東京ディズニーランドの行列問題解消法 公式アプリで提供している各サービスのねらい

たびたび話題に上る混雑・行列問題

大型テーマパークを運営する上で避けて通れない課題が「行列問題」です。特に東京ディズニーランド(以下、TDL)は、たびたび行列について言及されます。2018年11月にはミッキーマウスと会えるアトラクション「ミッキーの家とミート・ミッキー」が最大11時間待ちの大行列となり、大手メディアに掲載されたほど。

TDLは顧客体験を大切にする姿勢も度々取り上げられることから、行列問題に対する取り組みにより一層注力しているのではないかと推測されます。

【参考URL】
ディズニーランド「11時間待ち」 ミッキー90歳祝う
https://www.asahi.com/articles/ASLCL766RLCLUTIL01K.html
パーク運営の基本理念
http://www.olc.co.jp/ja/tdr/profile/tdl/philosophy.html

1. 東京ディズニーランドの混雑状況

混雑情報に対する関心の高さ

TDLの混雑状況に関する問題点として、行列が慢性化していることが挙げられます。インターネットで検索すると非公式の混雑・行列予想サイトが多数確認できることから、これは関心の高い事象だと推測できます。また、twitterでは「#TDL_now」や「#TDR_now」のハッシュタグで混雑情報がしばしば共有されています。2019年のゴールデンウィーク初日にはこれらのハッシュタグをつけたツイートがyahooリアルタイムランキングで上位にランクインし、注目度の高さがうかがえました。

さらに、TDLには混雑しやすい時期があると考えられます。それは以下のシーズンです。

  • 夏休みや春休みなどの長期休暇
  • ハロウィン・クリスマス・イースターといった人気のシーズンイベントの時期
  • 新アトラクションやパレードの導入時

これらの時期は全国ネットの情報番組でTDLが取り上げられるということもあり、さらに混雑する一因となっているのではないでしょうか。

【参考URL】
2019/4/27(GW初日)に「#TDL_now」「#TDR_now」のハッシュタグをつけてツイートされ、なおかつ話題になったツイートのモーメント
https://twitter.com/i/events/1121994180383797248

認知度の高い混雑回避施策「ファストパス」のIT化がもたらすものとは

TDLが顧客体験を高めるために行なっている混雑回避施策はいくつかありますが、今回は「ファストパスのIT化」を取り上げて考察します。なぜこの施策に注目したのかというと、ディズニーランドの本拠地アメリカはもちろんのこと、世界中で事前決済や予約のIT化が進んでいることが挙げられます。さらに、私たち予約ラボはIT化で混雑回避はもちろん、事業者にもプラスをもたらす可能性があると考えているからです。

TDLで混雑を回避する方法の一つとして知られている「ファストパス」は、2000年7月に初めて導入され、2019年6月時点ではTDL内の8つのアトラクションに導入されています。

東京ディズニーランド公式サイト

TDLに来場したゲストは、アトラクションの入口付近のタイムボードで待ち時間とファストパスの利用時間をチェックした後、ファストパス発券所で発券機にパークチケットの2次元バーコードをかざし、ファストパスを発券します。利用時間になったらアトラクションの「ファストパス・エントランス」から入場することによって、通常の待ち時間よりも早くアトラクションを楽しめるという仕組みです。

ファストパスはTDL内すべてのアトラクションに導入されているわけではありませんが、導入されているアトラクションに関してはこのような仕組みで行列が緩和されており、多くのゲストに認知されています。

次に、オリエンタルランドが今後、IT化を視野に入れた上でどのような混雑回避対策の方針を取ろうとしているかをご紹介いたします。

2. オリエンタルランドの行列緩和への取り組み

オリエンタルランドの中期経営計画から読み取る混雑緩和対策

オリエンタルランドを含むオリエンタルグループの「2020年中期経営計画」では「”快適さ”を提供するハードの強化」として、2017〜2020年に以下を計画するとしています。

東京ディズニーシーに新エリア「ソリアン(仮称)」を導入し、アトラクション体験人数の純増およびパーク内のゲストの滞留バランスの改善による混雑感の緩和を目指してまいります。

既存レストランのリニューアルなどにより座席数の増加や食事の待ち時間を減らす取り組み、サービス施設のリニューアル・増設、モバイルを活用してショッピングやパーク内外でさまざまなサービスが利用できるアプリの開発など、ゲストの利便性の向上につながる仕組みづくりを検討してまいります。
(「2020年中期経営計画」2.「2020中期経営計画」②“快適さ”を提供するハードの強化 より)

このうち「モバイルを活用」の点に関して、2018年7月に「東京ディズニーリゾート・アプリ」がリリースされました。そして、開発者によると2019年夏からこのアプリでファストパスが取得可能になる予定だそうです。アプリでファストパスが取得できるようになれば、ユーザーはより効率的にTDL内を巡れるのではないでしょうか。

アプリリリースの背景は?

TDLがこのアプリをリリースしたことには以下の3つの背景があると推測できます。

  • すでに多くの人が慣れ親しんでいるスマホアプリを通して顧客体験を強化することにより、集客率を高める
  • アメリカのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート(以下WDW)が大規模なIT投資を行い顧客体験に注力していることの模倣(WDWでは、手に巻きつける「マジックバンド」を通してチケット・ファストパス・レストランの決済等が可能になっており、ゲストがより楽しく濃密な時間を過ごすための重要な役割を担っています)
  • 日本国内におけるテーマパークの覇権争い(TDLを含む東京ディズニリゾートは、ここ数年ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、以下USJに入場者数・満足度共に一位を奪われています。USJは2012年に公式アプリをリリースしているため、TDLもアプリをリリースして巻き返しを図りたいという狙いもあると考えられます)

現在WDWでは、パーク内での食事のモバイルオーダーが可能です。今までTDLを含む東京ディズニーリゾートは「非日常の世界観」を重視していたということもあり、積極的なIT投資をしていませんでした。しかし、上記3つの背景から考察すると、顧客満足度を意識して行く上で、TDLはさらにIT化を進めていくのではないかと考えられます。さらに、今後IT化が進むにつれ、WDWですでに導入されている食事のモバイルオーダーがTDLを含む東京ディズニーリゾート内でもできるようになるのではないか、という予測もできます。

【参考URL】
オリエンタルグループ「2020中期経営計画」について
http://www.olc.co.jp/ja/news/news_olc/20170427_22.html
ディズニー、スマホでファストパス発行へ 並ぶ必要なし
https://www.asahi.com/articles/ASM3H5T1WM3HULFA04M.html
【東京ディズニーリゾート】、混雑解消にアメリカの外食チェーンがやっているアレを導入?
https://blogos.com/article/325225/
10年ぶりに行ったアメリカのディズニーワールドは、驚くほどIT化されていた
https://www.lifehacker.jp/2015/01/15011010wdwit.html
「トリップアドバイザーの口コミで選ぶ 世界の人気テーマパーク 2018」を発表 ~日本では『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』が2 連覇 世界1位はアメリカの『アイランズ・オブ・アドベンチャー』!~
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2018/07/180726_TripadvisorPressRelease.pdf
USJ来場者数3年連続最高 16年度、TDRは微減
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ03IGJ_T00C17A4000000/
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(R)がスマートフォン向けに公式ガイドアプリを提供
~GPSを利用して各アトラクションやショーまでの距離や待ち時間情報を提供~
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/release/2012/10/121003-a

3. 東京ディズニーリゾート・アプリが提供するサービスと行列緩和策

東京ディズニー・アプリ開発者インタビューによると、東京ディズニーリゾート・アプリをリリースした目的として以下の2つを紹介しています。

1つ目は情報の集約化とシームレス化です。今までは待ち時間・レストランの事前受付・ショーの抽選などの情報を別々に提供していましたが、アプリで一元化したことによってユーザーがスムーズに情報を取得できるようになりました。
2つ目はインフォメーションの格差を解消することです。TDLを初めて訪れた人にも必要な情報を直感的な操作で簡単に取得できるよう配慮したとのこと。

その他、TDLがこのアプリを通じてユーザーに提供している行列緩和に関する取り組みは以下の通りです。

  • 事前にチケット購入・レストランの事前受付ができる
  • アトラクションの待ち時間を確認できる
  • ショーの抽選に応募できる(ショーによっては抽選会場に赴いてチケットにあるQRコードを使用し、抽選を行う必要がありました。混雑時にはその抽選を行うために行列が起きることも)
  • お土産を事前にチェックでき、販売店や店舗在庫を確認できる
  • お土産はアプリで購入、発送できる
【参考URL】
「東京ディズニーリゾート・アプリ」開発者インタビュー。2019年中にファストパスを導入予定
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1137888.html
”お土産問題”を解決 開発者に聞いた「ディズニー公式アプリ」のもっと便利な使い方
https://www.oricon.co.jp/news/2117187/full/

4.他事業者の行列問題への取り組みのためのヒント

アプリを活用した行列解消施策のポイント

東京ディズニーランドのアプリを活用した行列問題への取り組みから、他事業者のヒントとなりうるポイントは以下の通りです。

まず、チケット購入・レストランの予約・ファストパスやショーの抽選など、予約することによって行列を解消する取り組みはもちろんのこと、お土産の店舗在庫や待ち時間の目安を表示するといった点に注目です。店舗(リアル)の情報をWEB(アプリ)で伝えることは、ユーザー・事業者側双方にメリットがあります。

ユーザー側のメリットとしては、当日の電車内、TDL内での休憩中などの隙間時間にお土産をチェックすることができるので、ショップの混雑を避けられる上に効率よく時間を使える、広い園内を移動しなくて済むので時間を節約できる、欲しいアイテムを買うためにショップに行ったのになかったという体験をしなくて済む、といったものが当てはまります。
事業者側のメリットとしては、在庫情報や在庫管理がシームレス化されているので業務の効率化、工数削減、などが考えられます。例えば、ゲストからの対面による在庫照会対応の時間が削減されるので、その分他の部分で、質のよいサービスを提供することに注力できるかもしれません。

さらに、現在このアプリでお土産の予約をして店舗で受け取るということはできませんが、今後は「思い出の品として当日お土産を持ち帰りたけど、混雑したお店には行きたくない」というニーズに答えて、店舗受け取りが可能になるということも想定されます。

そして、TDL内のレストランや飲食物販売スポットに関して今後起こりうる施策として、前述したモバイルオーダーによるテイクアウト予約が考えられます。現在モバイルオーダーによるテイクアウト予約が国内のファストフードチェーンを中心に広まりつつあります。また、TDLの競合テーマパークであるUSJでは、すでにドリンクやスナックといった軽食はもちろんのこと、ピザやハンバーガーなどボリュームのある食事もテイクアウトできるようになっています。

これらのことから、テーマパーク内での飲食物のテイクアウトは顧客に受け入れられやすいのではないかと推測でき、近いうちにTDLでも導入されるのではないかと考えられます。このように、アトラクション以外の部分においても行列を解消することにより、顧客の満足度を高められる可能性がありそうです。

【参考URL】
スマホで事前注文・決済 ファストフード各社続々導入
https://www.sankei.com/economy/news/181109/ecn1811090015-n1.html
USJでテイクアウトできるもの一覧
https://tabelog.com/osaka/P000810/premiseLst/cond10-04-00/

5.まとめ

行列問題に対して、施策を検討すると顧客だけではなく従業員にも大きな負荷を与えてしまうということに気づくかと思います。IT化のメリットとして、顧客だけではなく、従業員を含む業務の効率化につながることも考えられます。TDLのように混雑・行列問題と業務側の効率化、ユーザー満足度を高めるための方法としてIT化を検討してはいかがでしょうか。

 

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