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ネットの口コミ評価は予約に影響するのか?(予約に関する文献レビュー②)

考察

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2021.06.18
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中谷コラム15_mv

中谷淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

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みなさん、こんにちは。前回のコラムから時間をかなりあけてしまいました。申し訳ございません。

今回も前回に引き続き、海外論文を紹介しながら予約について考えていきたいと思います。

予約サイトの口コミ評価は予約に影響するのか?

みなさんは、初めて利用するホテルや旅館、飲食店を予約する際、口コミをどれくらい参考にされますか?(どれくらい影響を受けますか?)

予約サイトに掲載されている情報が良くても、口コミ評価があまりに低い場合は、予約を避けてしまいまいませんか?

ある程度の規模のホテルや旅館、チェーン展開しているような飲食店であると、影響はさほど受けないのですが、それが小規模な旅館や個人経営の飲食店などであると、口コミ評価の影響を大きく受けるような気がします。

そんなことを思いながら、口コミ評価の予約に与える影響に関する研究論文がないか探してみたところ、「The role of electronic word of mouth in reducing information asymmetry:An empirical investigation of online hotel booking」という論文を見つけました。

これは、「Journal of Business Research」というトップジャーナルの1つに数えられる優れた海外学術誌に2018年掲載された論文です。 邦題をつけるならば、「情報の非対称性軽減におけるネット口コミの役割。ーオンラインホテル予約を対象とした実証実験ー」となりましょうか。

本論文では、Booking.comからホテルの価格と宿泊者の評価情報を抽出し、評価の価格への影響を分析しています。価格への影響を分析していますが、予約への影響と読み解いても良い内容でした。

そこで、今回は本論文の内容を紹介しながら、口コミ評価の予約に与える影響について考えていきたいと思います。

ネット口コミは信頼できる?

ネット口コミの先駆けは1995年に登場したAmazonなのですが、現在では、様々なオンラインサービスに口コミ評価を投稿できる仕組みが広がり、浸透していますよね。

※最近のAmazon消費者レビュー(ネット口コミ)には、個人的に疑問を感じることもありますが、それでも少なからず参考にしてお買い物をしていることは否定できません。

そんなネット口コミは、リアル口コミに比べると信頼性は低いと考えられてるものの、販売者側(売り手側)が作成した情報よりは信頼性が高いと考えられ、米国で90%、英国で80%の消費者が購買に何かしらの影響を受けるという研究結果があるそうです。

今回、本論文が取り扱うホテル業界では、世界中の旅行者の75%が旅行を計画する際の情報源としてネット口コミを参考にしているという推計があるそうです。

自分もホテルや旅館を予約する際には必ず口コミは確認しています。(そのネット口コミを信頼するか、そして影響の程度はケースバイケースですが)

ネット口コミの役割と情報の非対称性

ネット口コミの最も重要な役割の1つは「経験財オンライン市場に共通する情報の非対称性の軽減」と言われています。
※ここでは詳しく紹介しませんが、口コミに関する研究は世界中で多くの研究者よってなされていて、口コミの役割や効果について様々な研究が積み重ねられてきています。

経験財というのは、ホテルなど実際にサービスを受けてみないと品質を確認できない類のものです。

ホテルや旅館以外にも、飲食店やテーマパークなどのレジャー施設なども経験財です。(ちなみに、服などは試着して品質を確認できます。そうした購入する前に調べることができる、商品やサービスのことは探索財といいます)

予約サイトからホテルや旅館を予約する場合、一般的には数日から数週間(場合によっては数ヶ月前)に、宿泊する場所から離れた場所から行います。

それが宿泊したことのあるホテルや旅館ならば、その品質を知っているので、情報の非対称性の問題は生じないのですが、初めての場合は、実際にサービスを受ける前なので、品質に対しては不確実なまま予約を行うことになる、ということです。

初めて宿泊することになるホテルや旅館に対する不確実な状況を埋めるために、ネット口コミが役割を果たすということになります。

※ま、言われてみれば当たり前な話しですよね(笑)

ホテル予約サイトにおけるネット口コミの影響

情報の非対称性の問題、予約の際に生じる不確実な状況を解消すべく、ホテル業界では古くから対策を打ってきました。
それが星評価の仕組みです。格付け機関により、多くのホテルは星1つから星5つまでホテルはランク付けがされています。外部機関による評価ということで、例えば5つ星のホテルであれば、初めて予約する場合でも、5つ星の品質を受けられることが期待できますし、反対に1つ星であれば、それ相応と事前に認識することができます。つまり、星評価の仕組みにより、予約段階での不確実性を下げることが出来ると言えます。

星評価の他に、不確実性を下げる効果があるのが、ブランドです。一流ホテルとして知られるホテルや、有名ホテルチェーンなどであれば、初めてであっても、不確実性が小さくなると考えれれます。

ようやくここから今回の論文の本題にはいるのですが、今回とりあげている論文「The role of electronic word of mouth in reducing information asymmetry:An empirical investigation of online hotel booking」では、星評価とブランドという2つの不確実性を小さくする要素があるホテル予約サイトにおける、ネット口コミの影響を実データを用いて明らかにしています。

主たる仮説は、「ブランド力のないホテルや星評価の低いホテルでは、ネット口コミの影響が大きい」というものです。

この仮説を検証するために、Booking.comから、ヨーロッパの6都市(パリ、ロンドン、バルセロナ、ウィーン、ローマ、ベルリン)から約3,000のホテルの価格とネット口コミ(レビュースコア)をデータとして利用しています。

不確実性が大きいほどネット口コミの影響は大きい

実際のデータを用い分析の結果、5つ星、4つ星など星評価の高いホテルや、ブランド力があるホテルは、ネット口コミ評価の影響をあまり受けず、1つ星、2つ星のホテル、ブランド力のホテルでは、ネット口コミの影響が大きいという結果となっています。

結論的には、仮説の通り、「ブランド力のないホテルや星評価の低いホテルでは、ネット口コミの影響が大きい」という結果になっているのですが、その影響は、ネット口コミの量がポイントになるというのです。

過去の口コミの研究にて、ホテル業界においては、ネット口コミの量が多いほどに、そのホテルを予約する確率が高まるという研究結果がでているのですが、1つ星、2つ星のホテルにおいては、ネット口コミに量が多く、その総合評価が中程度以下であるとマイナスの影響が出るという結果になっているのです。(なお、ネット口コミ量が少ない場合は、そのマイナスの影響が小さくなる結果となっています)

この結果を踏まえ、ネット口コミの内容は、事業者側でコントロールすることが出来ませんが、

  • 満足している顧客を特定して積極的に口コミを投稿してもらうことや、
  • ネット口コミを投稿する可能性のある顧客を特定し可能な限り最高のサービスを提供する

ことを、実務での取り組みとして本論文は提示しています。

加えて、ネット口コミの影響を小さくするために、不確実性を小さくする手立て(例えば、大手チェーンに加盟するなど)も選択肢になるとしています。

感覚や経験則を裏付ける研究結果

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

今回紹介する論文の結論に対し、

「え、当たり前じゃないの?」

と思われる方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

細かな分析手法を割愛し結果のみを紹介しているので、「当たり前」感が強くなっているかと思いますが、感覚的、経験則的に知っていることを科学的な手続きを通し、それを検証、明らかにする研究は大変価値があると思います。

『ある程度の規模のホテルや旅館、チェーン展開しているような飲食店であると、影響はさほど受けないのですが、それが小規模な旅館や個人経営の飲食店などであると、口コミ評価の影響を大きく受けるような気がします。』

と冒頭に個人的な感覚を記載しましたが、

今回ご紹介した論文は、まさにそれを裏付ける研究であり、結果は、ネット予約を増やしていきたいと考えるホテルや旅館に大きな示唆のあるものだと思います。

今後も、こうした良い研究論文を見つけてご紹介していきたいと思います。

・今回ご紹介した論文

Eran Manes,Anat Tchetchik(2018),”The role of electronic word of mouth in reducing information asymmetry:An empirical investigation of online hotel booking”,Journal of Business Research,Volume 85, 185-196.

中谷淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

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