健康診断の業務効率化と受診率アップのポイント
ノウハウ
社内の健康診断の管理は、人事・総務担当者にとって重要な業務の一つである一方、受診日の調整・受診先とのデータのやり取り、未受診者への催促など社員数や健診内容が多岐にわたるほど、その管理は複雑かつ手間のかかる作業になります。
そこで、今回は健康診断の管理業務を効率化するため、以下のポイントをまとめました。
- 【注目を集める健康経営】そもそも企業にとっての「健康診断」とは?
- 【受診率向上への取り組み】受診率向上するためのポイントを事例元に検証
- 【人事・総務部門の業務効率化】ITやクラウドを利用した業務効率の運用事例
健康診断の業務改善のヒントにご活用くださいませ。
【注目を集める健康経営】
今年に入り、再び「健康経営」が注目されています。
この流れは2015年12月から施行される通称ストレスチェックの義務化が大きく影響していると思いますが、もともと「健康経営」という言葉は「The Healthy Company」の著者、ロバート・H・ローゼンが提唱したといわれています。
この「健康経営」、日本でも2009年あたりから取り組む企業が増え始めて、2014年には経済産業省が東京証券取引所と共同で、健康経営に優れた上場会社22社を選定し、「健康経営銘柄」として発表しています。
「健康経営」は企業の経営戦略にとしてなぜ重要となるのでしょうか?
労働安全衛生法の改定など、企業の従業員に対する責任は益々大きくなっています。
また、メンタル面や傷病などでの退職者・休職者によるコストも大きな負担となります。これは退職金・採用コストの他にも、退職にかかる事務作業・業務調整、周囲の従業員が穴埋めする残業代、新たな人材育成による生産効率の低下など、目に見えないコストが発生するためです。
内閣府が発表した「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」によると、メンタル面などが理由で6ヵ月休職した場合のコストは年収約600万円の従業員の場合、約422万円のコストがかかるといわれています。
もちろん「健康経営」は、リスク回避だけではありません。従業員が健康的に働くことができる環境を提供することで、業務生産性向上による業績アップ、また企業のブランドイメージの向上に大きく貢献します。
このように「健康経営」は、企業戦略にとって重要な位置づけであり、投資家からの評価にもつながります。
健康経営が注目される一つとして、少子高齢化で今後も増える医療費負担の削減などがあります。企業だけにとどまらず、前述の経済産業省をはじめとした国レベルで健康経営が推進されているはこのためです。
【健康診断の受診率向上への取り組み】
社員の食習慣に配慮した健康的なランチの提供、体重・血圧などのクラウド管理、禁煙補助など、健康経営に関する取り組みがは様々で、企業の特色を反映した内容も多くあります。
従業員の健康管理に関わる取組として主軸となるのは、やはり健康診断・ストレスチェック・産業医との連携、そして有所見者へのフォローではいでしょうか。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構平成25 年6 月24 日プレスリリース
「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」調査結果より
過去1年間の「定期健康診断」を実施したとする企業の割合は94.1%というデータがありますが、一方再三の告知にも関わらず、受診しない従業員があるのも事実です。
ちなみに健康診断を受診しない理由としては、
「バリウムが苦手」
「会社に自分の個人情報を知られたくない」
「健診結果が悪いことで、雇用の不利にあたるのではないか?」
「スケジュールがなかなか合わない」
など様々です。
前述の「健康経営銘柄」にも選出されたローソンが健康診断の受診率向上を狙い、2013年度から「健康診断を受信しなかった社員とその上司の賞与を減額」という制度を導入したことは、覚えている方も多いのでないでしょうか。
未受診の従業員に対して、各部署の担当者が個別に対応することも解決策の一つですが、ポイントとなるのは従業員一人一人にその重要性を認識してもらうことです。
受診率の向上において最も大切な事は、経営者がその重要性を理解し、各部署を通じて、説明・制度作り・情報提供を積極的に責任を持って行うことだと考えます。
【人事・総務部門の健康診断による業務効率化】
健康診断を実施するにあたり、健康診断の実施事務従事者である人事・総務部門の主な業務は健診施設・会場予約、健診告知・認知活動、健診日程調整、健診結果保管、労働基準監督署への書類提出、有所見者への対応などがあります。
また特殊、特定業務従事者、海外派遣労働者になど業務内容によっては、健診内容・回数が異なります。
これら健康診断にかかる業務は、従業員数・拠点数が多いほど負担は大きく、一部またはすべてをアウトソーシングや健診管理システムで運用する企業も多くあります。
ここで、健康診断に関連するシステム・アウトソーシングサービスを、分かりやすいように大きく分類しました。
(各サービスを提供する企業により、細かいサービス内容は異なります。)
近年、システムのクラウド化が進んでいますが、健康診断に関する情報は機密情報に当たるため、基幹健診管理システム(企業側・施設側)はクローズドの環境に置かれていることが多く、健康診断の日程調整を人事・総務部門が個別にスケジュール調整をすることもあります。
前述の健康診断を受診しない理由の一つ「スケジュールが合わない」という従業員対策として、「受診日を複数日設ける」「数か月前に予定を仮押さえる」等で、対応する企業もあるそうです。
またある企業では、スケジュール調整は各部署を通じて社員の健診予約を行う社内アンケートを使い、第三希望まで聞き、エクセルで日程調整、マネージャーを通して再度告知、その後、再度調整を行うそうです。仮にメール返信・再調整などで従業員一人に対して平均5分かかるとしたら、社員数3000人の企業では約250時間かかってしまいます。これは1日8時間とすると、ゆうに1ヶ月以上(31日以上)の勤務時間に相当する計算です。
健康管理・受診率向上は人事・総務部門の業務目標である一方、採用・教育・勤怠・給与・労働衛生・人事に関する諸手続き等、他にも優先度の高い業務を抱える中で、健康診断の予約日調整は大きな負担となっているようです。
しかし、これらの業務は長年行われていたため、業務効率化としてシステム導入の検討を行われることも少ないです。予約日の調整を始め「改善するものがない」と感じているような場合でも、「慣れている業務」の中身や進め方をステップごとに見直してみてはいかがでしょうか。
特に単純作業、繰り返し行っている作業、手戻りが発生する作業はシステムに置き換えることができる可能性が高いです。
今ある業務を一度見直し、どこにどれだけ時間(=人的コスト)がかかっているかを明確化することで、システム導入の費用対効果を見積もることもできるのではないでしょうか。
社内の健康診断業務、効率化のヒントになれば幸いです。
健診センターや企業の総務部門で予約管理する健康診断。受診者の年齢や性別によって提供プランが異なるため、細心の注意をはらった予約受付が求められます。限られた期間に発生する大量の予約を効率的に処理する予約管理システムが活用されています。
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