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「予約」とは?~「予約」の定義探求~

考察

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2020.05.18 2022.12.23
中谷 淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

「『予約』とは、つまりどういうことだろうか?」
今回、予約ラボのコンテンツ監修を引き受けてから、考え続けていることの1つです。

新しいテーマについて考えるときに、まず「定義」を知ることからはじめています。
ということで、今回は「予約」の定義について書き連ねたいと思います。

まずは、予約について辞書を引いてみると、

よ やく [0] 【予約】
( 名 ) スル
(1) 前もって約束しておくこと。また、その約束。 「席を-する」 「 -をとる」 「 -金」
(2) 〘法〙 将来一定の契約を締結することをあらかじめ約束する契約。
(三省堂 大辞林第三版)

とありました。

なるほど、

「前もって約束しておくこと。また、その約束」

ということですね。(約束とは何か?という話しにもなりますが、ここでは割愛します。)
(2)は法律用語ということですが、意味するところは同じとしておきます。

続いて、学術的な定義を探してみました。
予約をキーワードに研究論文を検索してみると、経済、経営、心理、情報システム等の幅広い領域で研究されていることを知りました。(このあたりは、別途まとめるつもりです)

明確に「定義」について言及している論文が、(現段階では)見つかっていないのですが、今回は「不確実性下における家計のサービス予約行動」という論文にあった、

「予約するということは『その家計が相対的に大きな効用水準を有している』という私的情報を表明していることに他ならない。」

という一文に注目してみます。

「約束」という言葉はどこにも入ってきませんね。これだけでは「つまりどういうこと?」と思われる方が多いと思いますので、解説を試みたいと思います。

まずは『その家計が相対的に大きな効用水準を有している』という部分です。

「家計」とは経済学でよく使われる言葉ですが、平たくいえば「消費者」のことです。
「効用水準」は「効用」が経済学用語で、意味的には「満足」なので、「満足する水準」となりましょうか。

分かりにくいですね。たとえ話で説明してみます。

 

例)

読売ジャイアンツのファンのAさんとBさんがいたとします。

1ヶ月後の◯月◯日に行われる東京ドームで行われるジャイアンツ戦に対して、

Aさんは、1ヶ月前の段階で行くことを決め、すぐにチケットを購入しました。そして、当日東京ドームで野球観戦を楽しみました。

一方、Bさんは、1ヶ月前の段階では、試合当日別の予定が入るかもしれないので、
すぐにチケットは購入せず、他の予定が入らないことが確実となった試合の1週間前にチケットを購入して、当日東京ドームで野球観戦を楽しみました。

 

この場合、AさんはBさんより、◯月◯日のジャイアンツ戦を東京ドームで観戦することに対して、「大きな効用水準を有している」ことなります。

Aさんの方が、Bさんより「観戦したい気持ちが強い」、「優先順位が高い」と言い換えても良いかもしれません。

「私的情報を表明する」とは、

上記の例の場合では「どれだけ◯月◯日のジャイアンツ戦を観たいか」という気持ちになります。
早めに購入するということは、それだけ◯月◯日にジャイアンツ戦を観たいということを提供側に伝えることになる、ということです。

Aさん、Bさんとも結果として、いずれも東京ドームで観戦していますので、結果だけでは、主催者側は、「どちらが、よりこの日の試合を観戦したかったか」という私的情報に関することは判別できません。しかし、チケット購入タイミング(つまり予約タイミング)がわかることで、Aさんの方が、Bさんより、「よりこの日の試合を観戦したかった」と推測することが可能になります。

 

以上をまとめると、

予約とは、「消費者の欲求を企業側(製品・サービス提供者)へ伝えること」

と解釈することができそうです。

予約の仕組みがあることで、消費者の欲求を把握することにつながると考えていくと、予約の仕組みも「単に約束をとりつける」だけのものから、変化をしていく必要性が生じてくるのではないでしょうか。

定義を探求していく中で、そんなことを考えました。

今回はこの辺りで。

<参考文献>
松島格也,小林潔司,小路剛志(2000).「不確実性下における家計のサービス予約行動」『土木計画学研究・論文集』No.17,pp.655-666.

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中谷淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

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