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事業の要は「本当に必要とされていること」―Cansell株式会社のホテル予約の売買とは

ビジネス

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2018.07.18 2021.01.06
予約ラボ編集部

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急に行けなくなった旅行の宿泊予約、このままではキャンセル料を払わなくてはならないから、代わりに誰か行ってほしい―そんな課題を解決するサービスが、2016年に創業したホテル予約売買プラットフォーム『Cansell』です。

同サービスは、旅行に行けなくなった売り手が、宿泊施設の予約メールをCansellに転送して販売を申請。査定額で予約権利をCansellに売る「買取」と、自身で売値をつけてプラットフォーム上で販売する「出品」を選択し、買い手がつくと売買が成立するという、シンプルな仕組みです。

「ユーザーから真に必要とされるサービスであれば長く使ってもらえるはず」と語る山下氏は、長期的なビジョンを達成するためにも、ユーザーとホテルの両者に対し誠実な姿勢を貫こうとしているといいます。

今回は同氏に、Cansellの事業と、立ち上げから現在に至るまでの思いについてお話を伺いました。

審査基準は3つだけ。シンプルな売買プラットフォーム

――Cansellを立ち上げたきっかけについて教えてください。

「もともとは旅行業界を軸に『ないと絶対困るもの』のを作ろうと思い、旅行の際にかならず必要とされるものを考えました。そこで出てきたのが、移動と宿泊です。僕が特にビジネスチャンスを感じたのが宿泊で、キャンセル料が発生するシチュエーションは『マイナスをゼロにすること』が求められる。ここにはニーズがあると確信し、いまのサービスに辿り着きました」

――旅行に行けなくなったユーザーに経済的メリットがあるだけでなく、ホテル側にとってもキャンセルされずに予定通りの収益が得られる、というのは大きなメリットですね。

「そうですね。また、キャンセル料が必要なケースでユーザーとホテルがトラブルになったとき、ホテル側は『もう来てくれないのではないか』と不安を抱くこともあります。そうしたトラブルや心理的負担をなくせることも大きなポイントです。売買が成立して、代わりに泊まったユーザーがそのホテルを気に入れば、また次の予約に繋がることもある。メインの目的はあくまでユーザーのニーズに応えることですが、ホテル側にもメリットは多くあります」

――売り手は予約メールを送り値段を付け、買い手は買うか買わないか判断するというシンプルな仕組みと伺いました。売り手の申請から売買成立までは、どのようなフローで取引が行われるのでしょうか?

「まずメールが届いた段階で、予約の内容が正しいか・予約の変更が可能かをホテルに連絡して確認します。そこで問題なければ、売買へ進め、成立すれば宿泊施設に連絡し名義を変更。買い手の連絡先などの情報をホテルに伝えるという流れですね」

オフィシャルに事業を展開するのは、宿泊業界とユーザーの両方から信頼されるため

――ネット上のプラットフォームでの売買では、高価格設定や転売といったトラブルが跡を絶ちません。その点Cansellでは、徹底して定価以上の売買を禁止していると伺いました。

「Cansellの目的は『キャンセル料の課題を抱えている人を助ける』という点にあるからです。定価以上の値付けが可能なプラットフォームを作っても、転売をする人に旨味を与えるだけのサービスになってしまいます。二次流通は否定しませんが、困っている人を助けるサービスであるという軸から考え、禁止という方針をとっています」

――CtoCのプラットフォームではなく、あえてCtoBtoCのプラットフォームにしたのも、そうしたトラブルを防ぐためなのでしょうか。

「おっしゃるとおりです。権利の売買という曖昧な事業だからこそ、トラブルを起こして課題を抱えては信頼を得られません。ユーザーにコミュニケーションコストを抑え、自分たちがオペレーションコストを払い、ユーザーともホテル側ともしっかりと向き合う。おかげさまで、定価未満での値付けシステムやCtoBtoCのビジネスモデルは、宿泊業界にも高く評価してもらっています」

――Cansellではパートナープログラムを用意して、提携する宿泊施設にさまざまな特典や保証を提供していると伺いました。ユーザーニーズに応えることを第一目標として掲げながら、こうした宿泊業界への手厚いサービスを用意しているのはなぜなのでしょうか?

「宿泊業界にオフィシャルにCansellの仕組みを認めてもらい、ユーザーに長く使われるサービスとして育てたいからです。我々の事業にとって宿泊業界は間違いなく必要なパートナーで、彼らと共に成長していくためにも業界から信頼を得なくてはならない。宿泊業界に認められるサービスであれば、ユーザーの安心感や信頼にも繋がります。事業を始めたときから、ユーザーと業界の二方向に対して誠実でありたいという姿勢を常に持ち続けています」

Cansellは、今後の時代ニーズに応えられるサービス

――飲食領域でも無断キャンセルが問題になり、事前決済を推し進める取り組みも増えてきています。Cansellはそうした時代のニーズにもマッチすると考えられますね。

「10年前であれば、僕たちのサービスにいまほどのニーズはなかったかもしれません。しかしいまは、事前決済という考え方がより浸透してきているフェーズ。ホテル業界は比較的早い段階からキャンセル料などを取る風習がありますが、他領域でキャンセル料が当たり前になっていくことで、キャンセルリテラシーのようなものが高まることも期待できます。今後Cansellが応えられるニーズはどんどん広がっていくのではないでしょうか」

――今後のニーズの高まりに向けて、次のステップではどのような施策や戦略を考えていますか?

「マーケティング施策を積極的に展開し、売買の成約率向上を狙っていきたいと思っています。現在、出品された予約の売買成約率はまだまだ改善の余地があります。出品されている予約は正規の値段よりも10%〜50%オフであることが多いため、買い手のニーズをより汲み取った施策を実行すれば、成約率を限りなく100%に近づけることができるはずと考えています」

――現在、Cansellに出品されている宿泊予約の多くは「行けなくなった」予約ですが、そのようなかたち以外で今後サービスがどのように使われたら面白いと感じますか?

「『旅先に行ってから』の予約売買にも需要があるかもしれないと思っています。たとえば目的地到着後でも、いつもは1泊20万円のホテルがその日の予約で3万円で出品されていたら、予約していたホテルをキャンセルしてそっちに泊まりたいって思いますよね。これまで売り手と買い手の背景情報は積極的には集めてきませんでしたが、これからはそうした文脈も拾ってマーケティングに活かしたいですね」

ユーザーと宿泊業界の双方に対して誠実でありたいという山下氏の願いは、Cansellという企業の姿勢やサービスの作り方そのものに色濃く反映されています。一般的にマイナスなイメージを持たれがちである「予約キャンセル」に対し、Cansellは全方位の負担を大きく減らす一つの解となるかもしれません。

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