2020/04/01

予約は未来の約束~ビジネスを成功させる理想の予約とは~(前編)

今では当たり前のように使われるようになった「ネット予約」。スマートフォンの普及により、ネット予約の利便性は一層高まっています。 しかし、手軽に予約ができるようになった一方で、近年ではドタキャンによる店舗被害など、予約によるトラブルも注目を集めるようになりました。 予約は顧客との接点でありコミュニケーション・チャネルとして予約のあり方も多様化してきています。多様化する予約を経営にどのように活用し、利益を生み出していくか。学術、ビジネスマーケティング、予約の現場それぞれの視点から予約の可能性と理想について語りました。

メンバー紹介

中谷淳一(関東学園大学経済学部 准教授)

2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

加藤高士(株式会社ビジネス・アライアンス 代表取締役)

様々な企業へCRMの導入支援を経て2012年4月株式会社ビジネス・アライアンスを設立。20年以上にわたり企業へマーケティング活動の支援を行う。マーケティングの視点から、予約ラボを通じて予約の可能性について研究を行う。

永田大助(株式会社リザーブリンク ChoiceRESERVE責任者)

リザーブリンク創業メンバー。創業当初は営業、顧客サポート、製品企画、サービス開発などすべてを一人でこなし、製品と会社の成長を支えてきた。現在もクラウド型予約管理システム「ChoiceRESERVE」を通じて、様々な業種や業態の予約システム導入・運用について企業支援を行う。

星野陽介(予約ラボ所長)

予約ラボ所長。2012年にリザーブリンクに入社し、3000件以上の予約管理の課題解決に関わる。ChoiceRESERVE事業部責任者を経て、2018年より予約ラボ所長として、利用者と事業者双方の視点で「予約の知見」と「サービスの現場」を研究・発信中。

予約は身近すぎて意識されない?

永田大助(株式会社リザーブリンク ChoiceRESERVE責任者)

永田予約ラボのリニューアルということで、本日は、「予約」をキーワードにしてディスカッションできればと思っています。皆さん、よろしくお願いいたします。

 早速ですが、私は15年以上予約の現場に携わってきていますが、「予約」と一口に言っても、利用者から見た予約と事業者から見た予約のイメージは全く違うと常々思っています。

 つまり、「予約」という言葉の定義が曖昧なので、今日は中谷先生に何かかっこいい定義をして欲しいなと思っています。

中谷「かっこいい定義」ですか(笑)、いきなり難題ですね。

永田弊社が提供しているサービス「ChoiceRESERVE」はいわゆる「予約システム」なんですが、何か違うワードを作りたいと思っています。予約システムの「予約」とは、お客さんがポチッと画面をタップするワンアクションを指しているだけで、その前後にあるシステムのおもしろさを伝えきれていないことがもどかしくて。

 たとえば、リソースを管理していくようなツールなので、リソースマネージメントシステムとか。

中谷なるほど。略して「RMS」みたいな感じでしょうか(笑)。CRMとかSFAとか、最近ではRPAでしょうか。経営の領域でトレンドが生じるとき、常にそこには新しい言葉がありますよね。

 「予約」という言葉そのものは誰でも知っていますが、ビジネスとして可能性を広げていく、新しいトレンドを作っていくために、新しい言葉で定義していくことは「あり」かもしれませんね。

 その場合、「予約」という消費者の行動に対しての最適なシステムとなってしまうと、すごく分野が限られた話になってしまいますよね。「予約マネジメント」や「予約マーケティング」などとして、領域を広くした話にすれば、関心を持ってくれる人が多くなるのではないかと思います。

星野確かに、ECとかSFAと言われても、分かる人しか分からない。でも、「予約」なら5歳の子でもわかるんですね。予約するという意味も分かる。勝手に覚えて使っているんですね。

加藤予約は、リソースマネジメント、リソース最適化という視点がありますが、あくまでも事業者目線での言葉ですよね。その表現だと、そこにはどのようなユーザーがいて、そのユーザーにどんなメリットをもたらすか?が見えてこない気がします。

星野ユーザーが情報を欲しい時に用意されている状態が、ユーザーへのメリットの一つですよね。例えばサービスを予約するときに、ユーザーが空き状況を一目でわかる状態は、店舗のリソースが見えているということですから。

加藤そうですね。リソース最適化から、サービスの「見える化」まで表現できるとユーザーメリットが明確になりますね。加えて事業者も、土日のニーズが高いから、ちょっと人員を厚めにしておこうとか。といった経営判断の材料にもなりますよね。

 弊社は企業のマーケティングやリスティング広告を支援していますが、クライアントの中にはChoiceRESERVEを潜在的に必要としている企業が少なからぬ割合で存在します。ところが、こうした企業に「予約が集中して困っているのなら、分散させるのに最適なツールがありますよ」と説明しても、反応が薄い。「電話やLINEで足りている」みたいな感じで、予約システムという解決策にまで行きついてないお客さんが多数いるのを目の当たりにしています。

中谷淳一氏(関東学園大学経済学部 准教授)

中谷顕在化はしていなくても課題を抱えている店舗や企業に対して、「実はこれで解決できますよ」と提示したところで、響かないということですね。だとすれば、彼らにとっての「入口」、響く言葉は「予約」ではないんですね。

 経営資源の管理や最適化に課題を持っている部分をじわじわ突ければ良いと思うのですが、予約予約で押していっても、ChoiceRESERVEに関心を持たせるのは難しいと。

永田「予約システム」とは予約を増やすシステムだ、と思われがちです。確かに集客をメインにした予約システムもあるので、予約システムを「集客してくれるシステム」と思っている企業や店舗では、ChoiceRESERVEを導入してみたものの「やっぱりいらなかった」という結果になる例がありました。ChoiceRESERVEを導入してうまくいくケースは、そもそも予約が発生していて、予約の対象になるサービスのリソース管理に課題があることを自覚している場合。そこがないとシステムを導入しても長続きしません。

星野基本的には供給(サービス)に対して需要(予約)が上回っている店舗や企業ということですね。だからこそリソース管理が必要だと。

永田店舗や企業が予約システムを検討する際、一般的な問い合わせフォームやGoogleカレンダーなどと何が違うのかとよく質問されます。「予約システムは、リソースや在庫の管理ができます」と答えているのですが、そうなると「予約システム」と呼ぶこと自体に違和感を覚えています。在庫を厳密に管理する必要がなければGoogleカレンダーでもいいし、問い合わせフォームでも良いと思います。しかし本来、我々はリソースや在庫管理を最適化したいと考えている皆さんに対応していると思うので。

中谷「予約システム」という言葉に対する考え方や理解を変えていかなければいけないのかも知れませんね。啓蒙していくといったほうが適切かもしれませんが。マーケティングと聞いて、「広告のことですよね」とか「つまり営業ですよね」と言う人がいるのに似てますね。

ビジネスにおける予約の可能性について

加藤高士氏(株式会社ビジネス・アライアンス 代表取締役)

加藤そもそもですが、やはり予約って面倒くさいですよね。自分の全ての行動を予約する人はいませんから。予約とは端的に言えば未来のことを約束する取引ですが、ひょっとしたら予定が変更になるかも、と考えたり、まだ先のことは分からないと思ったり。あるいは、ほかに良いサービスがあるかもしれないから今は予約するのをやめておこうとか、そんな心理が働くのかな?と思うんです。

永田予約に対する心理的ハードルについては逆のこともあって、実際の現場ではむしろ、行かないのにとにかく仮で押さえてドタキャンや無断キャンセルしてしまうのが問題になっていますよね。でも、面倒くさいという心理は確かにありますね。

加藤企業側の視点で見ると、予約とはある意味新たな取引の形態だという定義をしたほうがいいのかなと感じています。取引と考えれば、予約する側とされる側のメリットがイコールになっているのが最も好ましい状態です。現在は誰でもいいから予約してくださいとなっていて、ユーザー側のメリットが少ないのではと感じます。これはあまり好ましくない状況です。

 ですから、店舗側に予約の本来のメリットや予約システム導入の目的をきちんと認識してもらう必要があります。在庫の整理や事前準備はもちろん、人が足りないのであれば配置できたり、将来の売り上げが見込めるから何かを仕掛けようかと考えたり。顧客の囲い込みも当然できますし、テストマーケティングもできます。

 つまり、条件付きの特別サービスを打ち出して、上得意客と継続的に付き合う仕組みが「予約」なのではないかと。

中谷飲食店などは、これまで以上に予約に力を入れてもいいですよね。たとえば航空会社は、チケットを前もって予約すれば安くする仕組みを導入し、それでいかにして最大の利益をあげられるかを科学してきた歴史があります。収益構造が違うといえばそれまでですが、飲食業界でそこまでやっているところは少ないですよね。予約しても特にインセンティブがなければ、人気店でもなければあえて予約する必要もないし、当日直接行ってもメニューに何も変わりがないのなら、予約せずに当日決めれば良いとなりますよね。予約をもっと科学して経営に取り組もうという人が飲食業界には少ないのかもしれません。

 ただ、それは飲食業界が供給過多の傾向にあることも理由かもしれません。予約しなくても代わりの選択肢がたくさんあるから、消費者側に予約の必然性が生まれにくい。そういう意味では予約に向いていない業界かもしれませんね。業界ごとの予約のあり方、これは今後、予約ラボでの研究テーマになるかもしれませんね。

星野人気店のトップ層の人たちは、キャンセル問題に取り組んでいます。クレジットカードの情報を先に受け取ってから予約を引き受けるので、予約したのに当日姿を現さないノーショウが発生しないとか。

中谷クレジットカードを予約時に登録する仕組み、日本の飲食業界では定着していないですよね。人気店なら消費者も「それでも予約したい」となるでしょうが、大抵はそれなら他のお店を予約するとなってしまいますからね。店舗と消費者が対等にリスクを負うのが理想的ですが、飲食業界は競争が激しいので、店舗側が「ノーショウ」というリスクを負わざるを得ない状況です。これは店舗側がリスクを負いすぎている状況で、バランスを欠いていると思います。

 飲食業界以外、例えばエンターテイメント業界では、人気アーティストのコンサートなどは完全にユーザー側がリスクを負いますよね。当日行けなくなったらそれで終わりです。後日払い戻しなどはしてくれませんが、それが当然とされています。リスクをどちらが追うかは、予約を考えるうえでポイントになりそうですね。

 宅配業界で近年問題となっている「再配達問題」がありますが、これも「ノーショウ」と似た構図ですね。宅配便の到着時刻を指定したのに不在で再配達になる。これは、ユーザーがリスクのない予約をしているから。本来は1回キャンセルしたのだから消費者側が再配達のコストを負担しなければならないのに、なぜか宅配業者が再配達コストを負担しています。再配達を有料にして消費者側がリスクを負う仕組みになったら、再配達問題は大きく解決するのではないでしうか。再配達による環境負荷の低減などの大義を掲げて、業界全体で取り組まなければならない問題です。

星野陽介(予約ラボ所長)

星野信用スコアのように、この人は予約してもキャンセルする人だというのを明示するのもありかもしれませんね。予約してもあまりインセンティブを受けられないとか。

中谷「信用」は予約を探求していくうえでキーワードになりそうですね。考えてみたら、昔ながらの商売、お店は、お客さんによって提供するサービスが違いますよね。全てのお客さまを一律で同じようには扱いません、信用あるお得意様には他のお客さまより特別な対応をします、と。

 お客さんの信用をどう表すか、数値化するかは難しいところですが、消費者心理と事業者のニーズをうまくシステムが反映してくると、予約システムを使う人がもっと広がるのではないのかなと思います。

 

後編へ続く

著者:Keiko Ogino

予約ラボでは、共同研究や予約に関する調査を行っています。

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