予約後の入退室を自動化するスマートロックの動向

民泊やレンタルスペース、コインロッカーなど、スペースを予約して利用する際に気になるのは鍵の受け渡しや管理、セキュリティの問題です。サービス提供者側にはできるだけ低いコストで高いセキュリティを実現したいというニーズがあり、ユーザー側には鍵の管理を容易にしたい、スムーズに入退室を行いたいというニーズがあります。

そこで、今回は予約後の入退室を自動化する手段としての「スマートロック」に注目し、スマートロックの動向についてお伝えします。

1.スマートロックの現状

1-1 スマートロックとは何か

スマートロックとは、鍵がインターネットに接続され、スマートフォン等の電子機器を用いて解錠・施錠をするシステムを指します。スマートロックのメリットは、鍵を開けられる回数や時間の制限をコントロールできることです。これにより、第三者に鍵を何らかの方法で入手されても不正利用されにくく、高度なセキュリティで防犯・悪用の予防を実現できる点が大きなポイントです。また、鍵を取り替える場合には大掛かりな工事が必要になるケースが多く、工事コストもかかることが多いものです。その点、スマートロックは専用のデバイスをドアに貼り付けるだけのものや、簡易的な工事で取り付けられるものも。さらに日本のスマートロック製品は概ね5万円以内で入手できるものがほとんど。スマートロックのメリット考えると、価格帯も普及の後押しをする可能性があります。さらに、ドアの工事コストのかかるものが多いですが、日本のスマートロック製品は概ね5万円以内で入手できるようです。

1-2 スマートロックの種類

スマートロックで鍵を開ける手段として一般的なものは、スマートフォンです。スマートフォンでQRコードを読み込んだり、専用のアプリをダウンロードしてから、アプリによって解錠・施錠を行います。日本のスマートロック商品「Akerun」や「ライナフ」はこの仕組みを採用しています。スマートフォンを鍵として使うメリットは、普及しているため新たなデバイスを購入しなくてよい点です。デメリットは、スマートフォンの電源が入っていたり通信環境がよくなかったりと、スマートフォンで通信ができない環境では解錠・施錠ができないことです。

スマートフォン以外では、「ICカード」を使用する方法や登録した指紋による「指紋認証」、所定のパスワードナンバーを入力する「番号入力」といった手段があります。まだそれほど普及してはいないようですが、新宿駅や東京駅と行った大きなターミナル駅には、「ICカード」をかざして解錠・施錠を行う仕組みのICカード対応コインロッカーがあります。

ICカードを鍵として使うメリットは、駅を利用する人には広く普及していることが挙げられます。指紋認証のメリットはデバイスが不要で、事前登録さえすれば利用可能なことです。デメリットは、手荒れやケガなど手の皮膚表面に起こる影響を受けやすいことです。

1-3 スマートロックの普及状況、どんな業界で使われているのか

アメリカでは2013年からクイックセット社の「Kevo」やオーガスト社の「August Smart Lock」といった商品が登場し、様々なスマートロックの商品が登場しました。日本でも2015年にフォトシンス社の「Akerun」、ライナフ社の「NinjaLock」、Qrio社の「Qrio Smart Lock」といった商品が相次いで発売。このことから、2015年を日本の「スマートロック元年」と呼ぶメディアもあります。

2015年に日本で相次いでスマートロック製品が相次いだ理由は2つあると考えられます。
1つは、スマートロック製品とそれを操作するスマートフォンなどのデバイスとを通信させるBluetoothの規格の中でも、低電力で通信が可能な「Bluetooth4.0」が2013年頃からスマートフォンに搭載されるようになり、スマートフォンがスマートロックの鍵としてのデバイスとして使いやすくなってきたことです。
もう1つは、アメリカでは2012年頃からスマートロック製品が出てきたのですが、その情報を追っていたスタートアップ経営者や技術者が、米国製のスマートロックの多くは埋め込み式で日本の住環境に適さないこと、鍵の規格がアメリカと日本では違うので、取り付け式のものも日本では使えないことに気づき、ならば日本製のスマートロックを作ろうという機運が高まったことが挙げられます。

2019年現在、日本ではコインロッカー、フィットネススタジオ、民泊といったサービスでスマートロックを目にすることができます。どれも一定の時間(期間)にスペースを借りるもしくは利用する際に、手軽かつ高度なセキュリティで物の預け入れや入退室を可能とする手段としてスマートロックが使われているようです。

2019年から三菱地所ハウスネット・三井不動産レジデンシャルリリースが「NinjaLock」の不動産管理者向け商品「NinjaLock M」を管理物件に導入し、不動産業者の立会いがなくても内見ができるサービスを開始するという動きがあります。このサービスでは、顧客はサービスサイトにアクセスし、内覧予約カレンダーを見た上で希望する部屋の内覧を予約したのちに、スマートロックのシステムによって発行された鍵情報を使って物件に入れる仕組みです。

これにより、事業者は内覧の受付や立会いに必要な人件費を大幅に削減することがきますし、ユーザー側は事業者と予定をすり合わせる必要がなく、自分の都合で安全に内覧をすることができます。前述したことを踏まえると今後、人件費の削減や管理物件に対する高いセキュリティを求めている業界は、不動産業界だけではないため、、スマートロックが使われる業界やシチュエーションは、これからも様々な業界に浸透し、増えていくのではないでしょうか。

2.スマートロックを導入する際の検討材料となる利点は?

2-1 スマートロックが解決している課題

スマートロックを利用するメリットは、サービス提供者のメリットとユーザーのメリットに大別されます。まずは、サービス提供者側のメリットをご紹介します。サービス提供者側のメリットは、以下の点が挙げられます。

  • 対面での受け渡しが不要になるため、人件費が削減できる
  • 無人での管理も可能になる
  • オペレーションの短縮化
  • 使用者による不正利用の予防
  • 対面の受け渡しが不要のため言語の問題がクリアになり、インバウンド対応が可能になる

そして、ユーザー側のメリットは以下の通りです。

  • 対面での受け渡しが不要のため、コミュニケーション(言語)の心配がない
  • 民泊業者やホスト側と対面での受け渡しをしなくて済むので、お互いの時間をすり合わせ るわずらわしさがない
  • 鍵を紛失の心配がない

2-2   スマートロックの導入例

ここでは、スマートロックの導入例をいくつかご紹介します。

まずは、近年インバウンドの増加にともない注目されている民泊サービス。その大手Airbnbでは、公式パートナーとして構造計画研究所の「RemoteLock」を採用しています(それ以外のスマートロック 、それ以外の鍵の受け渡し方法でも可能)。「RemoteLock」を導入しているAirbnbの施設では、予約が成立した際に暗証番号を自動発行し、ゲストのメールアドレスに通知します。ゲストは当日に施設に入室する際に暗証番号を入力すれば、入退室が可能になります。暗証番号は毎回異なり、ゲストの宿泊期間にのみ有効になり、利用期間終了後に無効化されます。

近年民泊が官民を挙げて推進されるようになっている理由の一つに、インバウンドの急激な増加にホテルや旅館業界の対応が追いつかず、人件費やコストの少ない民泊に注目したという背景があります。さらに、民泊トラブルの代表的なものとして、鍵の受け渡しにまつわるトラブルが報告されています。そのため、民泊業界がスマートロックに注目するのは自然なことといえます。

2-3 体験談

スマートロックの利便性をどのようなシーンで感じるのか、を予約ラボ研究員の体験談を交えてご紹介します。

年に数回出張する際、東京駅や大阪駅などの大きなターミナル駅にはICカード対応のコインロッカーがあるため、よく利用しています。

ICカード対応のコインロッカーの利用方法は、まず空いているロッカーに荷物を入れ、レバーを下げてロックをかけます。次に、ロッカーの中央にある液晶パネルで、荷物を入れたロッカーを選択します。そのあとに、支払方法を選択する画面に切り替わりますので、ICカードを選択します。解錠する際には、液晶パネルの隣にあるICカードリーダーにICカードをタッチすると、料金の支払と解錠ができるという仕組みです。ICカード対応のコインロッカーのメリットは、2つあります。1つは、鍵を持ち歩かなくて済むので、紛失するリスクがないということです。鍵式のコインロッカーを使っている際には、移動に何度か鍵を無くしていないか確認するということがあるので、このリスクがないのはとても嬉しいことです。もう1つは、ICカードで決済するので、小銭を出す手間が省けてスピーディーに決済ができるという点です。

また別の研究員の利用シーンをご紹介します。ある研究員が登録している24時間利用可能のスポーツジムにおけるスマートロックの利用シーンです。

このスポーツジムは、登録している会員であれば誰でも24時間ジムを利用できるのですが、20時以降は利用者や運営スタッフの人数が少なくなるため、スマートキー(小さいプラスチック状のカードキー)をスポーツジムの入り口の所定の位置にかざしてドアを開けるというシステムになっています。スポーツジムの会員登録の際に顔写真を撮るのですが、それぞれのスマートロックのキーに顔写真や会員の情報が紐づいており、スマートキーを別の人が使用することができないようになっていると思われます。会員以外の他者による利用を防止していると考えられるので、セキュリティ面での安全性も感じられたようです。

3. まとめ

今回は、予約とスマートロックの組み合わせという視点でスマートロックを紹介しました。スマートロックと予約を組み合わせると、入退室の際に人を介さなくてよい、つまり予約後のオペレーションの一部を自動化できます。これは、サービス提供者にもユーザーにも大きなメリットがありますので、双方が予約をより便利に感じられるのではないでしょうか。

スマートロックは人件費削減や無人管理を可能にするので、労働人口が減少しつつある日本では、活用される分野はこれからますます増えていくものと思われます。

例えば、再配達による社会的損失が問題になっている宅配サービスでは、再配達の問題を解決するために宅配ボックスの必要性が話題になっています。その声に答えて、スマートフォンアプリで解錠ができる「あずかりくんスマートロック」、さらにはスマートロック完備のIoT賃貸マンションが登場しています。そして、冒頭付近でも述べたライナフ社では、これまで不在時に利用するのが難しかった生鮮食品の宅配、家事代行、宅配クリーニングや買い物代行などを提供する会社と連携し、サービスの実現を目指しています。

スマートロックがサービスと繋がる動きは世界でも進んでおり、米アマゾン・ドット・コムでは2017年11月から不在時に宅内に商品を届ける「Amazon Key」を有料会員向けにすでに提供しています。

今後国内においても、訪問介護サービスや買い物難民向けの買い物代行サービスなどへのサービス拡充する可能性が高いのではないでしょうか。

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予約ラボ編集部

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