パンのおいしさを引き出したのはシンプルな材料とあきらめない研究魂
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株式会社サラ秋田白神は、秋田県で発見された「白神こだま酵母」を生かすパン作りで成長を続けてきた企業です。国産小麦や天然酵母から自然の旨みを引き出すノウハウを活用して、いま改めて取り組んでいるのは「米粉」。今回は米粉レシピを学べるサラ米粉クッキング広尾スタジオに伺い、代表取締役の津田雅俊さんとスタッフの橘田砂織さんにお話を聞きました。
- 注目したいポイント!
- 「アレルギーに配慮した特別食はあまりおいしくない、無理して食べる料理が果たして正しいのか?」
「完成品を売るのではなく家庭で簡単に焼ける”ノウハウを売る”ことを選択。」
「生徒さんは30代から50代の女性中心、自分やご家族の健康について関心が高い方が多い。」
「”知ってもらう”活動が重要、雑誌などメディアへの露出を増やしていく。」
目次
アレルギーの子どもが「おいしい」と言えるパンを作りたい
津田さん この会社の前身は、当スタジオ主宰の大塚せつ子が1995年に開いた天然酵母パンの店「サラ・ブレッドハウス」です。アレルギーの子どもでもおいしく食べられるパンを作りたい、という思いから始まりました。アレルギーに配慮した特別食というのは正直あまりおいしくないんですよ。でも無理をして食べる料理が果たして正しいのか、大塚は疑問を持ちました。
パンは本来、小麦粉・塩・砂糖・酵母の4つの材料があればできます。でも当時はベーカリーのパンでも添加物や材料が足されたものばかりでした。そこで大塚は時間と手間をかけてシンプルな材料だけでおいしくなるパンを研究し、ふっくらと焼き上げる技術を身につけたんです。最初は家で焼いて配っていたのですが、味が評判になってビジネスとして立ち上げました。添加物など余計なものを入れない手法は今の当社の基礎にもなっていて、私たちは「引き算のパン作り」と呼んでいます。
さらに体に優しい食材を求めて、小麦粉から米粉へ
津田さん 天然酵母を使った小麦のパン作りはビジネスとして軌道に乗りました。しかし、まだ小麦アレルギーの子どもはパンが食べられません。そこで注目したのが米粉です。米粉にはグルテンがないので通常のパンの焼き方ではふくらみません。だから米粉パンは不可能だと思われていたのですが、大塚はあきらめないんですよ。試行錯誤をくり返して、どんなにダメだと言われても必ずレシピを手にしてくる粘り強さがあるんです。
レシピがあれば小麦粉パンと同じように製造販売も可能です。しかし私たちは、米粉に関しては、パンという完成品を売るのではなく家庭で簡単に焼けるノウハウを売ることを選びました。そのために2013年3月に開設したのが当スタジオです。
講座への申込はほとんどインターネット経由
橘田さん 秋田県の「白神こだま酵母」を販売するために秋田に本社を置き、八王子に事務所と工場を持っていますが、生徒さんの利便性やPRの効率を考えて今回は都心を選びました。講座に参加する生徒さんは30代から50代の女性が中心で、自分やご家族の健康について関心が高い方が多いです。生徒さんがインターネット上で手間なく講座の申込ができるように、サイト開設当初から予約管理システムを導入しようと考えていました。実際、webサイトからの申込がほとんどになっています。
日本の食文化を伝えていく場、これからは知ってもらう段階
津田さん 大塚を含め、私たちは米という日本の食文化を残したいと考えています。天然酵母と一緒に米粉レシピを推していこうと決めた土台もそこにあります。そのためには実際の消費につながるように米粉の認知度を上げなければいけません。今までは「良いことをしているのだから人は自然に来るだろう」と思っていましたが、そろそろ方向転換期。今後は「知ってもらう」活動に力を入れ、雑誌などメディアへの露出も増やす予定です。
橘田さん 当社には、米粉レシピの広尾スタジオ、白神こだま酵母のパン教室、オンラインショップのお客様がいます。今年5月には関連会社が米粉専門の「グルテンフリーカフェRice Terraceかまくら」をオープンさせました。今まではそれぞれのサイトでお客様を管理していたのですが、せっかく関心を持ってくださった皆さんのためにも情報をうまくリンクさせて、安全でおいしい食文化を伝えていかなければと考えています。
- 取材者からの「ここだけの話し」
- 取材に訪れたときは、クッキングスタジオではちょうど新作レシピを試作中でした。
インタビュー後に、米粉でできたシフォンケーキをいただきました。(ありがとうございます!!)ノングルテンで作られたとは思えないふわふわの食感に、くせのない自然の甘みがとても印象的に残っています。
食に対する情熱が伝わるシフォンケーキでした。
株式会社サラ秋田白神
白神こだま酵母の販売から、安全・安心・おいしいをキーワードに白神こだま酵母パンの製造・販売・技術指導を運営。余分なものは一切使わないという「引き算のパン作り」を書籍やクッキングスタジオを通して発信しています。
株式会社サラ秋田白神