2019/08/30

「団体予約」の受付は、煩雑かつアナログ対応が大半。ミュージアム・工場見学における予約管理の課題と対策

あまり知られていませんが、団体予約は個人客の予約と比べると、とても煩雑です。
東京オリンピックの開催やインバウンド需要の増加に伴い、団体予約に関する課題は表面化しつつあります。団体予約といえば、宿泊予約のレベニューマネジメントにおける重要な要素であり、最近では飲食店での無断キャンセルの問題も話題です。

今回予約ラボでは、団体予約の中でも、食品メーカーや製造業などが提供するミュージアム・工場見学にフォーカスをあて、団体予約の課題と対策について考察します。

1.【背景】なぜ団体予約を受け付けるのか?サービス提供者から見た団体予約のメリット3つ

ミュージアム・工場見学はメディアで取り上げられる機会が増え、観光資源としても注目されています。
個人予約と比べて、煩雑な手続きが必要とされる団体予約を、事業者はなぜ受け付けるのでしょうか?その理由は、以下に挙げる「団体予約」の3つのメリットにあると考えられます。

1-1.一度の集客数が多く利益につながる

個人顧客を集客する労力と費用と比べて、団体予約は一度に複数人に対してサービスを提供できます。そのため、うまく対応できればより大きな利益獲得に繋がります。
※工場見学においては、見学は無料で行い、ガイド付きツアーや体験イベントは有料提供する事業者も数多くあります。その他、レストランでの飲食やお土産購入もキャッシュポイントとして用意されています。(キリンビール横浜工場の取材記事へ

1-2.効率的にステークホルダーとつながり、実体験を交えたアピールができる

ミュージアム・工場見学を通して、顧客・潜在顧客・株主・取引先・工場付近の地域住民などの利用者との接点をつくることができます。
百聞は一見にしかず。製品の”裏側”や社内を見てもらう、現場の活気を感じながら製品や会社のアピールを効率的に行うことが可能です。
※ステークホルダーを意識した運営をしているカゴメの野菜生活ファーム(取材記事へ

1-3.社会的なニーズがある

教育の一環として訪れる学校関係者、関連団体の視察、さらには訪日外国人の観光スポットとして、社会的ニーズの多様化により広がりを見せています。

※参考:ベビースターで有名なおやつカンパニー社の「おやつタウン」では、その団体予約申込書で団体を以下のように定義しています。

以上の理由から、事業者は団体予約を受け付け、管理する必要があります。事業者は団体予約にうまく対応することで、利益やファン獲得のメリットを最大化することができるはずです。
一方、団体予約はその受け入れ人数の多さや確認事項の多さから、個人予約に比べ煩雑な手続きを求められるケースが多く存在します。これは相対的に、事業者にとっても複雑な手続きです。また、管理方法はアナログですので、予約ラボでは団体予約を受け入れている事業者の業務効率は決して高い水準ではないと見ています。これらの要因から、予約ラボでは団体予約の予約受付・管理方法の実態について着目する意義があると考えています。

2.【課題】団体利用の予約受付時、何が課題になるのか?

第1章では、利用者・事業者双方の煩雑性について触れました。この章では団体利用の予約受付時において、どのような点が課題になっているのかを紹介します。

2-1.利用者の課題:参加メンバーの出欠管理と日程調整

予約ラボの調査によると、団体予約を任された幹事の実に7割が不便だと感じているのが、複数名の参加者へ出欠を確認することです。参加者への出欠確認は1回のやり取りで済まないことが多く、参加者への複数事項に渡る希望の確認や、当日キャンセルなどが特に負担となっています。
また、個人予約に関しては宿泊・旅行・移動・美容・飲食などの分野でネット予約が普及し、ミュージアム・工場見学もネット予約ができる施設が増えてきています。ところが、団体予約になるといまだに電話やFAX、エクセルファイルを添付したメールでのやりとりが求められ、利用者にとっては予約に手間がかかっています。
※2019年にネット予約を導入した石川酒造でも、定型のツアー以外の団体予約は、電話でのやりとりが必要(取材記事へ

2-2.事業者の課題:予約管理が手間

電話やWEBフォームの他、FAX・郵送・現地申込などで予約リクエストを受けた後、空き状況の確認や入手すべき必要情報の提示、団体割引の計算、当日必要な入館証の手配、入館手続きなどを行うことが多く、予約管理業務自体が煩雑かつアナログで運用されているのが現状です。

3.【ケース】団体予約の特別対応の実態について

予約ラボが60社のミュージアム・テーマパーク・工場見学事業者を調査したところ、平均16名以上を団体扱いと定めていることが分かりました。2-2の「事業者の課題」は、この16名の予約対応をするために必要な手続きがあり、その管理がアナログであるというものです。この章では3社のWEBサイトを参照し、どのような手続きで団体予約を受入ているのか見てみます。

3-1.日本科学未来館

個人は予約不要だが、団体(8名以上)は要予約&入館料割引有り。
※参考:https://www.miraikan.jst.go.jp/guide/group/

■団体予約の流れ


この内容から、一言で「予約の調整」といっても、上記申込書のような昼食の場所と日時の空きのアレンジ、料金計算、申込者への連絡などを「団体予約受付担当」が対応していることが読み取れます。

3-2.明治なるほどファクトリー

明治なるほどファクトリーでは、工場ごとに団体予約の受入れ条件が異なるようです。以下に明治なるほどファクトリー関西の予約方法を一例として挙げます。

■個人予約

■団体予約

明治なるほどファクトリー関西の場合、団体予約の申込は電話のみとなっているため、必要事項のヒアリングや説明に人的対応が発生していると予想されます。

3-3.石川酒造

石川酒造では、基本的にWEBで即時予約が可能であり、16~40名様の団体予約は基本的に電話受付のみです。

ただし、コース化されている「酒蔵の幸御膳付き見学コース」は、WEB受付→リクエスト型予約としていることが予約ラボの取材時に分かりました。
取材時のヒアリングによると、団体予約の流れは、

バスツアー会社や小学校、取引先などの団体受入・食材の準備や当日のスタッフアサインが別途必要な「酒蔵の幸御膳付き見学コース」・外国語対応ができるスタッフのアサインが別途必要な外国人旅行客の対応においては、柔軟に人を介在させつつ、WEB台帳の予約カレンダーを活用して社内共有の効率化を図っています。

4.【結果】16名以上の煩雑な団体予約は、アナログ対応に加えIT活用も。

予約ラボの当初の仮説通り、団体予約ではWEBでの即時予約はほぼ行われていないのが現状です。特に16名以上の団体は、電話・FAX・メール・WEBフォームによるリクエスト対応とアナログな受付・管理という方法が大半です。

その理由は、大人数を受け入れるケースに特有の対応があるためです。具体的には、管理・確保が必要なリソースの調整、予約者から取得すべき情報の取得、注意事項の説明等でといったものが該当します。この部分の業務整理や効率化が進んでいないことが、大人数の団体予約でWEBでの即時予約が普及していない理由であると推察します。この状態は、結果的に利用者側にも相応の負担(営業時間に電話できない、FAXを持っていない、予約変更のたびに連絡が必要etc..)を強いていると考えられます。

一方、団体予約の受付を予約システムなどのITツールを業務に合わせて活用している石川酒造の事例(3-3参照)は、この課題解決のヒントになりそうです。この取り組みは、受付工程の省略や、予約受入れ状況のリアルタイム共有による業務効率化に繋がっているそうです。

5.【提言】団体予約の課題解決へ向けた予約管理システムの活用案

まずは現行の業務プロセスおよび管理方法を採択した理由を把握します。その際に重要なのは、いきなり全ての課題に対応しようとしないことです。解消困難な点と解消可能な点を見極めて、適合するITツールを選択し、段階的に導入・検証していくことが大切です。

特に着目したいのは、予約業務の効率化に特化した予約管理システムです。予約ラボで取材をした石川酒造やカゴメ野菜生活ファームが導入していますが、今は工場見学予約での利用実績があるSaaS/ASP型の予約システムがあります。よほどのノウハウや確信がある場合は別ですが、そうでない場合はゼロから何か月もかけてシステムを構築するよりも、既存のツールを活用しつつ、運用を改善をしていく方が得策です。
団体予約の業務改善の観点に話を戻すと、以下に提案する内容が一つの落としどころではないかと考えています。

5-1.管理台帳のWEB化

まずは台帳のWEB化を推奨します。エクセルや紙台帳による管理は、情報共有の観点から非効率になっていることが多いので、廃止を目指したいところです。

5-2.ネットからの即時予約・仮予約、電話予約を併用

団体予約は予約受付時の変数が多く複雑なため、WEB即時予約ではなく一部を仮予約で運用できないか検討することを推奨します。ネット予約が一般的になってきた今、WEBからの申込窓口を設けることはユーザーの利便性向上に繋がるはずです。
ただ、受入団体の種類・条件・人数によっては難しいケースもありますので、予約受付は既存の方法(電話・FAX・WEBフォーム)を残すことも視野に入れます。
個人予約はWEBでの即時予約、団体予約は仮予約ないし電話で受け付け、WEB台帳で一元管理していくことを提案します。

 

著者:予約ラボ編集部

予約ラボでは、共同研究や予約に関する調査を行っています。

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