コロナ禍~今後の店舗の販売・提供方法の変化とドライブスルーの可能性
トレンド
緊急事態宣言は解除されましたが、まだまだ予断を許さない状況が続きます。店舗販売をしている方たちにとって外出自粛による売上減は早急に解決したい問題かと思います。
そこで本記事では、下記について解説します。
- 店舗販売にかわる商品の販売・サービスの提供方法とは?
- 最近増えている「ドライブスルー」方式のメリットについて
- 今後どのように販売・提供方法がかわっていくのか
記事執筆の背景
今回新型コロナウイルスにより「3密」を防ぎながら、店舗の販売・提供をしていく方法について調べていました。すると、Googleトレンドにおいて「ドライブスルー」というキーワードの検索が急増していることがわかりました。
実際「車から降りずに」商品の購入ができる「ドライブスルー」は、人との接触を少なくできる点が最大のメリットです。
「ドライブスルー」というと、マクドナルドのようなファーストフードをイメージする人も多いかもしれません。しかし現在、最新IT技術によって、多くのモノやサービスが進化しています。
ということは「ドライブスルー」にもIT技術の組み合わせにより、お客様にも店舗側にも利用しやすい仕組みとなる可能性があります。
また、わたしたちが「新しい生活様式」を考えていくうえで、「ドライブスルー」に対する認識も大きく変わっていくのではないでしょうか。
そんな今後の店舗販売・サービス提供の進化を願い、本記事を執筆した次第です。
5つの販売形態紹介
まずは「3密」を避け、かつお客様にサービスを提供する販売形態について説明していきます
1. テイクアウト
「テイクアウト」という言葉は、日本では「商品を店内で消費するのではなく、店外に持っていく」という行為を意味しています。このあと説明をする「モバイルオーダー」「ドライブスルー」「移動販売」「事前注文」も「テイクアウト」の一部といえるでしょう。
ちなみに日本でいう「テイクアウト」と、海外での「テイクアウト」は少々異なります。
海外で「テイクアウト」は「お店に事前に注文しておき、お店に自分で取りに行くこと」を意味します。
日本でいう「テイクアウト」には上記の意味もありますが、単に「店内飲食か、持ち帰るか」という意味で使われることが多いはずです。この「店内飲食か持ち帰るか」という意味での「テイクアウト」は、海外では「to go」もしくは「take away」になります。
2. モバイルオーダー
「モバイルオーダー」は、商品注文、受取場所・受取時間の指定、決済までを事前にアプリ等のシステムで完了させるオーダー方法です。マクドナルド、あるいはスターバックスコーヒーの新しいシステムとして認知された方も多いのではないでしょうか。
マクドナルドやスターバックスコーヒーのオペレーションを見てみると、お客様は「注文するために並ぶ時間」「商品を待つ時間」が必要となります。そしてピーク時は「注文するために待っているお客様」「商品を待っているお客様」が店内に留まることになります。
もしかしたら、このように多くのお客様が店内に留まっている状況を避けたいと思うお客様もいらっしゃるかもしれません。その結果、注文せず帰ってしまうお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。
「モバイルオーダー」にはこのような機会ロスを防ぐことが可能です。またアプリ内で決済まで完了できるので、お金のやりとりという業務を少なくできます。
一方で、モバイルオーダーでは、注文が増えるとそれに対応するための手配や受け渡し対応などが増えます。そして、注文数に応じた人的なキャパシティも管理しなければならないという課題もあります。ゆえに、注文を取りに行っても「商品を待つ時間」が発生してしまいます。
また、マクドナルドやスターバックスコーヒーのような「注文後すぐに受け取れる」、あるいは「あらかじめすぐに提供できる商品を扱っている」場合でないと、お客様にご迷惑をかけてしまいかねず、どんな店舗でも導入できるものではないのが現状です。
3. ドライブスルー
「ドライブスルー」は、車に乗ったまま商品を渡したり、サービスの提供をする設備や仕組みのことを指します。
日本では、ファーストフードの駐車場の一部に「ドライブスルー専用レーン」が設けられているイメージが強いかもしれません。
しかし「車に乗ったまま」であることが「ドライブスルー」なので、駐車場に止まっている車や路上駐車している車に従業員が商品を届けるという行為も「ドライブスルー」といえるでしょう。
また、日本では飲食店だけでなく、「ドライブスルーで利用できる銀行のATM」もあります。また海外では「結婚式のできるドライブスルー」もあります。
お客様は「車から出ない」状態でサービスが受けられるので、5つの販売形態のうち最も「3密」にならない方法といえるのではないでしょうか。
【参考】こんなATMもあります|大垣共立銀行 現在は終了しています。
4. 移動販売
「移動販売」は、車などで商品を運び、店舗以外で販売する形態を指します。オフィス街のお昼時に出没する「お弁当販売」や、住宅街を回る「石焼き芋売り」「物干しざお売り」「灯油販売」などがあります。
需要のあるところに移動できるのが「移動販売」の強みです。したがって、今までオフィス街でサラリーマン向けにお弁当を売っていたキッチンカーが、在宅で昼食の準備に悩む人向けに住宅地までお弁当を売りに行くことも可能です。
移動販売を成功させるには、移動販売の日時と場所をいかに顧客に知らせるかがポイントとなります。以前のように「拡声器」で告知するというのは騒音問題になりかねません。ここではSNSが集客のツールになるかもしれませんね。
なお食品を販売する場合には、食品衛生法やその他条例など許可が必要になります。
5. 事前注文
「事前注文」は文字通り「お客様の来店前に注文をうける」ことです。前述した「モバイルオーダー」も事前注文の一種です。事前注文の強みは、「事前に注文内容がわかるので、それに合わせた人員配置と商品・サービスの準備ができます。
人とモノをコントロールできることは、経営の安定化にもつながります。
事前注文は、電話があればすぐに取り入れられますが、多くのお客様に利用していただくためにアプリのようなシステムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。
このようにさまざまな商品販売・サービスの提供方法があります。しかし商品を受け取る際の「お客様同士の接触を避ける」という点においては、まだまだ改善の余地があります。
「ドライブスルー」以外の方法では、受け取る日時を「予約させる」ことで店舗への来店をコントロールすることも有効な方法の1つと言えるのではないでしょうか。
ドライブスルーのメリット
先ほど説明した「5つの販売形態」の中で、新型コロナウイルスの影響で増加したのが「ドライブスルー」方式です。ここでは「ドライブスルー」のメリットを挙げます。
メリット1. 「3密」を防げる
お客様は「車に乗ったまま」なので、「お客様同士」「お客様と従業員」の接触を防ぐことが可能です。お客様が「不要な接触」を避けられることは、お客様の来店への不安を払しょくすることにつながります。
また従業員もお客様との接触が少なくなれば、従業員の「感染リスク」を軽減できます。
メリット2. 人件費・配送費の削減
「3密」を避ける方法として、「デリバリー」「配送」の需要が高まっています。実際、ヤマト運輸が2020年4月に扱った宅配数は前年同月の113%、UberEatsや出前館のデリバリーも増加しているとの報道も。
「デリバリー」「配送」を外部業者に委託すると、配送費や手数料がかかります。また、自前のスタッフが「デリバリー」「配送」をするとなると、その分のスタッフが必要になり、人件費がかかります。
「ドライブスルー」は「ドライブスルー専用人員」が必要となるかもしれませんが、1件のお客様にかける時間は「デリバリー」に比べて少なくなります。
【参考】ヤマト運輸 先月の宅配便 13%余増加 外出自粛でネット通販増
メリット3. 導入しやすい
「ドライブスルー」というと、マクドナルドのようなドライブスルー専用設備や、独自アプリの採用が必要と思われがちです。しかし実際に外出自粛要請後のニュースを見ていると、「ドライブスルー」方式を採用しているケースが多いのです。
次章でドライブスルーの事例を挙げていますが、専用の仕組みを使わなくても可能なことがわかります。
電話注文での予約も可能ですが、より合理的にドライブスルー方式を採用するのであれば、事前注文や予約注文をオンラインで管理する「事前注文システム」がオススメです。
【参考】事前注文システム「COTOL」
ドライブスルー事例8選
ここでは2020年5月現在の「ドライブスルー」方式の導入事例を挙げてみました。
一時的にドライブスルー方式を取り入れている事例もあるため、ドライブスルーサービスが停止していることもあります。「このような導入方法がある」という参考としてご覧ください。
事例1.ドライブスルー八百屋(株式会社フードサプライ)
画像出典元:ドライブスルー八百屋トップページ
外食向けに産地直送野菜の卸業を行う株式会社フードサプライが運営する「ドライブスルー八百屋」。
もともとは飲食店向けに産地直送の青果を届けていましたが、新型コロナウイルスの影響で流通が激減。株式会社フードサプライが厳選した野菜とお米を「もったいない野菜セット(税込み5,000円)としてインターネットで予約を受け付け。
設定された引き渡し場所、引き渡し日時で、お客様は下車することなく商品を受け取れます。
2020年5月27日現在6月1週目まで実施予定で、今後の予定は未定のようです。他にも「ドライブスルー肉屋」「ドライブスルー魚屋」も運営しています。
【参照】ドライブスルー八百屋
事例2.くるまdeお持ち帰り(くら寿司株式会社)
画像出典元:くら寿司公式Twitter
「くるまdeお持ち帰り」は回転ずしチェーンのくら寿司が2020年5月15日から開始したドライブスルーサービスです。ファーストフード店のようにドライブスルー設備はありません。
くら寿司の専用予約アプリから予約注文し、店舗の決められた駐車スペースに車をとめたら、予約アプリから呼び出しをします。そうすると店舗スタッフが車まで商品を届けてくれます。
【参照】くら寿司の公式Twitter
※2020年5月調査時の情報です
事例3.リンガーハット(株式会社リンガーハット)
画像出典元:リンガーハットホームページ
「長崎ちゃんぽん」でおなじみのリンガーハットでも一部店舗で「ドライブスルー」が可能です。専用の容器と独自の調理法により短時間での提供が可能です。
注文は、ドライブスルー専用レーンで商品を注文、商品お渡し口まで車を移動してもらい、商品をお渡しする形になります。
【参照】リンガーハット
事例4.ドライブスルーファーム(マザー牧場)
画像出典元:マザー牧場ホームページ
千葉県にあるマザー牧場でもドライブスルー方式を取り入れています。外出自粛養成に基づき休園していましたが、こういう時こそ「花や動物たちを愛でて、笑顔になれる場所」を提供するため、ドライブスルーでのみ運営しています。
通常では車が入れないマザー牧場内の特別コース(約4.3km)をお客様の車でまわることが可能。コースでは、動物たちや、東京湾、九十九谷などの絶景を眺められるそうで、気分転換ができます。
ただしこのドライブスルーは千葉県内在住者のみ対象です。(2020年5月現在)
【参照】マザー牧場
事例5.イオンネットスーパー(イオンリテール株式会社)
画像出典元:イオンリテール株式会社ニュースリリースより
イオンリテール株式会社では、イオンネットスーパーにて導入していた「自宅にお届け」「店舗受け取り」に加えて、一部の店舗で「ドライブスルー受け取り」を開始しています。
イオンに限らず「自宅への配送サービス」の需要が増えているため、配送日数がかかってしまうケースも出てきています。その点「ドライブスルー」であれば、配送日数がかからず、人との接触が避けられます。
【参照】イオンリテール株式会社
事例6.かずさファーマーズマーケット(千葉県木更津市)
画像出典元:https://kisacon.com/
定期的に行われていたかずさファーマーズマーケットを5月からドライブスルー方式で行っています。弁当、食料加工品、野菜等を販売する20店舗が参加しており、事前予約も可能です。
当日の会場には、「事前予約専用レーン」と「当日客専用レーン」を用意し、受取時間の短縮化と渋滞緩和をはかっています。
【参照】ドライブスルーマーケットwithナチュバ 現在は終了しています。
事例7.メトロポリタンデリカ ドライブスルー(ホテルメトロポリタン盛岡)
画像出典元:https://morioka.metropolitan.jp/
ホテルメトロポリタン盛岡では、玄関先の特設スペースにてホテル特製弁当の販売を行っています。ホテルの味を日替わりで400〜800円程度で楽しめます。ドライブスルーとうたっていますが、徒歩での購入も可能です。
【参照】ホテルメトロポリタン盛岡 現在は終了しています。
事例8.図書館
画像出典元:「海南nobinos(ノビノス)」ページ
最後に挙げるのは図書館のドライブスルーサービスです。これは休館中の図書館で限定的なサービスとして取り入れられていたところが多いようです。
図書館の事前予約システムを利用し、決められた日時に受け取りにいくという方法を採用しているところがほとんどでした。しかし、和歌山県海南市の「海南nobinos(ノビノス)」では、「本の福袋」と題し、年齢や性別に応じて約35種類のテーマの福袋を司書が用意し貸し出すというユニークな方法が取り入れられました。
【まとめ】コロナ禍~今後の店舗の販売・提供方法の変化とドライブスルーの可能性
本記事の要点は下記の通りです。
- 3密を防ぐために「商品の販売方法」「サービスの提供方法」に変化が求められる
- そのうちの1つがオンラインで利用出来るように進化した「ドライブスルー方式」である
- 効率的にドライブスルー方式を実現するためには、事前に予約注文してもらことが大事
- 具体的な方法のひとつとして、事前注文を管理できる「事前注文システム」
記事を書いている間も常に状況が変わっています。
大切なことは、既存の概念やシステムにとらわれず、柔軟に変化していくことではないでしょうか。
本記事がそのきっかけになれれば幸いです。