来訪までの「ワクワク感」をいかに持続させるかー予約~来訪までのタイムラグの解決策とは?ー
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今回プログラミングマンツーマン指導(※)をメインとしたサービスでマーケティングを担当され、現在では、フリーランスのマーケターとして活躍されている山下薫平様にお話を伺いました。
無料体験レッスンについてマーケティングの視点から予約の改善をされ、予約をどう増やしていくか、いろいろな施策を取り入れられています。
- ※プログラミングマンツーマン指導とは
- ■オンラインでのプログラミングレッスンサービスの提供
単価は16万~70万(1・3・6ヶ月のコースがあり選択化)
顧客の利用の流れとしては、オウンドメディア/広告→LP→無料体験レッスン予約(CV)→無料体験レッスン→成約→サービス受講である。
Webサービス制作や、モバイルアプリの制作など、受講者のやりたい目標に対してカリキュラムを策定できることが競合と比較した際の強み。
マーケティング手法としては、オウンドメディアでのコンテンツマーケティング・広告を活用したLPへの集客がメイン。
無料体験レッスン予約の日時選択の際に、テキストでの希望日時を連絡するのではなくカレンダーで日付・時間を選択する方式を採用している。
目次
予約の課題を解決するために、“点”だけを見ていては限界がある
星野これまで、どんな業種・業界の広告運用をされてらっしゃったんですか?
山下様大手の通信教育クライアントの専属チームで運用をしていました。CV地点がWeb申し込み(契約)だったので、Web上だけで購買行動を完了させる必要があり、しかも代理店側では広告のチューニングしか主に行っていなかったので、マーケティングをしているという感覚はなかったですね。
星野広告のチューニングがメインということは、全体で捉えるよりも“点”を修正している感覚でしょうか?
山下様そうですね。「LPへの入り口部分をどうチューニングするか」が主な業務でした。
星野では全体を俯瞰している立場の方とは、コミュニケーションはありましたか?
山下様クライアントの担当の方が、それに近かったと思います。とはいえ、やはり先方も様々なマーケティングチャネルがある中のWeb担当という立場だったので、どこまで意思決定力があったかは微妙なところでした。
予約を増やすだけでなく、予約後のワクワク感を維持させたい
星野Web上だけで購買行動を完了させるのと、WEBコミュニケーションから「体験レッスン」、「カウンセリング」など購買の手前のリアルコミュニケーションが発生するのとでは、何か仮説検証に違いはありますか?
山下様購買までのステップが増える分、ユーザーのモチベーションを保つために、マーケティング側でもただ「予約を集める」・「CVを増やす」以上にナーチャリングなどで質を高める必要を感じています。予約~カウンセリングまでの期間を、どうしたら「ワクワクした状態」で維持してもらえるかなど、CVの先まで意識したマーケティング活動の必要性を感じています。
星野実際に「直前キャンセル」や「ノーショー(無断キャンセル)」は、どのくらいの割合で発生しますか?また、その原因はモチベーション(ワクワク)の低下が要因として強いと考えてらっしゃるのでしょうか?
山下様来訪率は80%ぐらいです。キャンセル理由は、お仕事の都合や体調不良が多いですね。やむを得ずキャンセルされる方の日程を再度取り付けるために、営業サイドではフォローを丁寧にするアクションを行っています。またマーケティング側でも、一度キャンセルになって、再予約をいただけなかった方向けにメールでのキャンペーンを展開するといった試みも始めました。
※来訪率=予約後に実際に来られる方
星野予約からカウンセリングまでは、どのくらいの期間が空くのでしょうか?
山下様大抵の方は2、3日前に予約されます。長い方だと1週間前ですね。
星野ということはサービスによっては、Webだけを見ていては改善は難しそうですね。
山下様そうですね。実際に体験レッスンを受けにいらっしゃるお客様のリアクション、予約したけど来訪されなかった方の原因なども現場にヒアリングして、より魅力を伝えるPRとしてサイトやLPの改善、コンテンツの企画を活かすことが重要だと考えています。
顧客のモチベーション維持のため、コンテンツ設計を見直す
星野来訪率80%は、かなり高い率だと思います。某人材サービスの求職者向け無料カウンセリングでは、登録~予約~来訪までに7割が離脱してしまう状況もあるようです。
サービス形態やビジネスフェーズにもよると思いますが、無料体験の予約は、ユーザーが自主的にスケジュールを押さえます。その後に訪問して相談するというアクションも明確です。これは、単に会員登録やメルマガ登録というよりも、(入会する気のある)Hotな方を“予約カレンダー”がスクリーニングしているという役割もあるのかもしれませんね。
山下様おっしゃる通り、カレンダーという予約ツールだから、来訪率が高いのかもしれません。例えば同じように日程を予約するサービス、それこそ求職者向けのカウンセリングなどでは、担当者とメールで予約の候補日を決めることが多いと思います。先方の連絡を待って、予約が確定するという流れだと思いますが、ここでのタイムラグが、モチベーションを下げる要因にもなり得ると感じています。
カレンダーであれば第1候補日に空きがない場合、次の候補日をすぐ確認したり、希望時間前後で調整したりというのも、視覚的にカスタマー側が把握しやすいですよね。もちろん候補日時に空きがない場合、その段階で離脱してしまう恐れが高いのですが、その離脱ユーザーへのコミュニケーションも、マーケティング施策で設計して拾い上げることができると思います。カレンダーツール以外でも、弊社の場合は予約~来訪までのコミュニケーションを行っていることも大きな要因です。
先程もお話ししたように、来訪までの「ワクワク感」をいかに持続させるかという施策をいくつか打っています。当日相談したいことを、事前にヒアリングシートとしてアンケート記載していただいたり、日時のリマインドも兼ねて前日に電話連絡しています。このような施策で、当日の時間も有意義に使うことができ、的確なアドバイスを行えるように取り組んでいます。
インストラクターや教材の紹介だけではなく、顧客の目標を明確にし、最善の学習プラン設計が必要
星野「無料体験レッスン」や「カウンセリング」をあえて挟んでいるのは、どんな特性によるものなのでしょうか?
山下様弊社では申し込み前のカウンセリング自体も、サービスであると捉えているんです。ただインストラクターを紹介して学習してもらうだけのサービスではなく、お客様がどのように人生を変えたいのか目標を一緒に設計して、それに合わせた学習プランをご提供するのがミッションだと考えています。学習というものは、同じ学び方をしていても、誰もが必ず結果が出るものではないと思っていまして、やはりそれぞれの目標に合わせてプランを設計していかなければ、回り道をしてしまうケースが多いからです。そのため無料体験レッスンでは、まず一番最初に目標を明確化するという点に重きをおいて話をしています。
星野習い事系の教室やスクール、フィットネススタジオ事業などでは「まずはお試し!」「まずは無料!」と、テクニック的に「無料体験」をマーケステップとして置いているところが多く見られます。あるいは、「まずはどんな感じか試してみないと分からない」という、サービスの無形性からくる知覚リスク(消費者が商品やサービスを購入する際に感じる不安や懸念)を回避する目的ですね。
そんな中で山下さんは、ミッションから落として「目標を明確化する」、申し込み前のカウンセリングもサービスだと捉えるという「無料体験の狙い」がはっきりしていますね。だからこそ無料体験が重要であり、その「予約」というコンバージョンの質と量をコントロールする意義の高さを感じます。
星野ちなみに無料体験のカウンセリング担当は、インストラクターの方が兼任されているのでしょうか?
山下様専任の学習コンサルタントが担当しています。学習の目標を明確にするには、カウセリング・コーチングなどのスキルも必要なため、お越しになる方のライフプランを一緒に考えられるプロフェッショナルが対応しています。無料体験では、いきなり学習に入るレッスンを受けてみるというよりも、効率的に学習するためのセットアップをまず行うイメージですね。ガイダンスよりもさらに前の第0回的な。ですので実際にサービスにお申し込みいただかなかったとしても、その方の独学に役立てる気づきや学びは得られる部分があると思います。
星野ありがとうございました!