見学の体験から、カゴメのファンになっていただけるように。

予約ラボネット化すると顧客のデータが情報として入ってきます。それをのちに利用することも考えた上で、インターネット予約を導入したのでしょうか?

水野予約の段階で入ってきた個人情報は、予約と受付の目的にしか使用しません。
この野菜生活ファームに共感し、カゴメとこれからも繋がってくれるお客様を見つけ、アンケートという形でご意見を伺いつつ、最終的には2015年から運営していますファンコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」をご案内します。
ライトな出会いから、しっかりとしたファンを形成することができるようなプログラムを考えています。

予約ラボ見学後のアンケートでファンづくりのきっかけを作っているんですね。ちなみにアンケートはWEBですか?

水野紙とWEBの両方を用意しました。紙のアンケート用紙を裏返すとQRコード経由のWEBアンケ―ト入口になっています。工場見学の最後にお渡しするお土産に忍ばせています。

今後の課題は「集客の導線」をいかに設計するか

予約ラボ今後は野菜生活ファームの認知と集客がポイントになりそうですね。今度、長野にワサビやそばを食べに行く途中に寄りたいなと思って、まわりにどんな観光スポットがあるかを地図で探してみました。

水野もともとこのエリアは諏訪湖が観光拠点で、諏訪大社などもスポットですね。松本や安曇野なども足を伸ばせる範囲です。また、山梨県側はサントリー白州蒸留所やシャトレーゼ白州工場、小淵沢アウトレットなどがありますね。周辺の観光施設のお客様動向をよく見て、どのような集客が有効かを検討したいと思っています。

予約ラボ日帰りのお客様を想定しているのでしょうか?

水野東京から特急電車で2時間くらいですので、充分日帰りは可能だと思います。先ほど挙げたいろいろな観光スポットもありますので、ぜひ泊まりがけでもお越しいただきたいと思います。

予約ラボ多くの方がこのテーマパークを訪れ、地域が盛りあがりながらカゴメさんのファンが増えていくといいですね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

 

予約ラボでは、共同研究や予約に関する調査を行っています。

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