ひたち海浜公園の観光渋滞対策に関する実験レポートに見る『予約』の可能性と課題まとめ

駐車場待ち 渋滞

観光地における交通手段の約9割は自動車となっているため、交通渋滞・駐車場不足などが大きな課題となっています。

観光地周辺の交通渋滞緩和を図るための具体的施策のひとつとして、駐車場待ちによる渋滞をなくすということがあげられます。
茨城県ひたちなか市「国営ひたち海浜公園」では、平成28年10月の混雑が予想されるイベント開催日に、駐車場予約システムを活用した渋滞対策が試行的に実施されました。

予約ラボではこの試みに注目し、予約から生まれる可能性と課題について検証したいと思います。

(実験およびデータは国土交通省関東地方整備局資料より)

駐車場予約システムの整備と非混雑ルート案内によって渋滞は緩和されるか

コキア紅葉イベント開催時の具体的な問題点と改善案

「国営ひたち海浜公園」では、各種イベント開催日になると西口ゲートに近い西駐車場(最大収容台数:2000台)へアクセスが集中し、周辺道路では駐車場入庫待ちによる交通渋滞が発生しています。
とくに10月は、ホウキ草とも呼ばれる円錐状の植物「コキア」の紅葉に合わせて1日6万人以上の観光客が訪れることもあります。

具体的な問題点としては、以下の通りです。


  • イベント開催時は「みはらしの丘」にもっとも近い西駐車場前や周辺街路で速度20km/h以下の速度低下が発生(平成27年5月のネモフィラ開花イベント開催時の測定結果)
  • 西駐車場にもっとも近いICにアクセスが集中し出口渋滞が発生
  • 駐車場へのアクセスがイベント開催時は通常時の5倍かかることも

 

常陸那珂有料道路ひたちなかICから、ひたち海浜公園ICを経由した西駐車場まで通常時10分以下(約5kmの区間)のところ、混雑によって最大50分かかるほどの渋滞が発生していることが大きな問題点だといえます。


これを改善するためには、以下のような対策が有効だと考えられます。


  • ひたち海浜公園ICからの最短ルートではなく、その先の常陸那珂港ICで降りる迂回ルートを案内(無料区間)して、混雑ルートからの流入を分散させる
  • 事前予約駐車場を整備し、来園時間の分散を図る
  • 駐車場予約システムの構築

 

そして、平成28年のコキアカーニバル開催日のうち最多の混雑が予想される10月16日と23日(いずれも日曜日)、「駐車場事前予約による整備」と「駐車場への迂回経路の案内」という試みがおこなわれました。
つまり、ルートと来園時間を分散させることで、交通渋滞緩和を図るということです。
またこの社会実験については、自治体・道の駅・高速道路サービスエリア・パーキングエリアにおいてチラシやポスターが設置され、新聞やインターネットなどの各メディアでも広く取り上げられました。

試行の具体的内容

下表の通り事前予約駐車場2カ所整備され、実施日の約半月前より駐車場予約システムによって受付られました。

予約受付時間 第3臨時駐車場 第4臨時駐車場
全日(8:30~17:30) 50台 200台
午前(8:30~13:00) 50台 200台
午後(13:00~17:00) 40台 160台

予約と同時に駐車場への非混雑ルート(迂回経路)も案内、当日も高速道路のサービスエリアやパーキングエリアにて駐車場満空状況の情報提供などもおこなわれました。
これらを踏まえて、予約受付状況や実際の駐車場稼働率などについてみてみましょう。

実験の結果

事前予約駐車場の受付状況推移

それぞれの駐車場から、みはらしの丘にもっとも近い西口ゲートへの距離は下表のようになっています。

最大収容台数 西口ゲートからの距離
西駐車場(非予約) 2,000台 300~700m(徒歩4~8分)
第3駐車場(事前予約) 100台 750m(徒歩9分)
第4駐車場(事前予約) 400台 1,200m(徒歩14分)

公園内は広く、西口ゲートからコキアのある「みはらしの丘」まででも1km以上(徒歩約15分)の距離があります。さらに駐車場からゲートまでの距離が長くなると、もっとも遠い第4駐車場からイベント会場までは2km以上歩くことになります。そのためゲートから比較的近い第3駐車場の利用希望が第4駐車場より多くなっていると考えられます。

予約枠が埋まった順は以下の通りです。

  1. 第3駐車場全日枠
  2. 第3駐車場午前枠
  3. 第3駐車場午後枠(10/23分は第3駐車場午前枠とほぼ同時)
  4. 第4駐車場全日枠
  5. 第4駐車場午前枠
  6. 第4駐車場午後枠

国土交通省資料:図-4 予約受付状況(10月16日より引用)

国土交通省資料:図-5 予約受付状況(10月23日より引用)

事前予約受付開始から10~12日目には、第3駐車場全日枠が埋まっています。23日分が16日分より早く100%に達しているのは、イベントが終盤にさしかかりコキア紅葉のピークであると同時にコスモスが見頃を迎えることも関係していると考えられるでしょう。

その後、第3駐車場は16日分が3日前にすべて埋まり、23日分も午前枠・午後枠がほぼ同じ推移で1週間前に埋まっています。
第4駐車場については、16日全日枠が前日までに90%以上、午前枠が前日までに約50%、午後枠が約40%の予約となっています。23日分は、全日枠が4日前に100%、午前枠・午後枠についても前日にほぼ埋まっています。

いずれも、利用できる時間帯が長くて行動に余裕がもてる全日枠に人気が集中していますが、第4駐車場の全日枠より第3駐車場の午前・午後枠が先に埋まっていることから、時間の自由より距離を重視する人も一定数あると考えられます。

実際の利用状況

次に、実際の利用状況を10月23日の駐車場入出庫時間を表すグラフで見てみましょう。

国土交通省資料より図-6引用

西駐車場(非予約・収容台数2,000台・みはらしの丘にもっとも近い)稼働率は午前11時に90%を超え、14時台まで1時間あたりの入庫台数が400台以上。11時台から出庫台数が増え始めていることから、朝早く入庫した人の多くは午前中に、遅くとも14時台には出庫すると考えられます。
稼働率のピークは10時~12時台。15時台から入庫数が大きく下がり、稼働率60%となることから、事前予約駐車場をキャンセルして、こちらに流れた人も一定数あると推測されます。

非予約者は朝早い時間に来園し13時台には出庫する人が多数で、11時~12時台の入庫を13時以降に分散させられれば平準化に貢献できると考えられます。

国土交通省資料より図-7引用

第3駐車場(事前予約・収容台数100台・西ゲートに比較的近い)は、収容台数が少ないものの、9~14時台の稼働率は40%前後とほぼ横ばい。来園時間がうまく分散されたと考えられます。ただし、予約率が100%であったにもかかわらず、実際の利用率は60%(84台/140台)と低めでした。
15時以降は入庫がまったくなかったことから、急な予定変更といった事情も考えられますが、15時以降空きが多く発生した西駐車場に入庫が流れたことも大きいと思われます。

国土交通省資料より図-8引用

第4駐車場(事前予約・収容台数400台・西口ゲートからもっとも遠い)は、9~14時台の稼働率が40~50%とこちらもほぼ横ばい。利用者の70%以上がこの時間に集中しています。
第3駐車場とも事前予約に午後枠が設けられているため、10~11時頃入庫する予定だった人を13時以降に分散させられたとも考えられます。
こちらも全日予約枠は前日までにほぼ100%に達したものの、利用率は64%(357台/560台)となっており、第3駐車場と同じく、西駐車場利用によるキャンセルが大きいと推察されます。

利用者満足度と今後の利用意向

事前予約駐車場の利用者と非予約の一般利用者を対象としたアンケート結果によると、駐車場付近の混雑について非予約者の6割が混雑・非常に混雑と答えているのに対し、事前予約者の80%近くは円滑だったと答えています。
また、もっとも混雑するひたち海浜公園IC利用ルートを選択した人は、事前予約者で17%、非予約者では25%となっており、どちらにも周知されていたものの、事前予約者のほうが予約時の情報提供によって効果が高かったと推察されます。

事前予約者の約90%からは満足・とても満足という結果が得られており、今後の利用意向についても80%以上が利用したい、残りの約20%も以下のような課題が改善されれば利用したいという回答が得られています。


  • 早い段階で予約が埋まり、予約できない人が発生
  • 駐車場から公園までの移動距離が長い
  • 事前予約率は高かったが当日利用率が低く、当日キャンセルへの対応が必要

 

さらに、今回利用しなかった人からも70%以上から利用意向が示されています。

これらのことからこの試みは課題を残しつつも「渋滞を緩和する効果」「利用者の余暇時間損失を減少し満足度を向上させるための効果」を得られたと思われます。

また、平成30年も同様の社会実験が実施されます。

https://kochia2018.resv.jp/

以下の点が、平成28年の試行の実験から変更されています。


  • 第3駐車場での予約を廃止し、第4駐車場のみとする
  • 入庫開始時間を30分繰上げし、7時30分からとしている
  • 最大収容台数1,000台と前回より大幅増
  • 午前枠1,000台、午後枠900台、全日枠を廃止し完全入れ替え制の合計1,900台受け入れ

 

公園までの距離やキャンセルへの対応については課題が残りますが、事前予約可能台数が増え、完全入れ替え制で時間が分散されることにより、渋滞緩和についてもさらなる効果が得られるかもしれません。

「予約」がもたらす可能性と課題

国営ひたち海浜公園の駐車場予約システム試行から見る課題

平成28年度の実験は渋滞緩和において一定の効果があったと考えられます。
しかし、平成30年度の実験において「事前予約枠の増加」という点は改善されているものの、あえてもっともニーズの高かった「比較的近い駐車場」と「全日枠」を外すという試みがされています。

実験結果では、来園時間や来園ルートなどにおいて、ある程度の分散は図れましたが、来園が午前中に集中するという傾向は残りました。これは、多くの事前予約者が、全日枠を確保できていても午前中など早めの時間に来園するためだと思われます。

つまり、午後枠の予約者は13時以降に到着するようその日の行動を調整し、午前枠の予約者は13時に出庫するように調整しますが、全日枠の予約者は朝早く出て、帰る時間も未定であることから、結果的に時間分散という面ではあまり効果が得られない側面もあるのでしょう。

しかし、実際に非予約者が利用する西駐車場入出庫状況を見ると、早朝に入庫した人の多くは14時台には出庫しています。出庫のピークは16時台ですが、これは11時以降入庫の割合が高いと考えられるでしょう。11~12時台入庫の分を13時以降に、つまり1~2時間ほど入庫を遅らせるだけで、駐車場稼働において平準化が図れると期待できます。

海浜公園の開園時間が9時半であることから、多くの利用者の園内滞在時間は3~5時間程度と推察されます。13時入庫でも17時の閉園時間まで4時間あることになり、近隣からの来園者であれば「午後のほうが比較的混雑が少ない」と事前に分かることによって時間を遅らせる可能性も期待できます。

これを解決するためには「時間帯ごとの予約を可視化して制限を設ける」ことが、ひとつの対策だといえるでしょう。

他業種の実例から見る「予約」の効果と今後の可能性

ここで、ある企業の健康診断への予約システム導入事例をご紹介します。

健康診断受け入れ可能枠を時間帯ごとに可視化し、受け入れ可能な人数を超えた時間帯については自動的に受付不可→空いている枠で予約を受付するという、列車や宿泊施設の予約などでも採用されているシステムです。

空き枠が見えることによって、残った空き枠のなかからもっとも希望に近い時間を選ぶというこのしくみを健康診断でも採用することで、受診時間が自動的に平準化され、待ち時間がなくなり業務効率アップという効果が得られたということです。

また企業側から見ても、社員自身がシステムで予約をおこなうことによって、人事部などの部署における「1,500人以上のスケジュールを調整する」という業務負担がなくなることも大きな改善点でしょう。

また、こちらの企業では、健康診断日程調整をシステム化後、毎年1ヶ月間で約2,000人が受けるインフルエンザ予防接種の予約もシステム化されました。

これまでは《社内告知→接種希望者から日程の要望を受付→人事部による日程調整》という流れだったものが、《1日〇本という予約枠を設定→その選択肢のなかから社員自らが予約》という流れに変わり、こちらも平準化・業務効率化につながっています。

つまり、予約システムの導入によって、企業と社員双方の無駄と非効率が改善されたということになります。

このように、空き枠の可視化によって一定の時間や場所への集中を平準化することで、社員(利用者)は待ち時間という無駄がなくなり、業務効率化を図る(快適に利用する)ことができるようになります。
また企業(サービス提供者)は、経営資源であるヒト・モノ・カネというリソース管理の最適化を図れることになります。

関連記事
https://yoyakulab.net/business/interview-simizukensetsu/

これは、ひたち海浜公園の渋滞緩和対策にもあてはまると考えられます。

駐車場予約時間の選択肢を午前枠・午後枠などと制限することによって来園時間と滞在時間の分散が期待できます。その結果、駐車場や周辺道路利用率の平準化につながり、渋滞緩和改善が大いに期待できるといえます。
平成30年度の実験によって、どのような効果が得られるか注目されます。

「予約」で非効率を改善する社会へ

予約枠を可視化し平準化するという考え方は、シェアリングエコノミーのように遊休リソースを埋めて、必要とする人に提供するサービスと似ています。
駐車場の場合、駐車台数や駐車時間が一定の時間に集中することで混雑が発生しますが、混雑時は車が入りきらず空いている時間はスペースに無駄が発生する――予約によって、このような「もったいない」をなくすことが、非効率といわれるさまざまな課題解決のための第一歩だといえるのではないでしょうか。

 

この記事の著者、最近書いた記事

予約ラボ編集部

予約一筋15年のリザーブリンクが運営する『予約ラボ』の編集部です。注目のサービスや、予約から始まるサービス体験、予約管理にまつわるビジネスノウハウまで、「予約」に関するあらゆる情報をお届けします!共同研究のご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

カテゴリから探す

予約ラボについて