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京都での徒然~「予約を取らないお店」と「予約が取れなくても入れたお店」のお話~

考察

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2022.02.04 2022.03.11
中谷 淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

INDEX

みなさん、こんにちは。
気がつけば2022年も始まり1月も下旬となっていました。また、前回コラムから月日を空けてしまいました。ごめんなさい。

予約ラボのコンセプトは「予約を科学する」であり、様々な視点から予約を探求し、本コラム以外にも様々なコンテンツが発信されています。昨年、予約ラボのサイトがリニューアルされ、本コラムは「考察」という独立カテゴリーをいただきました。今年は開店休業中とならないよう、予約に関する「考察」を毎月発信していきたいと思います。

「予約を取らないお店」と「予約が取れなかったのに入れたお店」

2021年末から年始にかけて、京都で過ごしてきました。年末年始は新型コロナウイルスも小康状態であったためか、主要な商業地・観光地はどこも沢山の人で賑わっていました。

そんな京都滞在で「予約」について考えさせられる経験がありましたので、今回はそのお話しをしたいと思います。

「予約を取らないお店」のお話

京都の街並

四条河原町の近くに昭和の文豪も愛したという老舗京料理屋さんがあります。今回の京都滞在で訪問することを決めていたお店の1つでした。

人気のあるお店なので当然「予約」を考えたのですが、お店の情報を確認すると、なんと「予約不可」。それがお店の方針ならば致し方なしです。時間には余裕があったので、待つことを前提に行ってみました。

表玄関からお店に入ると店内は満席、お店の人から番号札を渡されました。店外に待っているお客さんもなく、お昼には少し早い時間だったため「これなら、ほとんど待ち時間はなさそうだ」と思ったのは大いなる勘違いで……入ってみると店の奥に待合専用の部屋があり、そこに沢山の方が待っていることを知りました。

約1時間待ち、美味しい京料理のお弁当をいただくことができました。

そのお店、昼は「お弁当」がメインメニューとのことで、ほぼ全ての人がそのお弁当を注文しており、注文から待つことなく運ばれてきました。

着席からお店を出るまで約40分程度。正確にカウントはしなかったのですが、お店に到着した時に待っていたのが30人程度で席数が約20席と考えると、1時間待ちは妥当なところです。

このお店のポイントを整理すると、

  • 老舗の人気店(長時間待ってでも食べたいお客さんが沢山いる)
  • 席数が少ない
  • 客回転が速い(ランチ時間)
  • 限定された事前準備も容易なメニュー(実質「お弁当」の単一メニュー)

ということであり、予約を取る必要性がない、つまり「予約を取らないお店」は予約を取らないことで利益を最大化できるから、そのようにしていると考えられます。

席数の少ない人気店で仮に予約を受けてしまうと、限られたランチ営業時間内でトータルの客数が少なくなってしまいます。来店してくれた人から順番に案内することで、客数を最大化できるということですね。

カウンターしかない人気ラーメン店が予約システムを導入する必然性がないことをイメージしてもらえれば、想像しやすい話かもしれません。

なお、その日、食事を終えて外に出てみると、店外まで待つ人であふれていました。あの様子だと1時間以上待つことは間違いなさそうです。それでも食べたい美味しい京料理お弁当なのだから仕方ないですよね。

今回はランチでの利用で年末年始ということもあり、通常営業時にどの程度のお客さんが訪れているのかはわかりませんが、あれだけ待つとなると、待つことができる観光客か休日等でないと気軽に行けないですね。

「予約が取れなかったのに入れたお店」のお話

すき焼き

年末は「すき焼き」と決めていまして、京都でもお店を探して行ってきました。ネットで調べた老舗のすき焼き屋さん、こちらは予約が可能なお店でしたが当日電話で予約を試みるも、

「本日は予約がいっぱいで」

と、予約が取れませんでした。

そりゃそうですよね、年末ですし。諦めていたのですが、店の近くにいたので開店後まもなくの時間にダメ元で行ってみると、なんと入れました。ほんの30分前くらいに電話予約を断られたのに、です。

予約がキャンセルされて空いたのかもしれません。あるいは、予約で満席にせず1~2組分は席を残しておく飲食店はあるようなので、今回の件はそれだったのかもしれません。

美味しいすき焼きが食べられたので、それはそれで良かったのですが、予約の電話をした段階で「予約は受けられませんが、開店後すぐに来店してくれたら入れるかもしれません」等と言ってくれたら親切なのに、とは思いました(もしかすると、そのお店は老舗で、明らかに「一見さん」な電話をしたので京都的にお断りされたのかもしれませんが・笑)。

それはさておき、この経験は「予約への最適なリソース配分はいかにあるべきか」ということを考えさせられました。
ホテルなどの宿泊施設では、全てを予約で埋めないで空き部屋を確保しておくことがあります。ネット予約でのオーバーブッキングを回避するためや、宿泊客の部屋に何か問題が生じた際の予備として利用することが目的だといわれます(ネット予約で満室でも直接ホテルに電話をしたら予約が取れたという経験がある方も少なくないと思います)。

飲食店においては、どの程度席を残しておくことが最適なのでしょうか。これも今後の探求テーマにしたいと思います。

人気飲食店において限られたリソース(席数)で客数を最大化するために、予約はどうあるべきか。京都での「予約を取らないお店」と「予約が取れなかったのに入れたお店」の経験によって、飲食店における予約システムのあり方の奥深さを再認識させられました。

ということで、2022年最初の考察(コラム)でした。本年も「予約ラボ」をよろしくお願いいたします。

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中谷淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

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