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【第5回:予約の勉強会】自分たちだけの顧客を見つける!予約のコントロール方法とは?

知る・学ぶ

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2019.01.09 2023.12.18
予約ラボ編集部

予約一筋15年のリザーブリンクが運営する『予約ラボ』の編集部です。注目のサービスや、予約から始まるサービス体験、予約管理にまつわるビジネスノウハウまで、「予約」に関するあらゆる情報をお届けします!共同研究のご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

INDEX

日本で唯一の予約研究機関「予約ラボ」が開催する「予約の勉強会」。
今回で5回目を迎えた勉強会は、さまざまな業界、企業の予約担当者6名(定員6名)が参加し、予約管理の課題について意見交換をしました。

大手結婚相談サービスのマーケティング部門で、クリエイティブ視点で「予約」のチューニングをご経験され、現在フリーのクリエイティブ・ディレクターとして活躍する木原かえさんをゲストに迎え、モデレーターは予約ラボ所長、星野陽介(@HoshinoYohsuke)が務めました。

店舗サービス型のビジネスモデルで必要な「予約」について、カジュアルな雰囲気の中、異業種の予約管理者たちが抱える課題を共有し、課題解決に向けてのヒントを見つけることを目的に行いました。

終了後は時間が足りない、もっと話したいという声が聞かれるほど、今回も盛り上がった勉強会となりました。

それぞれが抱える「予約」に関する課題

今回の「予約の勉強会」には、人材紹介会社のマーケティング責任者とアフィリエイト担当者、リラクゼーションサロンの予約管理者と店舗の店長、貸衣装事業会社社長、飲食店経営者が参加されました。

あらゆるサービスに必要な予約。予約に眠る価値を見出し、ビジネスで大きな成果を得るためには、どうしたらいいのか。まずは参加者が抱えている問題をお話しいただきました。

  • 予約後の成約率は100%なので、予約をたくさん入れたい。
  • Web予約後のキャンセル率を下げたい。
  • 予約後に来店。顧客が購入や利用をしなければ利益がない。予約後の売上につなげたい。
  • 繁忙期と閑散期があるが、繁閑に限らず予約を取り続けたい。

それぞれの問題に対して運営者の視点と消費者の視点の双方から、ホンネの意見交換が始まりました。

時代の変化とともに、利用方法も変化。ネット時代に予約と成約を勝ち取るには?

貸衣装事業の社長(以下A)「以前は予約=成約だったのが、他店と見比べてから決めるお客様が増えてしまい、予約後の成約率が下がってしまった。」

この問題の背景
ホテルウェディングが主流だった頃は、ホテルに保証金を支払うことで専属の貸衣装会社になれたレンタル衣装業界。ところがゲストハウスウェディングが流行り始めた10年ほど前から、専属はできなくなり、顧客はいくつかの貸衣装会社を利用するようになったといいます。

これはネット上で口コミだけでなく、商品や価格、スタッフの対応品質まで公開されてしまい、他店と比べて気に入った商品を一番安く購入するのと同じです。簡単に比べることができる今、どうしたら売上につながる予約が入るのでしょうか。

予約時は、服の好みやサイズ感を必ずリサーチ

他社と比べられるということは、他社よりも価値のあるポイントを訴求しなければなりません。接客研修の実施や、事前リサーチなどお客様の満足度を上げる努力、他社を知ることが、今まで以上に必要になってきます。

A「予約は電話からがほとんどです。予約受付をノートに記載するというアナログな方法をしています。予約の時には、服の好みやサイズ感を必ずリサーチします。その方が、来店後の成約率が高まるんです。」

コラム
さまざまな事業の予約はネット経由が主流となりつつありますが、双方向通信である電話予約は、使い方によっては予約の質を高めることができます。

適正な価格設定は、予約をコントロールする重要ポイント!

早期早割での囲い込みや、需要が高い時期の料金値上げでサービスを制限する

リラクゼーションサロン予約管理者(以下B)「忙しい時に予約が入って、ヒマな時に予約が入らない。忙しい時間帯は値段を少し上げることを検討したい」

 

コラム
需要と供給によって値段を変えることは、航空業界やホテル業界で行われているレベニューマネジメントと同じです。ただ、予測を見誤ると顧客離れにつながりかねません。業界需要、エリア需要、シーズン需要、自社需要を丁寧に測る必要があります。

リラクゼーションサロンは航空業界と同じで、「繰り越せない在庫」を持つ事業であり、需要を予測して価格を設定し、サービスを制御するレベニューマネジメントは、トータルの収益を増やす体系的手法です。
特に適切な料金設定は、予約の安定化、平準化において重要なポイントです。また料金の変更によって、予約客層などを変えることも可能になり、繁忙期を避けることもできます。

試験的に需要が高い年末年始の料金値上げを実施→100%の稼働率をキープ

B「3年前から、年末年始だけ価格を値上げしているんです」

B「値上げ期間中だとお伝えすると、3割のお客様から断られます。それでも全スタッフがフル稼働することに変わりはないですね。繁忙期で施術スタッフが足りない、年末年始出勤者には手厚い報酬を渡したい、この両者を叶えてくれました」

コラム
店舗事業では、来店の有無に関わらず人件費が発生します。価格を下げるのではなく、サービスを手厚くするという方法もあるので、平日の空いている時間は施術時間をサービスする方法もリピート客を増やす施策かもしれません。

集客方法は、ペイドメディアだけではない

飲食店経営者「グルメサイト経由で予約が成約するごとに、料金を支払っています。正確に計測できていないのですが、費用対効果に疑問を感じています。」

コラム
ぐるなび、食べログ、Rettyなどのグルメサイトは、成約すると1名に付き一律課金されます。広告メディアだけに集客を依存すると、事業継続上のリスクになります。

個人経営飲食店の広告費(販売促進費)は、5%が適正範囲という考え方もあります。しかしこの適正範囲は、お店の規模やビジネスフェーズによっても変わってきます。 中長期的に考えて、自社ホームページやSNSの活用、リピーター対策など、サービスの資産となる施策を積み上げていく必要があるのではないでしょうか。

 

クリエイティブで、予約前の心理的ハードルを下げる。

『入会して1年間で結婚できる人は24%』と明確に提示

木原「結婚相談所は入会希望者は、怪しいんじゃないかという不安を抱えながら、予約をされるんです」

木原当時は綺麗な女性が花嫁衣装を着てというのが、クリエイティブの定番だったんです。でもそれは、ある意味お客様に対して失礼なことで。ご紹介する相手がみんなそうだって思って入会されるのは、提供するサービスを偽った広告になってしまいますから」

木原「競合他社が『良い結婚ができますよ』、『良い人と出会いましょう』というフワっとしたメッセージしか発信してなかったのですが、『入会して1年間で結婚できる人は24%』と明確に提示しました。」

コラム
顧客にとって良くない情報も、真の情報を提示することでハードルを下げることができます。不安を抱える方にとって、広告の力は大きく発揮します。成婚率の低さを敢えて提示することが、心理的ハードルを下げて、予約の質を上げることにつながったケースです。

木原「成婚率24%を低いと思う方は、来店しません。でもそれは来店してサービス内容を説明しても、入会する可能性が低いですから。
逆に成婚率24%だったら話を聞いてみようという方もいて、そういう方は結婚相談所に対する不安を持ちながらも、一つ答えを持って店舗に来てくださるので、入会する可能性は高くなりますね。」

コラム
正直に効果を提示することは、顧客が感じる怪しさをクリアにすることがあります。誠実な企業というイメージが高まり、会員入会率が高まったということは、予約の質が高まったことになります。

クリエイティブで、予約後のイメージを伝える

木原「予約のハードル=面倒くさいというのは、Webシステムなど物理的な面で解決が可能かもしれません。あとは心のハードルをどれだけ下げられるか。ホームページや広告、直接お話をして、『予約しよう』と思われるかどうかです。
どういう場所で、どういうスタッフが、どういう対応をして、どういうサービスを受けられるのか、ホームページなどで予約後のイメージを出すことも、予約へのハードルを下げる施策だと思います 」

コラム
予約には、手続きの面倒くささなどの物理的なハードルと、予約することへの不安など心理的なハードルがあります。心理的ハードルを下げるための施策は、クリエイティブで見えるようにすることです。クリエイティブで集客は変わります。

木原広告の作り方、写真の撮り方はクリエイティブの領域で、いくら美しく見せても嘘ではないですから。皆さんの期待が高まるようなステキなシーンやステキなスタッフをホームページに出してあげるのも、効果があると思います」

お客様の期待と実際のサービスのバランスを取る

予約において、ホームページや広告などのクリエイティブは、集客の重要なツールです。しかしそこでオブラートに包んだり、現実とかけ離れたサービスを載せたりするのではなく、お客様がイメージしやすいように、お客様の期待と実際のサービスのバランスを取るツールであることを忘れてはいけません。
それが心的ハードルを下げることになり、予約数が伸びる一因にもなります。

リピート率向上の難しさ

B「クチコミを書いていただいたお客様には、割引をしています。いろいろやっていますが、数字で見るとリピート率はほとんど変わらないですね。やってもやらなくても変わらないです」

木原「リピート率が変わらなくても、データを取り続けることで時期的なものや、ピンポイントで効果的な発見があったりします。徹底的にリピート率を上げるためだけの施策を3か月やってみると、何か戦略作りのヒントが見つかるかもしれないですね」

人材紹介会社マーケティング責任者(以下C)「予約画面で予約が埋まりかけているように見せるというのをやったことがあります。キャンセルしたら次の予約が取りにくいというのがあるので、キャンセルは減りますが、予約が増えるところまでは効果がなかったです」

コラム
予約の埋まり状況を見せて価値を高める方法や、クチコミ投稿で追加サービスを受けられる仕組みは、リピートのきっかけを作ります。しかしリピート率の上がり方は顕著ではないので、予約管理者が苦心する部分です。

自分たちだけの顧客を見つける

C「予約~来店までの間にキャンセルとなることがあります。この取りこぼしを減らしたいですね」

C「他社で決まってというよりも『求人サイトだと思って登録した』、『いつか始めようと思って、登録しただけ』、『日中は忙しすぎて面談に行けない』という理由が多いです。
実際は、就職するには何社も受けないと内定が出ないんですが、経験してないのでそこがわからない。だから自分で応募しますと、予約後にキャンセルになるんです」

A「大切なことは、実際にお客様が使ってみてどうなのかっていう部分だと思いますよ。そこがしっかりしていると、やっぱり決まる確率が高くなるんですよね。要は、予約よりも実際のサービスがどうなのかっていうのが、大事なんじゃないかな」

木原「そうですね。お客様が何を課題に感じていて、いろいろと面倒くさい予約を超えて、利用したいのかを把握する必要がありますね。それを把握しながらデータ集計やSEO対策をセットでやっていくことで、オリジナルの価値を、自分たちだけの顧客を見つけていけるんじゃないかなって思います」

直前のキャンセルによる損害

B「夕方の時間帯は埋まるのでお断りしていると、結局キャンセルになることがあります。1週間前の予約とかは、まず当日キャンセルになりますね。直前予約なら確実に来てくれます。予約日と来店日が近ければ近いほど」

コラム
当日キャンセル=売上ゼロです。稼働がなければ人件費だけが発生します。いかに稼働率を上げるか、そこには直前キャンセルをどれだけ減らせるかがポイントになります。

最近では、飲食店のドタキャンが問題になりました。中には無断キャンセルもあり、店舗に与える損害がクローズアップされています。リラクゼーションサロンのように、分刻みのサービスには遅刻でさえも売上に影響します。

原因としてはネット予約の簡単さからか、顧客がちゃんと予定を調整・確認しないまま予約をする「とりあえず予約(予約の仮押さえ)」が増えていることが考えられます。

キャンセルする理由はそれぞれですが、仕事・家族・知人の事情の他に、予約忘れや他店に変更などのキャンセル理由もあります。そのうえ宿泊予約などと違って、飲食店やリラクゼーションサロン、人材紹介会社での登録面談はキャンセルに気兼ねしないというデータがあります。

対策としては事前に確認連絡をする、キャンセルのペナルティを課すなどがありますが、サービス提供側からすると客離れにつながり、あまり現実的ではありません。予約受付時に、遅刻や直前のキャンセル控えるように訴求することが現実的且つ一定の効果がある対策でしょう。
また、キャンセル待ちができるシステムを持つことも、キャンセルの穴埋め対策として有効です。

定性情報から、予約キャンセルの要因を探る

人材紹介会社マーケティング担当「キャンセル理由を探りたいのですが、どんな調査とアクションがありますか?」

木原「私は、直接接客したスタッフに『入会した人はどういうお客様だったのか?』、『入会しなかった人は、どういうお客様だったのか?』ということを確認しました」

木原「エリア毎、年代毎の傾向があるので、目的を決めてネットアンケートや電話でのヒアリングをしました。お客様が何を求めているのかは、ネットのデータだけでは不足します。だから直接対応したスタッフにも聞きます。でもそこも、かなりバイアスがかかっているので、あらゆる人にお客様の情報を聞きました。他業界の方にもどうやっているのか、こういった会議ようなリサーチをするのは、すごく役に立つと思います」

コラム
普段店舗で対応している人にヒアリングすると、有益な情報を得られることもあります。効率的な調査だけでは深い部分を見つけられないこともあるので、対応スタッフにヒアリングする方法はおすすめです。

専門用語

イールドマネジメントとは?

収益の拡大を目指すマーケティング戦略で、1970年代末期にアメリカの航空業界で始まり、日本では1990年代に航空業界やホテル業界で浸透した販売戦略です。どれだけ空席や空室を無くせるかを、収益(イールド)力を上げるための課題とし、需要があるときは価格を高く設定し、需要が低い時期は安く設定するなど、需要変動に沿って最適の価格を設定します。

レベニューマネジメントとは?

イールドマネジメントの狭義となるレベニューマネジメント(RM)。日本でも航空業界やホテル業界など需要変動の大きい業界で定着し始め、今ではゴルフ場やレンタカーなどの業界で取り入れている販売手法です。顧客の需要をコントロールする鍵となる「価格」を需要に合わせて、稼働率×客単価を考慮して価格設定をします。販売手数料などを設定するなど、その他の項目で利益の拡大を図ることもあります。

ダイナミックプライシング とは?

ダイナミックプライシングとは、需要と供給の状況に応じて価格が変動することです。ネット検索すれば、価格帯がわかってしまう今、料金を一定にしないで需要に合わせて価格設定をするのがダイナミックプライシングです。最近では分単位で変わる需要に、AI(人工知能)が価格を設定するのが主流となっています。レベニューマネジメントとの違いは、ダイナミックプライシングは希少価値を訴求しているという点です。

「予約の勉強会」参加者の感想

  • 自分の業界では当たり前のことが、他業界では当たり前ではないことを知りました。他業界ではどう対応しているのかを勉強することで、自分の業界にも役立てそうです。
  • 今まで良い情報ばかりをアピールしようとしていましたが、たとえお客様にとって良くない情報でも、正直に伝えることで信頼を得て予約数が増えたという実例が参考になりました。
  • 異業種の予約管理者の方の話を聞くだけでも、とても刺激になりました。
  • 会社は何のためにその事業をやっているか、どんな人たちのために何をしたいのかをアピールすることで、予約がより良い関係を結べるお客様が集まってくるベースになると思いました。

<勉強会第一弾>
https://yoyakulab.net/business/report-yoyaku-no-benkyokai-1803/
<勉強会第二弾>
https://yoyakulab.net/business/report-yoyaku-no-benkyokai-1805/

予約ラボ編集部

予約一筋15年のリザーブリンクが運営する『予約ラボ』の編集部です。注目のサービスや、予約から始まるサービス体験、予約管理にまつわるビジネスノウハウまで、「予約」に関するあらゆる情報をお届けします!共同研究のご相談や、予約ラボに関わってみたい!という方、お気軽にお問合せください。

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