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予約したはずなのに席がない?航空業界のオーバーブッキング事情とは

ノウハウ

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2018.09.05
予約ラボ編集部

予約一筋15年のリザーブリンクが運営する『予約ラボ』の編集部です。注目のサービスや、予約から始まるサービス体験、予約管理にまつわるビジネスノウハウまで、「予約」に関するあらゆる情報をお届けします!共同研究のご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

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ある空港でのこと―読者の皆さんの中には、このようなアナウンスに聞き覚えのある方がいるのではないでしょうか。

「□時□分発のXXXX便は、お客様のご予約数が座席数を上回ってしまいましたため、後続の△△便へのご搭乗にご協力くださるお客様を探しております……」

実は、飛行機の予約数が座席数を上回ってしまうのは珍しいことではありません。また、飛行機以外でも宿泊施設や飲食店などで同様の事態が起こることも。このように、キャパシティを超えて予約を受け付けることを「オーバーブッキング」と呼びます。

日本ではそこまで馴染みがないかもしれないオーバーブッキングですが、海外旅行では日常茶飯事ともされています。そこで本記事では、航空業界を中心としてオーバーブッキングについてより詳しく紹介します。

飛行機のオーバーブッキングはなぜ起こる?その理由と解決策

なぜ航空会社は座席数よりも予約数を多く取るのでしょうか?

その理由は、飛行機の「当日キャンセル」にあります。座席数とぴったりの数で予約を受け付けていた場合、搭乗日当日に急なキャンセルが出ると空席が発生することに。このようにして毎回一定数の空席ができてしまうと、本来であれば乗ることができたはずの乗客を乗せられない不利益が発生するだけでなく、相対的に一人あたり運賃の上昇に繋がります。航空会社は過去のデータからキャンセルが発生しやすい特定の曜日や時間帯を把握しているため、キャンセルの発生しやすい便の予約をオーバーブッキングしておくことで、全体の不利益をなるべく発生させないように工夫しているのです。

では、実際にオーバーブッキングが発生した場合、航空会社はどのように対処するのでしょうか?
まずは冒頭のようなアナウンスを流し、協力者を募ります。

このアナウンスでも知らされている通り、後続の便への搭乗に協力した乗客は、その謝礼として一定の協力金もしくはマイルを受け取ることが可能。これをフレックストラベラー制度と呼び、各航空会社が導入しています。日本でのオーバーブッキングによるトラブル事例がほとんど見つからないことから、多くの場合、フレックストラベラー制度で円満に解決しているようです。

各航空会社でのオーバーブッキング発生率は?

国土交通省による最新の資料には、日本の各航空会社でのオーバーブッキング発生状況が記載されています。

平成29年の1〜3月期で「全輸送人員に対する不足座席数の割合」は、日本航空で1万人あたり0.7人、全日空では0.99人。一方、格安航空会社のスターフライヤーでは2.08人、ソラシドエア格安航空会社では5.61人とあり、この数字だけを見ると、格安航空のほうがオーバーブッキングが発生しやすい傾向にあるようです。

しかし、「全輸送人員に対する搭乗できなかった旅客の割合(=搭乗拒否)」を見てみると、二大航空会社と格安航空とのあいだで大きな差は見られず、すべての航空会社で1万人あたり0.3人を下回っています。つまり、日本の航空業界全体を見渡してみると、オーバーブッキングは1万人に1〜5人程度の割合で発生するも、「搭乗拒否」に繋がるケースはほとんどないと言えるでしょう。

一方で、海外の航空業界でのオーバーブッキング状況を見てみましょう。アメリカのエコノミスト誌がまとめた調査によると、たとえば赤くマークされているユナイテッド航空では、10万人あたり100人から120人がオーバーブッキングに対し自主的に代替便への変更を申し出て、11人から12人が搭乗拒否を経験しています。

引用元:The Economist

右上のスカイウェスト航空やエクスプレスジェット航空は、5万人の乗客に対して16人から20人の搭乗拒否があり、日本と比較してかなり高い数値であることがわかります。総合的に判断すると、日本の航空会社と比較して、アメリカの航空会社は3倍以上オーバーブッキングとそれに伴うトラブルが発生していると考えられます。

航空業界と乗客、双方からオーバーブッキングへの対策を

オーバーブッキングをしない効率的な搭乗客管理がベストであることは間違いありません。とは言え、飛行機の効率的な運行において、オーバーブッキングよりも良い解決策が見いだせていない現状がある限り、航空会社は今後もオーバーブッキングを運用していくと考えられます。

海外の航空業界では、AI技術を使ったオーバーブッキング管理に注目が集まっています。
具体的には、搭乗客の性別や年齢といった個人情報を元に「オーバーブッキングにより搭乗できないことで、大きなトラブルに繋がりやすそうな乗客」や「代替便への搭乗協力を受け入れてくれそうな乗客」を見極め、協力をお願いできそうな乗客をあらかじめ予測しておくという手法です(参考:日経電子版 オーバーブッキング問題、データのプロが妙案)。
やむを得ない事情での当日キャンセルが完全には避けられない業界において、このような「織り込み済み」の対応策は有効だと言えるでしょう。

また、日本では滅多に遭遇しないオーバーブッキングですが、海外旅行の際は個々人がトラブルに注意する必要もあります。

2017年4月、ユナイテッド航空でオーバーブッキングにより座席を確保できなかった乗客が飛行機から無理やり引きずり降ろされるという事件(参考:BBC)が起こり、世界中から批判を集めました。もちろん、オーバーブッキングに遭遇した際に必ずしもこのような事態が起こるわけではなく、多くの場合は乗客側の協力と航空会社からの謝礼金により円満に解決します。とは言え、日本語が通じない国でのトラブルはなるべく避けたいもの。そこで、実際に海外でオーバーブッキングを経験した人から、トラブルを避けるためのポイントをヒアリングしました。

1)なるべく早めに搭乗口に並ぶ
海外では、「飛行機に乗ったら自分の座席に既に他の人が座っていた」というオーバーブッキングのトラブルが多いそうです。そのため、搭乗予定時刻がきたらなるべく早めに搭乗口に並び、いち早く座席を確保してしまうのが良いそうです。

2)条件の確認と交渉を忘れない
オーバーブッキングが起こった際、各航空会社が乗客に提示する条件は異なります。もし海外で航空会社に別便への搭乗を打診された場合、カタコト英語で構わないので「協力金はいくらもらえるのか」「(別便が日をまたぐ場合)ホテルまでの移動費や宿泊費、荷物の管理費はカバーされるのか」の2点はかならず確認しましょう。もしカバーされない場合は、それらの費用を加味し、いくらであれば別便への搭乗に協力するかを明確に意思表示することで、交渉がうまくいくこともあるようです。

航空業界と乗客、双方がオーバーブッキングに対応していくことが、トラブル回避として当面の間は最も有効な方法であると考えられます。技術の進歩が目覚ましい昨今、今後の新たな対応策にも期待がかかります。

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