お客様の「今空いていますか?」に隠されたニーズとは
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小売店や飲食店、美容院などサービスを提供する店舗を経営していると、お客様から問い合わせの電話をいただくことがあります。特に、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて多くの店舗で営業時間の短縮や変更が行われるようになると、多くの店舗では「今空いていますか?」という問い合わせが増加しているのではないでしょうか。
実は、お客様は単に現在お店が営業しているかどうかを知るために「今空いていますか?」と電話をしているのではない、ということにお気づきでしょうか? また、お客様は「今空いていますか?」に続いてさまざまな問い合わせをするケースもあります。そこには、お客様と店舗側の間でさまざまな調整が発生しています。
今回は「今空いていますか?」に隠されたお客様のニーズと、その背景にある「がっかりしたくない」という気持ちについてひも解きます。
目次
お客様はこんな体験をしていた
それでは、お客様はお店が開いていないことでどんな体験をしているのでしょうか。いくつかの意見を紹介しましょう。
- 好きなパン屋さんへ自転車で行ったら、店休日でもないのにお店が開いてるのか閉まっているのか分からない状態だった。まさか閉店?はしてないと思いたいけど。汗だくで行って、ガッカリした。
- いつも普通に自由に入店できる書店に行ったら、入店制限+整理券が配布されていて入店ができませんでした。
- 仕事で残業して最寄り駅近くの中華料理店で夕食をテイクアウトしようとしたら、時短営業で終わっていた。仕方なくコンビニで買って帰った。
これらの意見から、お客様はお店が開いていないことにより、2つの体験をしていると考えられます。一つは、お店が開いていないことでサービスを受けられずにがっかりするということです。もう一つは、上記の書店の例のように他のサービスで代替できない場合、「時間を無駄にした」「翌日以降の開いている日に改めて店舗に行かなければいけない」というフラストレーションを感じるということです。
お客様の行動とそこに隠された意図
昨今は特に、新型コロナウイルスの影響で店舗の営業時間や休業日なども大きく変わりました。それでは、このような状況下でお客様はどのような行動をとるのでしょうか。
- お店のホームページをチェックし、営業時間の変更に関する記載がないかどうか調べる
- お店のTwitterアカウントで営業時間や入場制限の有無、整理券の配布の有無などを調べる
- 電話をして尋ねる
このように、お客様はお店の情報にアクセスして営業時間の確認を行います。これは単に営業時間を調べているのではありません。この行動の背景には、サービスが受けられない、他の日に改めて足を運ばなければいけないという「がっかり体験」を回避したいという意図があるのではないでしょうか。
こんな問い合わせはありませんか?よくあるお問い合わせとそこに隠されたニーズとは
コロナ禍以前にも、お客様から営業時間をはじめとするさまざまな確認のための電話をいただくことはあったかと思います。「今空いていますか?」が単に営業時間の確認にとどまらず、がっかり体験を回避する目的があるように、これ以外の問い合わせにも隠されたニーズがあります。
ここからは、サービス予約の現場である美容院と商品(モノ)予約の現場である小売店においてよくある問い合わせの例を挙げ、問い合わせに隠されたニーズ、つまりお客様がどんなことを期待しているのかを解説します。
例その1:美容院
- 「○日(×時)は空いていますか?」
・表面的な顧客のニーズ:営業時間の確認
・隠されたニーズ:その日時にサービスを受けられないというがっかり体験の回避 - 「今からサービスを受けられますか?」
・表面的な顧客のニーズ:店舗のリソースの確認
・隠されたニーズ:今から店舗を訪れてサービスを受けられないというがっかり体験の回避 - 「何時まで営業していますか?」
・表面的な顧客のニーズ:終了時間の確認
・隠されたニーズ:自分の予定に美容院の予定を組み込めるかどうかの確認 - 「今がだめなら、いつなら開いていますか?」
・表面的な顧客のニーズ:日時の調整
・隠されたニーズ:自分の予定に美容院の予定を組み込めるかどうかの確認
例その2:小売店
- 「○日(×時)は空いていますか?」
・表面的な顧客のニーズ:営業時間の確認
・隠されたニーズ:希望した日時にサービスの提供が受けられないというがっかり体験の回避 - 「○○はありますか?」
・表面的な顧客のニーズ:商品の販売確認
・隠されたニーズ:店舗を訪れて商品を手に入れられないというがっかり体験の回避 - 「○○を●個欲しいのですが」
・表面的な顧客のニーズ:商品の在庫確認
・隠されたニーズ:店舗を訪れて希望する個数の商品を手に入れられないというがっかり体験の回避 - 「●日●時に商品を取りに行きたいのですが」
・表面的な顧客のニーズ:日時の調整
・隠されたニーズ:確実に商品を手に入れたいという希望
実際には、これらの質問は単体でなされるだけではなく、複数の質問を交えた問い合わせというケースもあります。例えば小売店の場合、「○○はありますか?」という問い合わせの後に「●日●時に商品を取りに行きたいのですが」と聞かれるなどです。
まとめ
お客様からの「今空いていますか?」には、隠された真のニーズがあることをご理解いただけたでしょうか。また、店舗側としても「今空いていますか?」に対して「空いています(空いていません)」という回答だけで終わることは稀です。
問い合わせに隠されたお客様のニーズに応えるためには、お客様と店舗側の間で調整が発生します。この調整はすぐにできることもあれば、「確認して改めて連絡します」など、多少の時間を必要とすることもあります。そのため、調整がすぐにできないというフラストレーションをお客様にもたらしてしまう可能性もあります。
これを防ぐ方法の一つとして、営業時間、サービスが提供可能かどうか、サービス提供可能時間帯、商品在庫の有無、希望日時に用意できるかどうかなど、顧客のニーズを満たす要素となりうる項目をあらかじめ店舗のウェブサイトやSNSなどを利用して提示するという方法があります。これにより、お客様と事業者側のストレスや負担を軽減できます。
これらのツールを利用して、店舗からこまめに情報を発信することは現代においてとても重要です。お客様のニーズを満たすことは、お客様のためであることはもちろん、効率的な店舗運営のためにも必要なのではないでしょうか。