商品購入をサポートする相談型店舗の現状とは?
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商品購入のお手伝いをするための店舗が増加中
オフィスビルやショッピングセンターに続々とオープンする来店型保険ショップ。店頭のウエディングドレスが目を引く結婚相談サポートデスク。インターネットで商品やサービスを選ぶこの時代に、相談カウンター形式の実店舗が近年増加しています。
本来店舗は商品を販売することを目的とするものがほとんどですが、相談カウンター形式の店舗では顧客に最適なサービスを選んでもらうため、意思決定サポートを行うことが主な目的です。なぜこのような店舗が増え始めたのでしょうか。
情報があふれる中で意思決定が難しくなってきている
月々の固定費となる保険・介護費用、まとめて大きなお金が出て行く結婚・住宅購入費用。出費を抑えようとネットで検索すると、ありとあらゆる情報が出てきます。インターネットによって膨大な情報が無料で手に入るようになった反面、情報があふれ、消費者は自分にぴったりのサービスを選びにくくなっているのではないでしょうか。
相談カウンター形式の実店舗を出しているのは、結婚、保険、住宅、介護など、顧客によって選択肢に幅が出やすく仕組みが複雑な分野。商品選びの優先順位や予算が人によって大きく異なるので、プロに相談し最適なサービスを選ぶことが意味をもちやすいものです。
「売りつけられそう」「何をしている店なのかわからない」と当初は利用者が少なかった相談カウンターも、利用者の口コミが広まり出すと徐々に店舗数が増え始めました。特定の会社ではなく、さまざまな会社の商品を比較して勧めてくれる相談カウンターは、「相談するくらいならいいかな」と受け入れやすいのかもしれません。
もちろん、サービス提供側にもメリットがあります。購入や契約のハードルを下げるのも、そのひとつ。「自分にぴったりなものがわかれば利用したい」と考える利用者を契約まで持って行くのは容易ではありません。ウェブから問い合わせを行い、いきなり対面で話を聞くというのは心理的ハードルもあるでしょう。それに対し、いつも行くショッピングモールなどに実店舗があれば、相談するきっかけが生まれ、何度かの相談・打合せ・商談を経て、自身の課題が解決できると理解すれば購入や契約につなげることができます。
たとえば、来店型保険ショップの顧客層は20〜30代が約6割、40代が2割というデータがあります。保険への興味が薄い若年層が多数来店することから、保険会社にとって魅力的な販売窓口となっているのです。
来店型保険ショップをオープンすることで、保険を契約してくれる可能性の高い若年顧客を自然と取り込むことにつながります。すると、集客に使っていたリソースを本来の業務に活用し、保険の魅力を伝えることができるでしょう。
それでは、実際に相談カウンターを出している事例を見ていきましょう。
授かり婚の結婚式をサポートする『マタニティウェディングナビ』
1つ目は結婚式における事例です。
縮小傾向にあるウェディング業界で伸びを見せてるのが、妊婦さんが結婚式を挙げる「マタニティウェディング」です。かつて「できちゃった婚」と呼ばれていた妊娠が先の結婚は、今では「おめでた婚」「授かり婚」と名前を変え、珍しいことではなくなってきました。授かり婚の割合は全体の1/4を占め、そのうちの4割が結婚式を実施しているといいます。
参考 : 厚生労働省 : 平成22年度 「出生に関する統計」の概況
結婚総合意識調査2017(リクルートブラダル総研調べ)
授かり婚の増加を受け、『マタニティウェディングナビ』はマタニティウェディングに特化したしたポータルサイトを立ち上げました。
マタニティウェディングに適した6つの条件(最短一ヶ月で対応可能、メールや電話での打ち合わせ可、マタニティ専用ドレス有、マタニティ専用プラン有、マタニティ向け料理対応可、新婦休憩スペース有)をクリアした会場のみを提携先に認定。マタニティに関する医療知識を持つコンシュルジュがサポートにあたるほか、看護師や助産師に直接相談できる「マタニティホットライン」も開設。
加えて、Web上だけでは解決しきれない結婚&出産という個人的な条件にきめ細かく対応するため、相談デスクを新宿・横浜・新潟・郡山・仙台にオープン。最適な会場選びを無料でサポートしてくれるといいます。
急増する介護相談を第三者の目線でチェック!老人ホームお探しガイド『ロイヤル入居相談室』
2つ目は、介護領域における事例です。
少子高齢化で急速に需要が高まる介護施設。入居前は料金と立地くらいしか選別ポイントがないかと思いきや、必要に迫られて調べてみるとその複雑さに頭を抱えてしまうことでしょう。
介護保険、医療行為への線引き、リハビリ、レクリエーション、スタッフの人員配置や資格、認知症への対応、施設の種類など…。入居条件など検討しなければならないトピックは多岐にわたります。
老人ホーム・介護施設の総合サイト『老人ホームお探しガイド』では、施設選びに困っている人のために、要介護の方と自立の方とで分けた施設の探し方を細かく解説。施設の検索も「人員体制1.5:1」「24時間看護師在中」「認知症ケア」「嚥下機能訓練実地」など細かい条件ごとに絞り込めます。
個別の事情に対応するため、無料で利用できる相談デスク『ロイヤル入居相談室』を首都圏20カ所に設置。すぐに入居したい方から数年先を検討している方まで、段階に合わせた相談にのってくれます。
2018年2月現在、提携先の施設は首都圏で2500以上あり、特定の企業と提携しない第三者の目線で相談者の目線に立ったアドバイスを行うとのこと。年間9000以上の相談実績があり、注意ポイントや入居後の様子も教えてくれます。施設見学の際の送迎やスタッフ同行も無料でしてくれるそう。
複雑な商品を相談者の希望に合わせわかりやすく説明する『ほけん百花』
「どれを選べばいいのかわからない」商品の代表は保険ではないでしょうか。商品自体が複雑なうえ、加入者の状況・条件によって商品の良し悪しが決まる保険は、WEBで情報検索をしただけですぐに購入を決定できる方は少ないのではないでしょうか。
無料の来店型保険相談ショップ『ほけん百花』は、27社170種類の保険から最適な保険を提案。相談は無料なので、結婚や出産などライフイベントによって保険の見直しが必要になった際に何度でも利用できます。
店舗は、相談者目線で出店場所ごと工夫をしています。ショッピングモールでは家族連れをターゲットにキッズスペースを設けたり、オフィス街では忙しいビジネスマンをターゲットに「昼休みを有効活用、ランチ持ち込みOK」や「19時以降相談OK」など、配慮が行き届いた仕組みに。
数ある保険相談ショップの中で『ほけん百花』の特徴は、スタッフのほとんどが女性であること。男性スタッフには相談しにくい女性特有の悩みや病歴を相談することができます。
加えて、アフターフォローも充実。給付金請求手続きや内容変更、書類紛失時の再発行手続きのとりつぎ・代行をしてくれます。「保険に入ったけど、どんな保険だったか忘れちゃった」という場合も、保険証券を持参すれば内容確認や書類整理をしてくれるので安心です。
格安スマホでもキャリア並みのサポート体制!『楽天モバイル』
ほかの相談カウンターとは少し意味合いが異なりますが、「WEBだけでも展開できたが、自社商品を選んでもらうためにあえて店舗を作った」例として取り上げたいのが、格安スマホ事業の楽天モバイルです。
格安スマホは、今でこそ各社が大手家電量販店にブースを出したり実店舗をオープンしていますが、サービス開始当初はWEB申し込みのみが中心でした。そのなかで楽天は参入初期より、あえてコストのかかる実店舗を展開しています。
2014年10月にサービスを開始し、同年12月には渋谷の楽天カフェ内で楽天モバイルの取り扱いをスタート。その後2015年3月に仙台、4月に東京世田谷に特設カウンターを設け、2015年10月には銀座に楽天モバイルショップをオープン。現在では首都圏だけでなく全国に約100店舗を展開しています。
「格安スマホの仕組みがわからなくて不安」「SIMフリーって何?」「初期設定をやってほしい」といった要望にこたえるのはもちろん、フィーチャーフォンからスマートフォンに初めて乗り換える人にも丁寧なサポートを実施。幅広い顧客層を取り込んできました。
楽天ほど知名度があれば、WEB申し込みだけでもある程度の顧客はつかめたはずです。しかし、格安スマホ事業の複雑さから、コストをかけてでも実店舗をオープンした方が良いと判断し、あえて実店舗にこだわったのではないでしょうか。
WEB申し込みの場合、スマホやSIMが自宅に到着するまで1週間程度かかるというデメリットもあるため、即日受け取りたいという人にとっても実店舗は最適です。
相談型店舗が、利用者の意思決定を支える
楽天モバイルショップのようにメーカー型の来店相談サービスもありますが、仲介的な相談型店舗は、相談者が紹介先と契約した場合に紹介先から手数料をもらうことで成り立っています。いわば営業代行のようなビジネスです。
保険業界では、企業のセキュリティが厳しくなったことを受け、企業内をまわって営業することが難しくなりました。結婚業界では、価値観の多様化により従来のホテル挙式が減り、ナシ婚が増えています。
相談デスクがあることで、「保険に入りたいけどよくわからないから伸ばし伸ばしにしている」「自分にメリットのある保険があるなら入りたい」層にアプローチできたり、「少人数でできるなら結婚式を挙げてもいいな」「妊娠期でも安心して準備できないかな」と挙式を迷っている層の後押しができます。
成約までの営業プロセスを丁寧に行ってくれる相談デスクは、今後ほかの業界でも広がっていく動きがあるかもしれません。
文/野口美晴 編/小山和之