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宿泊予約キャンセルの法的見解を弁護士に聞いてみた

知る・学ぶ

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2021.03.18
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新和章

弁護士法人カノン法律事務所 
弁護士 新 和章
大阪弁護士会(遺言・相続センター、消費者委員会)所属
関西大学法学部卒業。
・古き良き弁護士像を見極めつつ、時代にも寄り添い、進化を続けることを理念とする。いわゆる街弁として、不動産関係、交通事故、債務整理から遺言・相続、離婚等家事事件、一般刑事事件まで広く事件処理を行うだけでなく、法律論文・学会・法改正の動向にも関心を向け、常に新しい切り口から法律問題を捉える探求を欠かさない。
・最近は、税理士、行政書士、中小企業診断士、社労士等とチームを組んで、中国・ベトナム企業の契約関係・労働関係の整備や予防法務にも重点を置く。

INDEX

これまで予約ラボでは、ホテル等の予約キャンセルの状況や問題点について数回に渡り調査をして参りました。

今回は、法律の専門家である弁護士法人カノン法律事務所 新和章弁護士に「予約の法律的見解」について伺いました。すると、普段私たちが何気なくしている「ホテルを予約する」という行為は、宿泊約款と照らし合わせたところ、そもそも予約ではなく本契約が成立しているということになるそうです。

1.そもそも「ホテル等の予約」は本契約になる!

本来、契約というものは「申込み」と「承諾」という意思の合致があれば成立します。
ホテル等の宿泊施設には約款が存在しますが、この約款によると「利用者の予約」という申込みをホテル側が受け付けることによって「承諾」されたものと考えられます。つまり、「ホテル等の予約」は仮押さえ的な意味にとどまるものではなく、ホテル側が利用者からの予約を受け付けた時点で「宿泊契約」という本契約が成立することになるのです。

―なるほど、普段私たちは約款に照らし合わせた予約を行っているということですね?

新弁護士そうです。約款に照らすと、ホテルが予約を受け付けた段階で宿泊契約が成立しているという状態になっています。ですから「予約をキャンセルする」ということは「予約を取り消す」といった意味ではなく、いったん成立した宿泊契約をなかったことにする、すなわち「宿泊契約を解除する」ことを意味します。そのため、約款では「予約のキャンセル」は「宿泊客の契約解除権」として規定されています。

―逆に事業者にとって明らかに悪質と捉えられる予約が入った場合、ホテル側からキャンセルすることはできるのですか?

新弁護士ホテル側がキャンセル、すなわち契約を解除できる事由としては、約款の中でどのような規定を設けるかにかかってきます。現在、多くのホテルは「利用者が反社会的勢力である場合」には宿泊契約を解除できる旨の規定を約款に置いています。
ホテル側としては悪質な予約者は排除したいでしょうが「予約者が明らかに悪質な場合」といった曖昧な規定では解除事由としては不十分・不適切でしょう。もう少し具体性、社会的相当性を持つ規定とする工夫が必要となります。

2.予約キャンセルに関する判例は乏しいため、法整備が追い付いていない!

―電話等、口頭で予約を申し込んだ場合も本契約が成立していることになるのですか?

新弁護士予約がメールであろうと電話であろうと、利用者は「申込み」を行い、ホテル側は「承諾」を行ったという事実が裁判の場で認定されるかぎり「本契約は成立している」ということになります。
メールでの予約の場合には、利用者側の「申込み」は送信メールから明らかとなりますし、ホテル側も予約を受け付けた旨の返信メールをするでしょうから「承諾」の事実もメールで明らかとなります。そのため、さほど本契約の成立立証が困難となることはないでしょう。
これに対して電話等口頭による予約の場合、利用者側は「申込み」ではなくホテルの「予約状況を確認しただけ」といった言い逃れをすることもあるでしょうし、ホテル側の「承諾」についても、言った言わないの水掛け論となるおそれがあります。本契約の成否が裁判の場に持ち込まれたとしたら、その立証は手こずることになるでしょう。

―ホテル予約のキャンセルをめぐるトラブルが裁判となることはあるのですか?

新弁護士ホテルのキャンセル料は、せいぜい数万です。ですから、利用者側が弁護士に依頼してキャンセル料の支払いを拒否、あるいはホテル側がキャンセル料の回収を求めても費用倒れとなってしまいます。そのため、利用者もホテル側も訴訟を利用することはほとんどありません。ホテルのキャンセル料をめぐるトラブルが、司法の場で取り上げられることは稀ですから、法整備の関心も低いのが現状です。消費者としての利用者の視点から、キャンセル料がいくらであれば妥当(※)であるかが消費者契約法上の問題になるぐらいです。また、個々のキャンセルをめぐる事件が国に対する法整備の圧力として機能することはないので、事業者側としては、業界全体で「予約=本契約!契約内容は守らなければならない!」といった認識を広く普及させていくのが大切ではないかと思います。

※この場合の妥当とは、ホテルの稼働率や予約を受けたシーズンなどに照らし、何日前のキャンセルならいくらが妥当かということ。
消費者契約法上、キャンセル料の定めについて、「平均的な損害の額」を超えてはならないという制約がある。

3.予約時にお客様に承諾を得ることで、悪質なキャンセルを防ぐことに

―(ホテル等に限らず)悪質な無断キャンセルを防ぐために事業者側ができる対策はありますか?

新弁護士「ネット予約」が主流となり、24時間集客を受け付けることができる点では事業者側にメリットはあるのですが、簡単に手続きできる分、利用者の中には「予約をすると事業者側は利用客を迎える準備を始める。無断キャンセルすると迷惑がかかる」といった想像ができない方も少なからず存在するのが現実です。ですから事業者側としては、予約=契約の成立という認識を広めキャンセル料の発生を周知させるとともに、キャンセル料の回収の実効性をもたせる工夫をとることが大切となるでしょう。
まず、ホテル業、飲食業の業界全体としての取り組みとして、「予約は単なる仮押さえではありませんよ。お店が予約を受け付けた時点で、本契約が成立しますよ。一度約束した契約は守らないといけないし、都合が悪くなった場合には、キャンセルを入れなければならないし、決められたキャンセル料の支払は避けられないのですよ」という認識を広めることが重要となるでしょう。
次に、個々の事業者としては、キャンセル規約を設定し、予約を受け付けた際に本契約が成立したこと、キャンセルするにはキャンセル料が発生することをしっかり伝え、その同意を得る等の対策が重要となってきます。さらに、キャンセル料の現実的な回収に備えて、予約時に利用者の情報を上手く収集することも大切となってくるでしょう。例えば、予約の際に偽名が使われることにより名前、会社名、住所等を特定できなければ連絡の取りようがありません。また団体客等の大口予約の場合には、無断キャンセルがあると大きな損害が生じるので、利用者から前金をいただくシステムの導入の検討も必要となるでしょう。

―ありがとうございました。

 

新和章

弁護士法人カノン法律事務所 
弁護士 新 和章
大阪弁護士会(遺言・相続センター、消費者委員会)所属
関西大学法学部卒業。
・古き良き弁護士像を見極めつつ、時代にも寄り添い、進化を続けることを理念とする。いわゆる街弁として、不動産関係、交通事故、債務整理から遺言・相続、離婚等家事事件、一般刑事事件まで広く事件処理を行うだけでなく、法律論文・学会・法改正の動向にも関心を向け、常に新しい切り口から法律問題を捉える探求を欠かさない。
・最近は、税理士、行政書士、中小企業診断士、社労士等とチームを組んで、中国・ベトナム企業の契約関係・労働関係の整備や予防法務にも重点を置く。

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