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コロナ時代における「予約」ビジネスの可能性(後編)

考察

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2020.06.17 2021.11.16
中谷 淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

INDEX

みなさん、こんにちは。 ウィズコロナ/アフターコロナ社会における「予約」ビジネスへの影響と今後について後編です。 前編はこちら

新たに予約が必要となる業界

新型コロナと共存していく社会では「予約」の必要性が高まり、これまで予約の必要のなかった業界においても「予約」の仕組みを導入する必然性が高まってくると予想しています。   例えば小売店、食品スーパーやショッピングモールなどの大規模商業施設などでは特に時間あたりの来店人数に上限を定める必要が生じます。特に週末などは、来店する人を無条件に入店させてしまうと、密集状態が懸念されるためです。   制限をかけて、店外で並んでもらうことも、密集状態となるので、それを避けるためには、事前に来店予約をとることになるでしょう。   同様の考え方で、美術館や動物園、遊園地なども人数制限をするために予約の仕組みが定着していくことが予想されます。   先日、海外のビーチリゾートにおいて、「砂浜を区画し入域する人数を制限し事前予約をとる」というニュースがありました。海水浴シーズンを控えた日本でも、この考え方で予約の仕組みを導入する自治体が出てくることでしょう。   三密を避けるため「予約」の仕組みを使い、サービス提供側の資源を最適に配分する必要があるということです。

コロナによって「予約」のあり方は変化する

日常生活が徐々に戻っていけば、旅行需要も戻ってきます(当面は国内旅行中心になるでしょうが)。 それにともない、航空機や新幹線、ホテルや旅館の需要も回復することになるでしょう。しかし三密を避けるために人数制限をする、つまり供給量は減らさざるを得ません。 社会生活が元に戻ったとしても、当面の間は新型コロナウイルス感染抑止のために供給量が恒常的に少なくなります。そのことで需要が超過する場合が多くなることが予想されます。   これまでの予約の仕組みは「需要が超過する場合に機能する」予約の仕組みであり、基本的に「早い者勝ち」のルールが適応されてきました。 確実にサービス提供を受けるために予約の必要性が高まりますが、その際「早い者勝ち」ルールで運用されてきた予約の仕組みは変化が必要になると考えています。 果てしない早い者勝ち競争を避けるために、イベントチケットの予約で導入されている「抽選」の仕組みを導入する必要がありそうです。また、抽選に漏れた人を他に割り振り、代替提案する仕組みなども求められることが予想されます。   また、航空機や新幹線、旅館やホテルなど固定費の大きな設備系サービスにおいては、稼働率を高めることがビジネスの要諦となり、予約により早期に需要を取り込む努力がなされてきました。早期予約による割引がその1つです。   しかし、今後は供給量が少なくなる中、割引料金で稼働率だけを追い求めていては利益が出なくなります。今回の社会変化にともない、早く予約するほど料金が割り引かれるのではなく、早い予約は料金を割り増しして提供することもできるかもしれません。   コンサートやスポーツ観戦のイベントも同様です。これまでのような人数を収容することは難しくなるため、採算をあわせるためにチケット代は高くする必要があります。 どうしても会場に行きたい人は、確実にチケットを入手するために、高くても早期に入手しようと考えます。そこまでニーズのない人なら、もし直前でチケットが入手できるならば入手すると考えるでしょう。イベント主催者側もチケットが売れ残ることは機会損失になるので、直前ではチケット代を安くしてでも売れた方が良いと考えます。 早ければ早いほど「安く」提供するのではなく、早ければ早いほど「高く」提供することになると予想されます。そうした変化に予約の仕組みも対応していくことが求められるでしょう。   供給量が減ることにより、人気イベントのチケットはプレミアム化がより高まるため、これまでも問題になってきている転売問題の根本的な解決も必要です。転売により主催者側のコントロールの効かない価格高騰が問題となるならば、予約の段階でオークション機能をあわせ持つことも可能性として考えられるのではないでしょうか。

環境の変化に対応する手段としての「予約」

前編・後編の2回にわたり、「予約」をキーワードに、ウィズコロナ/アフターコロナの社会を考えてみました。 今回のコラムをまとめると、以下の4点になります。  

  • 社会の変化に対応して、「予約」の需要は高まる。 (これまで予約が当たり前でなかった業界でも予約の仕組みが定着する)
  • 消費者のニーズに対応して、予約の仕組みは高度化していく必要がある。 (飲食店の席の指定や、小売店における時間帯来店予約など)
  • 早い者勝ちルールの予約から公平性を担保した「抽選」の仕組みが求められる。 (供給量が減ることにより、需要超過の発生が多くなるため)
  • 需要に応じた価格調整。早期予約割引価格から早期予約プレミアム価格、予約オークションの可能性 (供給量が減ることにより、企業は単価をあげる必要があるため)

  突然生じて、社会に大きな影響をあたえた新型コロナウイルスは、恐竜絶滅の地球史に似ているように思います。地球に隕石が落ち、地球環境が激変した結果、気候変動に対応できなかった恐竜は絶滅してしまいました。 一方で、その変化に適応できた哺乳類は生き延び、結果現在の人類の繁栄につながっています。 苦しい状況に陥っている事業者が多く生じていますが、変化に積極的に適応していくことで未来の繁栄があると信じ、今を乗り切っていく必要があるのではと強く思うところです。   その中で予約の仕組みは、環境の変化に対応していくための手段として大きな可能性があるのではないかと感じています。   皆さまは、これからの予約の仕組みについて、いかがお考えでしょうか。

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中谷淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

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