2019/04/05

丸井グループの戦略と4つの来店施策とは?

今回は、IR資料から見える企業の戦略とその施策についてまとめました。

取り上げたのは、9期連続増益中の丸井グループ。商業施設『マルイ』を運営する丸井グループは、アパレル販売の売り上げで収益を得る既存の百貨店のビジネスモデルからショッピングセンター(SC)化へと転換を図っています。一方で、丸井カードという若年層の顧客基盤と、リアル店舗という顧客基盤を軸としたフィンテック事業の展開にも積極的です。
本記事では、人口減少や消費者動向の変化といった背景から苦境を強いられる百貨店もある中、好調の丸井グループについて解説します。

丸井グループの収益構造

収益向上の理由

丸井グループの事業には『小売事業』と『フィンテック事業』の2つがあり、それぞれが増収となったことが収益向上につながっています。特にショッピングクレジットの取り扱いが続伸中のフィンテック部門が好調です。

販売不審が続いた小売事業は、ショッピングセンター(SC)化・定借化により収益悪化を防ぎ、フィンテック事業はエポスカードの基盤を拡大することで収益が向上しました。

ショッピングセンター(SC)・定借化

丸井グループでは、2014年から大規模なモデルチェンジを行いました。マルイのビジネスモデルは、商品を仕入れ売れたら収益計上となる『百貨店型』でしたが、売上によって収益が変動するというデメリットあり、これを解消するためにテナントに販売場所を提供し賃貸料を得るSC型へとシフト。
継続的に不動産賃貸料の安定した収益が見込めるようになりました。

エポスカードの基盤拡大

フィンテック事業の収益を支えているのは、エポスカードの割賦・リボ払い手数料、加盟店手数料です。丸井グループは店舗に集客して新規カード会員を増やし、ECサイトの強化などでエポスカードの利用機会を増やしています。

エポスカードの基盤が拡大したことで、2019年3月期のショッピング取扱高は、前年比117%増の1兆8700億円を見込んでいるとのこと。

出典:『丸井グループの 成長戦略・資本政策

小売の3.4倍稼ぐフィンテック事業とは?

表:丸井グループのセグメント利益

丸井グループのセグメント利益を見ると、収益を牽引しているのはフィンテック事業であることが分かります。

丸井グループは元々カード事業が収益の中枢でした。カード事業だけでなくフィンテック事業に展開することで、毎年30億~40億円の増益を達成し、丸井グループの好調を支えています。2018年は、小売が88億円に対してフィンテックが303億円と、フィンテックは小売の3.4倍の利益に。

構成比は小売の22%に対してフィンテックは78%となり、フィンテックが丸井グループの収益を支えていることが伺えます。

引用:丸井グループ『2018年3月期 決算説明と今後の展望

フィンテック事業での新しい試み「tsumiki証券」

フィンテック事業が丸井グループの収益の中核と紹介しましたが、このフィンテック事業の新しい試みが今、注目されているようです。
2018年2月に設立された、投資経験の少ない20代~30代の女性をターゲットにした証券会社『tsumiki』です。有楽町マルイにオープンスペースの相談窓口を設置して、土日祝日でも資産づくりの相談が気軽にできるようになっています。

またtsumiki証券は、エポスカードを利用した日本発のクレジット払いや、エポスポイントを貯めることができるなど、新しい投資信託として注目を集めました。エポスカード会員の7割が20代~30代の女性であることから、エポスカード払いの投資を促して、tsumiki証券への流入を図っています。

引用:丸井グループ「2018年3月期 決算説明と今後の展望

ビジネスモデルの転換

モノ消費からコト消費へ意識改革

少子高齢化、ネット販売の浸透などを背景に、1つの世帯当たりの消費が年々下がっていることや、モノ消費だけではなく、性別、世代など様々な視点からサービス、商品を提供し、人々の消費活動を促すことが重要になっていくと考えられています。。そこで丸井グループでは、『モノ』ではなく『コト』を売る方針へ転換しました。

図:未来の店づくりのイメージ例(店舗ならではの体験を提供)

引用:丸井グループ「共創経営レポート 2018

例としてあげると、それまであったアパレル販売の売場面積を縮小して、飲食や体験ができるサービススペースを広げて体験消費型テナントを増やし、他社との差別化と企業価値を高める戦略です。

図:SC・定借化による売場面積の変化

2014年には売場面積の半分以上を占めていたアパレル売場を縮小し、モノ(雑貨)やコト(飲食・サービス)スペースを増やして、買上客数、取扱高が伸びました。

引用:丸井グループ『2018年3月期 決算説明と今後の展望

来店を促す4つの施策

丸井グループの戦略で、モノ消費からコト消費へ転換を進めていく方針を紹介しましたが、では実際に、顧客にどのような体験を提供していくのか?に注目していきたいと思います。
この段落では、コト消費への意識改革における中でどのような体験を顧客に提供しているのか、来店施策として4つご紹介します。

1.レンタルショップDORENiの試着専用店舗

インターネットを介して、企業や個人が持っているモノを共有できるシェアリングエコノミーは、数年前から日本でも市場を拡大し、マルイでもコト消費の施策としてドレスやジュエリー、時計といったファッションシェアリングを進めています。

画像:丸井グループ『シェアリングエコノミー(モノ)』

丸井グループが運営するドレスレンタルショップDRENi(ドレニ)は、ECサイトを中心にしたレンタルショップですが、有楽町マルイにだけ店舗があります。

DRENi店舗では、レンタル商品の一部を展示しているので試着ができ、ヘアメイクやマナー相談イベントも開催しています。

試着やイベントの申し込みは、ホームページから店舗側のリソース(接客スタッフ、試着室)に合わせて予約ができます。予約優先となりますが、予約せずに直接来店の顧客にも対応しています。

DRENiの予約

画像:有楽町マルイ『DRENi』試着予約への誘導画面

画像:有楽町マルイ『DRENi』予約カレンダー画面

引用:ドレスレンタルDRENiホームページ

2.AppleStoreなどの体験型店舗

画像:丸井グループ『シェアリングエコノミー(コト)』

2018年4月に、新宿マルイ本館の1階にApple新宿がオープンしました。総ガラス張りの店舗の中央には6Kの大型ディスプレイがあり、毎日無料体験プログラムが開催されています。iPhone、AppleWatchなどのデモ機や、イヤフォンなどのApple製品を自由に手に取り、体験できます。

引用:丸井グループ『2019年3月期第二四半期 決算説明と今後の展望

3.靴を売らない「ラクチンきれいシューズ Fit Studio」

プライベートブランドの「らくちんきれいシューズ」を展開する丸井は、有楽町マルイなど関東6店舗に、無料で足の計測、靴選び、試着、靴の調整ができる体験ストアがあります。

販売用の靴はなく、履き心地を体験してもらい、購買につなげることを目的としています。サイズ展開も19.5~27㎝と幅広く、気に入れば店頭のタブレットや自身のスマホで購入できるので、手ぶらで帰ることができるのも好評です。

Fit Studioの予約

靴の販売経験と知識が高いシューズコンシェルジュが対応するので、予約が優先されます。マルイのオンラインショッピングからWeb予約ができ、店舗や接客スタッフ、メニュー(計測のみ、計測+カウンセリング、調整/修理)を選ぶと、条件にあった空席情報が表示されます。

接客スタッフは指名せずに予約することもできますが、スタッフ一覧でスタッフの写真と年齢層、メッセージが公開されているので、初めて利用する方も選びやすいかもしれません。

4.金融をもっと身近に。tsumiki証券のイベント

エポスカードを利用したクレジット払い、エポスポイントを貯めることができるなど、新しい投資信託の形をエポスカード会員に多い、女性に対してもっと身近にしたtsumiki証券。
こちらのtsumiki証券の来店施策をご紹介します。

tsumiki証券の予約

tsumiki証券では、若い方、資産運用未経験者などが金融系サービスを身近に楽しめるように、マルイの店舗で予約制イベントを開催しています。
予約の手順は、tsumiki証券公式ホームページに、開催予定の予約制イベント・セミナー情報が掲載されており、カレンダーでイベントの希望日時を選択して予約することが可能。
『〇・△・▢」で残席も表示されます。名前・性別・年代・メールアドレス・参加人数(グループでの参加も可)を登録し予約できます。

tsumikiの期間限定ポップアップストアでは、金融系サービスに興味があるものの、資産づくりにおける悩みを抱えた初心者の方に、安心して利用への第一歩を踏み出せるようなイベントを意識されているようです。またイベントによっては、tsumiki証券のサービスを体験できるほか、来場者の悩みや相談に対応するサポートも受けられます。資産づくりを身近に感じられるように開発されたプロダクト「オマモリ」のマルイ店舗限定カラーを販売するなど、グッズの提供もされています。

また資産運用について詳しいファイナンシャルプランナーなどを招いて、楽しく資産運用の仕組み、内容などを紹介できるようなトークイベントも実施。またイベントによっては利用者同士の懇親会なども用意されており、様々な体験を用意している様子。
一部の例ではありますが、このようにフィンテック事業でも、このように丸井グループの店舗を活かして顧客との接点を強化しています。

まとめ

丸井グループの事業には小売とフィンテックがあり、元々好調なフィンテック事業に加えて、ビジネスモデルの転換で小売り事業の業績も復活してきました。

実際に吉祥寺マルイ店に足を運んでみましたが、以前よりもアパレル売り場は減り、雑貨や期間限定のお店が増えていました。

マルイの主力商品「ラクチンきれいシューズ」はきれいに並べられ、「ご自由にご試着ください」と1コーナーが設けられていましたが、鏡まで遠く、目立つ場所だったので試しにくい雰囲気がありました。コトの種類やスペースは広げているので、体験しやすい雰囲気がもっとあると、「店舗・カード・WEB」を廻る顧客が増えるかもしれません。

ネットとリアルで顧客との接点を強化している丸井グループ。今後もコト消費やイベントなどの来店施策を、予約ラボとしても注目していきます。

著者:予約ラボ編集部

予約ラボでは、共同研究や予約に関する調査を行っています。

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