「モバイルオーダー」の広がりと今後の可能性について
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2020年のもっとも印象的な出来事と言えば「新型コロナウイルスの流行」。この2020年を象徴するように2020年11月に発表された「2020年ヒット商品ベスト30」には、新型コロナウイルスに関する商品が多数ランクインしました。
参照:2020年ヒット商品ランキング 日経トレンディが選んだベスト30
この「2020年ヒット商品ベスト30」を見ると、「モバイルオーダー」がランクインしています。最近飲食店でよく耳にするようになった「モバイルオーダー」。利用されている方も多いのではないでしょうか。実際、Googleの検索でも「モバイルオーダー」というキーワードの検索ボリュームが上昇しています。
そこで本記事では「モバイルオーダー」の下記の内容について解説します。
- モバイルオーダーの導入メリットは?
- 店舗ごとにどんな特色があるのか
- どんな店舗に導入できるのか
モバイルオーダー導入側のメリット
モバイルオーダーを導入するメリットには下記の4点があげられます。
- 店舗運営の効率化
- 店舗内に多くの人が留まることを避ける
- お客様と従業員の接触機会を減らす
- テイクアウト需要の取り込み
新型コロナウイルスの影響により、テイクアウト需要は高まっています。今までのテイクアウトといえば、店舗のレジで注文し商品ができるまで待つ、あるいは電話、インターネットで事前に注文し店舗で会計をして商品を受け取る、という流れがほとんどでした。
「モバイルオーダー」という仕組みを用いると、注文を受けてお金を受け取るという過程が自動化され、店舗側は注文の入った商品を来店したお客様に渡すだけですみます。
また、通常マクドナルドやスターバックスコーヒーのようなオペレーションの場合、店内飲食、テイクアウトに関わらず、お客様は「注文するために並ぶ時間」「商品を待つ時間」が必要です。そしてピーク時は「注文するために待っているお客様」「商品を待っているお客様」が店内に留まることになります。しかし、モバイルオーダーを導入することで、人と人との接触を避けることにもつながります。
モバイルオーダー導入事例
2021年1月現在、さまざまな店舗がモバイルオーダーを導入しています。モバイルオーダーといっても、店舗によりサービス名、サービスの内容はさまざまです。
今回は
- スマートフォン、パソコンから事前注文ができる
- 事前決済ができる
を「モバイルオーダー」と定義し、導入している会社、店舗の仕組み、特徴、サービス導入時の工夫等を「モバイルオーダー導入順」にご紹介します。
ケンタッキー(2015年10月から導入)
出典:https://japan.kfc.co.jp/news_release/news201013kfc.html
ケンタッキーでは「モバイルオーダー」という言葉ではなく、「ネットオーダー」というサービス名で2015年10月から行っています。この「ネットオーダー」の場合には専用アプリのインストールは必要ありません。開始当初はお持ち帰り注文のみでしたが、クレジットカード決済やケンタッキー提携のポイントカード決済もすでに導入されていたようです。
現在は、インターネットからケンタッキーのネットオーダー専用のページにアクセスし、お持ち帰り注文か、お届け注文かを選べます。お届け注文についてはできる地域が限られていますので、Webサイトでご確認ください。
また2020年10月からは、一部店舗でネットオーダーで注文した商品を非接触で受け取れる店内設置型ロッカー「ピックアップロッカー」のサービスも試験導入されています。
参照:日本KFC、店舗設置型「ピックアップロッカー」利用サービスを試験導入
スターバックス(2019年6月から導入)
出典:https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2021-3721.php
コーヒーチェーンのスターバックスは、「モバイルオーダー」という言葉を日本に広めた企業のひとつといえるでしょう。2020年に始まったサービスのように見えますが、実は2019年6月から都内の店舗でサービスを開始しています。
テイクアウトだけでなく店内飲食でも利用できるため、店内座席から注文して、時間になったら受け取り口で受け取ることも可能。混雑時に、「注文+会計」と「商品受け取り」の2回並ばなければならないところを、「商品受け取り」の1回ですむことがメリットです。
アメリカでは2015年からすでに「モバイルオーダー&ペイ」のサービスが開始しており、2020年6月時点で、注文の22%が「モバイルオーダー&ペイ」を利用しているとのこと。また2019年11月にはモバイルオーダー専用のショップも展開しています。今後日本では「モバイルオーダー&ペイ」がどのようにサービス展開していくのか注目です。
マクドナルド(2020年1月から導入)
出典:https://www.mcdonalds.co.jp/shop/mobileorder/
マクドナルドで「モバイルオーダー」という言葉を知ったという方も多いのではないでしょうか。マクドナルドではモバイルオーダーを2019年4月から試験導入し、2020年1月以降順次全国の店舗で利用可能となっています。
マクドナルドのモバイルオーダーは、店内飲食、テイクアウトの両方で利用可能です。店内飲食の場合には、カウンター受け取り、席での受け取りのどちらかが選べます。席での受け取りの場合には、あらかじめ席を確保し、専用アプリで注文の際に、確保したテーブルの番号を入力。その後店舗スタッフが席まで商品を届けます。小さなお子様がいたり、注文商品が多かったりしたときには「モバイルオーダー」が便利かもしれませんね。
参照:マクドナルド
丸亀製麺(2020年5月から導入)
出典:https://marugame-seimen.oderapp.jp/#/
丸亀製麺では以前からてんぷらのテイクアウトが可能で、2020年5月よりてんぷら以外の商品のテイクアウトも可能となりました。それと同時に「モバイルオーダー」サービスの導入も開始しています。
丸亀製麺は全店に製麺機を設置し、打ちたて、茹でたてのうどんを提供しています。テイクアウトを導入するにあたり、お持ち帰り容器の開発をしました。うどんについては、特殊な3層構造容器により、店内で食べる時に近い食感を再現。その専用の容器を採用することで持ち帰りが実現可能になりました。また天ぷら類についても「専用BOX」または「専用袋」で提供されることで、家やオフィスに持ち帰るまで、サクッとした食感を保てるよう工夫されています。
参照:丸亀製麺
松屋(2020年7月から導入)
出典:https://www.matsuyafoods.co.jp/whatsnew/topics/23850.html
松屋では、2019年7月からLINEが提供するテイクアウトサービス「LINEポケオ」を導入し、2020年8月からは松屋フーズ公式アプリで注文できる「松屋モバイルオーダー」を開始しています。現在は「LINEポケオ」「松屋モバイルオーダー」の両方が利用可能です。
もともとは、店内の券売機で購入した食券で注文する仕組みですが、モバイルオーダーを利用することで券売機に並ばず、店内での待ち時間も短縮して購入できます。さらに松屋モバイルオーダーで注文すると、注文金額10円ごとに1ポイント(10%)の「松弁ポイント」が還元されます。たまったポイントは、次回以降の注文において10ポイント当たり10円の値引きに利用可能です。
参照:松屋モバイルオーダー開始!松弁ネットに待望のクレジットカード事前決済追加!
リンガーハット(2020年8月から導入)
出典:https://www.ringerhut.jp/news/2020/1027_1/
リンガーハットでは、2020年8月よりモバイルオーダーサービスを導入しています。本サービスは、専用アプリ不要でリンガーハットの専用注文ページからアクセスし、テイクアウトのみ注文可能。そしてモバイルオーダー対応商品として10種類以上の商品をラインナップしています。
2020年10月からは、テイクアウト専用ちゃんぽん麺を開発、導入をしています。通常の麺より太くのびにくく、茹で上がりの麺の固さは約1.5倍。もちもちとした食感が長持ちする麺で、テイクアウトでも美味しくいただける工夫をしています。
参照:「モバイルオーダーサービス」対応店舗拡大&「テイクアウト専用ちゃんぽん麺」全店導入記念!
ロッテリア(2020年10月から導入)
ロッテリアでは2020年10月から、「LINEポケオ」を使ったテイクアウトサービスを導入しています。今いる場所から、近くの店舗検索、注文、事前決済までをLINE上で済ませることのできるサービスです。注文時は、LINEポケオ公式アカウントで友だち追加する、LINEアプリ内のサービスカテゴリーから検索する、またはロッテリアの公式ホームページ内のLINEポケオバナーからの検索で利用可能です。
注文には、ロッテリアの専用アプリのインストールではなく、LINEのインストールが必要となります。
参照:ロッテリア「LINEポケオ」導入 現在は終了しLO モバイルオーダー(https://www.lotteria.jp/contents/?cd=000007)
サーティワンアイスクリーム(2020年11月から導入)
サーティワンアイスクリームでは、2020年11月からモバイルオーダーサービスの導入を開始しました。デイリーメニューを当日に予約して受け取る「当日テイクアウトモバイルオーダー」を利用できるのは、関東と大阪の22店舗のみ。「クリスマスネット予約」や「福袋ネット予約」は全国845店舗(2020年11月16日時点)で利用可能とのことです。
クリスマスの商品や福袋の商品の予約注文を全国対応としているのは、繁忙期に店頭に人を滞留させないことに効果がありそうです。
参照:サーティワンアイスクリーム(https://www.31ice.co.jp/contents/topics/201106_01.html) 現在は終了しています。
今年の福袋はネット予約が可能 現在は終了しています。
楽天リアルタイムテイクアウト
出典:https://takeout.rakuten.co.jp
楽天リアルタイムテイクアウトは、近隣の飲食店をPCやモバイルから検索して商品を選び、事前注文と決済ができるモバイルオーダーサービスです。お客様は指定した受け取り時間に店頭を訪れることで、出来たての商品を待ち時間なくテイクアウトできます。
また他の楽天グループのサービス同様に、購入金額に応じて「楽天ポイント」を貯めたり、決済時には貯まったポイントを利用することもできます。
参照:楽天リアルタイムテイクアウト 現在は終了しています。
ルクア大阪
出典:https://www.lucua.jp/special/mobileorder_lucua/
今まで解説をしたモバイルオーダーは、飲食店毎にモバイルオーダーサービスを導入するという形態がほとんどです。このルクア大阪という商業施設では、直営の飲食店のテイクアウトを対象としたモバイルオーダーサービスを開始しています。
お客様はルクア大阪内の店舗から、注文する店舗とメニューを選び、指定の時間に商品を取りにいく仕組みです。施設内には直営の飲食店以外にも、スターバックスコーヒーのように独自のモバイルサービスを導入している店舗もあり。商業施設全体で「モバイルオーダー」を積極的に取り入れているようです。
自社店舗でもモバイルオーダーは導入可能
ここまでさまざまな店舗のモバイルオーダー導入事例を紹介しました。スターバックスの「モバイルオーダー&ペイ」のように店舗独自のモバイルオーダーサービスを導入している店舗もあれば、既存の「事前注文システム」をカスタマイズして導入している店舗もあります。
店舗独自のモバイルオーダーサービスを導入するとなると、開発する時間とコストがかかります。「事前注文システム」であれば既存のシステムなので比較的安価に導入可能です。「事前注文システム」の導入には、アプリケーションのインストールの要不要、事前決済が可能かどうか、既存のWebサイトに導入可能かどうか、システム利用料の仕組みなど。さまざまな特色を持つシステムがある中で、自社店舗に合わせた比較検討が必要です。店舗の規模、サービス提供方法から適切な「事前注文システム」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
https://cotol.jp/
【まとめ】「モバイルオーダー」の広がりと今後の可能性について
本記事の要点は下記の通りです。
- 「モバイルオーダー」を導入すると、店舗運営の効率化、人と人との接触を避ける、テイクアウト需要の取り組み等のメリットがある
- 2020年以前から「モバイルオーダー」を導入していた店舗もあるが、2020年になり認知度と利用頻度があがった
- 「モバイルオーダー」という仕組みを導入するだけでなく、商品や容器開発をすることにより、テイクアウト需要に対応しようとしている
- モバイルオーダーシステムの自社開発だけでなく、「事前注文システム」のカスタマイズをすることでさまざまな店舗で「モバイルオーダー」の導入は可能
今後もさまざまな店舗でモバイルオーダーシステムの導入が進むと同時に、お客様のモバイルオーダー利用率もさらにあがってくるのではないでしょうか。
「モバイルオーダー」も事前予約の形態の1つと言えます。2021年も「予約」はさらに変化していくのかもしれませんね。