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ユーザー体験向上の鍵は、ネット予約にある-TableSolutionと考える飲食サービスと予約の未来

ビジネス

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2018.06.06 2022.12.27
予約ラボ編集部

予約一筋15年のリザーブリンクが運営する『予約ラボ』の編集部です。注目のサービスや、予約から始まるサービス体験、予約管理にまつわるビジネスノウハウまで、「予約」に関するあらゆる情報をお届けします!共同研究のご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

INDEX

飲食業界で多くの人々を悩ませる予約の管理。日々の予約対応やグルメサイトの在庫管理に加え、無断キャンセル対策やインバウンド増加に伴う外国人客への対応など、予約にまつわる課題は多種多様です。

これらを解決すべく誕生した”TableSolution“は、株式会社TableCheckが運営する飲食店向けの予約顧客管理システム。店舗向けの予約管理機能だけでなく、ユーザー向けのネット予約機能も開発し、店舗が効率的な予約管理を実現し利益を上げるための予約システムを提供しています。

今回はTableCheck代表取締役谷口優氏と共に、飲食店におけるネット予約を導入する利点と課題を整理。実はオーバーブッキングが当たり前(!)という海外の事例や、他領域との比較も交えつつ、予約を入り口に、ユーザー体験と店舗経営の未来を探っていきました。

無断キャンセルを防ぐことが、顧客を守ることに繋がる

予約ラボ所長 星野(以下、星野):リリース直後は飲食業界だけでなく、他業界にも予約システムを展開されていた時期があったと伺いました。なぜいまは飲食業界一本に絞られたのでしょうか?

谷口優氏(以下、谷口):飲食業界への展開を進めた後は、水平的に他の業界にも展開していこうと考えていました。しかし、飲食業界だけでも各クライアントからの要望は非常に多岐にわたります。他の業界でも同じように要望に応えようとすると、到底リソースが足りないと気付き、飲食領域に注力する方向に舵を切りました。2013年のサービス開始から4年以上が経ちますが、今もクライアント(飲食店)からの要望などをもとに、年間300回に及ぶアップデートを繰り返しています。

星野:お店によって予約システムに求める役割が異なるため、ネット予約システムの要件はとても複雑ですよね。飲食ひとつとっても、予約成立までのフローだけでなく、予約が確定したらそのあとどのようにお客さまを配席するか、というところまで考えなくてはなりません。

谷口:ネット予約と飲食店は本質的には相性が良いはずなんです。ネット経由で予約を受け付ければ、予約時に名前や電話番号、クレジットカード番号といった情報をいただくことができる。仮に無断キャンセルが起こった場合もキャンセル料を請求できるんです。「ネット予約は無断キャンセルが多そう」という印象を持つ方が多いのですが、むしろ逆。電話と違って予約時に信用情報を取得できるからこそ、無断キャンセル回避にも繋がりやすくなるんです。

星野:昨今、飲食店の無断キャンセルが話題になっているようですが、どのような点が問題で、それを解決することで利用者、店舗双方にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?

谷口:無断キャンセルが減ることで、優良な顧客が無断キャンセルによる損害を被らなくてよくなる、という点も見逃せません。例えば、無断キャンセルによってお店が5%の損害を被ってしまうと、その5%は価格に転嫁する、もしくはお店がそのまま被害を被ることになります。あまりないケースですが、もし価格に転嫁した場合、その値上げ分はレストランを利用している優良な顧客が支払うことになる。これはおかしいですよね。マナーの良いお客様が、マナーの悪いお客様の補填をしていることになります。もちろん、無断キャンセルのせいで、本来であれば来店できるはずだったお客様がお店を利用できない=予約の機会ロスも見過ごせません。だからこそ、『予約の段階』で無断キャンセルを防ぐ施策を打つことが重要なんです。

海外ではオーバーブッキングが当たり前!?

星野:日本と海外で、飲食店における予約のあり方は異なるものなのでしょうか。TableSolutionは取引先が14ヶ国あり、15ヶ国の言語に対応されていると伺っています。海外で導入する際に日本では出てこなかった要望などがあれば教えてください。

谷口:これは一例ですが、韓国やハワイのレストランで、「なぜTableSolutionは、オーバーブッキング(定員以上の予約を取ること)ができないのか」と訊かれたことがあります。特に韓国では、複数のレストランを同時に予約し当日行きたいレストランを選び、他のレストランには特に連絡を入れない、いわゆる「無断キャンセル」が当たり前になっているようで、レストラン側もあらかじめ席数以上の予約を受け付けているそうです。100席のレストランだとしたら、だいたい120席か130席くらいの予約を受けているそうです。

星野:日本ではあまりレストランのオーバーブッキングは聞かないですね。韓国やハワイの飲食業界では「予約をしても、お客様は来ないもの」くらいの意識を持っているのでしょうか?

谷口:来るかどうか分からない、とは思っているのではないでしょうか。また、顧客に対する意識と同様に、海外では経営層の従業員に対する意識も異なります。ある海外のレベニューマネージャーから「従業員に配席システムを触らせたくない」と言われたことがあります。従業員が個々の判断で配席を行うよりも、最適な配席のルールをあらかじめ設定し、それに基づいて自動配席する方が確実に利益を上げられると考えているからです。従業員よりも、システムの方が効率的だという考えのもとですね。

星野:日本では、そういった海外に比べて、来店した顧客をどのような席に案内するかは従業員一人ひとりの感覚に任せていますよね?従業員の配席能力や店舗運営スキルは信頼できる、というマネジメントカルチャーの違いがありそうですね。

谷口:ほかにも、予約時のクレジットカード決済を設けるか否か、といった点においても違いがあります。これは先ほど話した無断キャンセル防止策に繋がっていて、高級店ではすでにクレジットカード情報を取得できるネット予約でしか、予約を受け付けていないところもあります。日本の飲食業界でも今後そうした環境が当たり前になるとは思っています。

星野:海外のトレンドが国内でも一般化しつつあるという意味では、インバウンド需要の増加も影響しているのではないかと思います。私自身肌感として、ここ数年でネット予約の導入率がずいぶん上がったように感じますが、谷口さんはいかがでしょうか?

谷口:そうですね。特に寿司屋や日本料理店でのネット予約導入が進んでいると感じます。数年前に銀座のとある寿司屋へ飛び込み営業に行った時は、ネット予約という言葉自体に拒否反応を持たれていて、ほとんど相手にしてもらえませんでした。それがいまでは、外国人観光客が増えたことで、無断キャンセルや多言語対応への対策として、積極的にネット予約を導入して頂けるようになってきました。

飲食店と観光客をつなぐためにネット予約ができること

星野:インバウンドに関してもう一歩話を深めると、以前、ホテル ザ セレスティン銀座さんに取材をしたとき、ホテルコンシェルジュの役割に関する課題についてお話を伺いました。コンシェルジュの役割は、主に宿泊客の予約手配と案内、その内容は多岐にわたります。宿泊の予約管理についてはネット予約の導入で効率化が進みつつありますが、問題は旅行中のアクティビティやレストランの予約です。

たとえば「滞在期間中においしい天ぷらが食べたい」といった利用者側のあいまいなリクエストを受け、有名店舗の空席情報やキャンセルポリシーなどを勘案してお店を選定し予約を取る作業は、コンシェルジュにとって大きな難題です。ここをいかに効率化するか、というのが最近の課題だと伺いました。

谷口:特に人気店などとなれば当日に予約が取れることは稀なので、利用客の要求にいつも応えられるとは限りませんよね。いまはほとんどの情報がネットに載っていますが、老舗飲食店など、未だにネット予約が普及していないお店だと観光客が直接予約を取れませんし、日本語が話せなければ電話をかけることもできない。外国人観光客に人気のある和食店・老舗飲食店にこそ、ネット予約がより浸透してほしいと思います。

星野:いまでも、老舗店のなかには無断キャンセルのリスクを考えコンシェルジュを経由しないと外国人観光客の予約を受け付けないところもあると聞きます。ネット予約で信用情報を取得できる仕組みが導入されれば、こうしたゆがみも解消されるかもしれませんね。

谷口:ユーザーの質が可視化される仕組みづくりは今後飲食業界においても浸透してほしいと思います。いまUberやAirbnbでは、ドライバーやホストだけでなく、ユーザーやゲストの質も評価するのが当たり前です。つまり、トラブルを起こす質の悪い顧客のところにはサービスが提供されなくなり、そのぶん質の良い顧客によりよいサービスが提供される。最初の話と繋がりますが、こうしたユーザーの質が可視化される仕組みを作ることも、より予約トラブルを減らす手段となるはずです。

予約データの蓄積・活用が、店舗の収益とサービス改善の鍵に

星野:海外の飲食業界では、予約管理が収益に直結するホテル業界と同様に、レベニューマネージャーというひとつの職業があると聞いたことがあります。日本の飲食業界では、「レベニューマネジメント(需要に合せて売り方を変える販売手法)」という立ち位置で予約管理を専門的に担っている部署などはあるのでしょうか?

谷口:現状では多くありません。そもそも飲食業界が、“紙と鉛筆”での予約管理がメインで、「どんぶり勘定」や「勘と経験」で成り立ってきた業界ですから、レベニューマネジメントに必要となる予約のデータが蓄積されていないのです。顧客の平均単価やリピート率、ライフタイムバリューなどを算出すれば、投資に対してどの程度の利益が出るかがわかりますが、そもそもそれらのデータを溜めている店がほとんどない。今後そうしたデータを蓄積することで、売上向上に繋がるサービスを提供できる仕組み作りを、業界全体で考えていかなければなりません。

星野:これまでは飲食店側にデータ蓄積のノウハウがなかった、あるいは、データを蓄積させる重要性があまり認知されていなかった、ということもあるかもしれませんね。今後そうした蓄積をするために、飲食店側は何をすべきなのでしょうか。

谷口:そもそも予約管理をデジタル化していくことがデータを蓄積するための大前提ですが、その後の具体的な施策として、まずは自社ホームページやSNS等の「オウンドメディア」を充実させて「ネット予約」の窓口を必ず設けるべきだと考えています。現状ではポータルサイト経由での予約に頼っている飲食店も多いかと思いますが、オウンドメディアから予約ができるようになることで、お店が直接顧客のデータを集められるようになるんです。

星野:飲食店の今後の課題のひとつとして、「いかにオウンドメディアを充実させ、そこから予約をさせるか」というのは大きなポイントになりそうですね。魅力的な自社ホームページやSNSは利用前の顧客の期待感を高め、まさにユーザーエクスペリエンスに直結します。

谷口:調査によると、グルメサイトで気になったお店を見つけたユーザーの75%はそのお店の自社ホームページを見に行きます。オウンドメディア経由の予約で顧客情報を手に入れられれば、その顧客情報はオウンドメディアを運営する側、つまりお店の資産となり、今後の販促やレベニューマネジメントへ活用することができるのです。もちろん、お誕生日にささやかなプレゼントを贈るとか、実際の現場でサービス向上にも繋げることができます。
予約管理をデジタル化しオウンドメディアを活用することで、結果、グルメサイトへの依存度を減らしコストをカットしながら、お店のサービスをより良くする仕組みを整えることができると考えています。

※インタビューは、予約ラボが入居する「WeWork新橋」で行いました。

予約ラボ編集部

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