必要な機能から検討する、予約システムの作り方と導入方法【無料で使えるツールもあり!】
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せっかく来店してくれた顧客を待たせないことは、顧客満足度向上の重要なポイントです。またストレスを抱えた顧客と対応することはスタッフの焦りも招き、サービスレベルの低下も招きかねません。
お客様の都合に合わせてショップの空き時間を押さえることができる予約システムは、双方にとっても便利なツールです。電話予約だけだと接客中は対応できません。お客様に何度も電話をかける手間を強いてしまうことは顧客離れの要因にもなります。
24時間、365日受付可能な予約システムはショップにもお客様にも便利なシステムです。予約時に来店目的や相談内容を入力可能なフォームを設置しておけば、ショップでもあらかじめ準備をしてお客様を迎えることができます。
事前予約を実施するサービスが当たり前になってくれば、ツールの高機能化や使いやすさが競争力の鍵にもなり得ます。
本記事では、予約システムに求められる要件をまとめつつ、どのようにして理想的な予約システムを導入していくかを検討し、解説します。
※この記事は、「予約の知見」と「サービスの現場」を共創し、そこに眠る価値を発見・創造していく、日本で唯一の予約研究機関【予約ラボ】が監修を行っています。
目次
改めて考える予約システムの役割とは?
予約システムはサービスの空き時間をWebサイトに提示し、顧客が選んだ時間に予約を入れ、随時空き状況を更新してゆくことが役割です。
予約システムでも1対1でのサービス(病院、面談など)と1対多のサービス(コンサート、講習会など)のような営業形態が異なる場合はそれぞれ別の機能が求められます。それぞれのシチュエーションを紹介し、どのような予約システムが適当であるかを紹介します。
1対1対応の予約システム
美容院や歯科医院などサービス提供者と顧客が1対1で対応する業種用の予約システムです。利用者は数日分の空き時間を把握し、自分の都合のよい時間帯に予約をいれます。システムは予約完了のメールを返信します。
1対1の予約システムでは、予約時に利用者の訪店理由をあらかじめ入力する機能を持っているものもあります。美容院やネイルサロンの予約では訪店目的や要望を事前に把握することで、あらかじめ接客に必要な準備をしておく、所要時間や金額の目安を通知することもできます。
1対多対応の予約システム
セミナーの出席、ヨガスタジオ、深夜バス、ホテルの宿泊など特定の日付、時刻に同じサービスを多人数に提供するための予約システムです。定員に対しての埋まり具合を顧客に開示して、参加の可否を希望者に公開します。
人気のサービスはすぐに定員に到達してしまうので、空き状況をリアルタイムで速やかに更新する必要があります。
1対1は個々人のニーズのヒアリングなど、予約+αの機能も求められますが、1対多のシステムはサービス内容が画一的なので低コストでシステム構築が可能です。
必要な予約システムの機能を整理する
予約システムに必要な機能は業態やサービスごとに異なります。予約システムに求められる主な機能を紹介します。
予約受付・管理機能
空き状況を公開し、予約を受け付けたら空き状況を速やかに更新することが最低限必要な機能です。店舗側にはいつ、どのような目的で予約が入っているのかをわかりやすく確認する機能も必要です。
予約システムを導入することで、人的リソースが節約でき24時間対応できることは大きなメリットです。スタッフによる予約管理では入力ミスや聞き間違いなどのうっかりミスのリスクもありますが、そのようなリスクも軽減します。
予約時の来店目的のヒアリング、キャンセルや時間変更など予約時に知っておきたい情報は店舗によって異なります。ニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ機能も予約システムに求められる機能です。
決済機能
会員制で利用料がかかる場合など予約と同時に決済ができると便利です。
例えば自動車教習所やスポーツジム、英会話スクールなどの予約です。予約と同時に決済を行うことで当日の接客がスムーズになります。また事前決済は無断キャンセルの抑止にもなります。
利用1回分の決済だけでなく、回数券購入だと割引があるなど決済機能を工夫することで利用促進と顧客の利便性向上の両立を狙う販促施策に結びつけることもできます。
クレジットカードだけでなく、電子決済など様々な支払い方法を用意することも顧客満足につながります。
顧客管理機能
氏名、年齢、住所、来店履歴、購入商品(利用サービス)などの顧客情報を蓄積し、マーケティングに活かせるような顧客管理機能も予約システムに求められる機能です。
蓄積されたデータをどのように利用するかは業種によって異なりますが、ターゲットを絞った販促メールの送信やどのようなサービスが支持を得ているかといった分析などに活用することができます。
セキュリティ対策
顧客データをPCに保存する場合は、セキュリティ対策にも目を向けましょう。セキュリティソフトのインストールと更新は効果が見えにくく、継続して費用がかかるので怠りがちになっているケースもありますが、万が一に備えた対策を実施しましょう。
内部からの流出を防ぐために、従業員ごとにアクセス権を分けるなど運用上の対策も重要です。
様々な予約システム導入の方法 – 自社内予約システムの作り方
予約システムの導入には様々な方法があります。またサイト作成、システム運用について導入側がどこまで熟知しているかによっても最適なサービスは変わります。
クラウドサービスを活用
自社のWEBサイトを立ち上げるには、サービスを稼働させるためのサーバー、インターネットと自社システムを結ぶネットワーク機器などの高額なハードウェアが必要で、多額の初期投資が必要です。
近年、その問題を解決するクラウドサービスが広まりつつあります。必要なインフラとソフトウェアを全てクラウド上に用意し、ユーザーに提供しています。
クラウドサービスではネットワークインフラだけでなく、クラウドサーバー上で利用できる様々なソフトウェアも提供されています。ソフトウェアの開発環境まで提供されているので、それらを活用してWEBサイトや予約システムを作ることができます。
従量課金制を採用しているサービスや無料お試しを実施しているサービスも多く、低コストで導入できる点が大きな強みです。
また急激なアクセス増加が発生した際に柔軟に対応できることもクラウドサービスのメリットです。自社サーバーならパンクしてしまうようなアクセスの大量集中があっても、クラウドサービスではアクセス状況に合わせて自動的にサーバースペックを変更する仕組みを持っているものもあります。
ブログシステムに新たなプラグインを導入
ブログのためのシステムとして使われることが多いWordPressですが、本来はWEB上に様々なコンテンツを構築するCMS(Contents Management System)です。
WEB作成やCMSについての知識が必要ですが、プラグインを活用することで予約システム機能を追加することができます。
ホームページ作成会社に相談し適当なシステムを組み込んでもらう
ホームページ作成を請け負っている企業にサイト作成を丸ごと依頼するという手段もあります。多少のプラグインやクラウドサービスの使用を前提に要件定義をまとめることで、制作コストを抑えることもできます。
システム開発企業に開発、導入を委託する
ホームページ作成会社への依頼に似ていますが、クラウドサービスのオプションやCMSのプラグインなどの既製品にこだわらずに必要な機能を備えたシステムを0から開発する方法です。WEBサイトのデザインや機能、予約システムに求める機能に特殊なニーズがある場合は検討してみてもよいでしょう。
費用は他の方法よりも高くなる可能性があるので、開発企業とよく意見をすり合わせ、要件定義を明確にしておくことが大事です。
公開されている予約システムをWEBサイトに組み込む
WEB上で公開されている予約システムを利用し、自社のWEBサイトに組み込みます。インターネット上で利用するオンライン型のシステムが多く、これもクラウドの仲間ともいえます。
ただ全てがクラウド型ではなく、自社のPCにソフトをインストールするオンプレミス型の製品もあります。
特定の業種向けのシステムもあるので、使いやすいシステムを探してみましょう。
個人利用やアクセス数が少ない場合は無料、商業目的やアクセス数が多い場合は有料というような料金設定を採用しているケースがあります。
汎用クラウドサービスの機能を利用して予約システムを作る
AzureやAWSなどのSaaSサービスを既に利用している場合、それらを使って予約システムを作れないかと検討している方もいらっしゃるかもしれません。AzureやAWSは、数百種類にも及ぶ様々なジャンルの製品がクラウド上で提供されており、業種や業態・用途に特化したアプリケーションだけでなく、アプリケーションやシステムをイチから制作できる開発環境なども用意されている汎用的なクラウドサービスであるからです。
これらの汎用クラウドサービスを利用して予約システムを作ろうとした場合の、概要とメリット、デメリットを紹介します。
Microsoft Azureの予約システム
Microsoft Azureは、インフラからソフトウェアまでの全てをクラウド上で処理する統合サービスのひとつです。Azure上で利用できる200以上の製品が用意されており、任意の製品を組み合わせることでニーズに合わせたシステムを作ることができます。
残念ながらAzureが持っている製品の中には予約システムそのものは含まれていません。データベースや分析ツール、開発環境などの製品を利用して予約システムを作る必要があります。
自社に開発スキルをもった人材がいない場合にはAzureの導入や開発を請け負っているシステム企業に開発を依頼することになるので、手軽な方法とは言えません。開発の自由度や将来的な運用コストまで含めると比較的安価に高性能の予約システムが作れますが、個人や小規模ビジネスでの利用にはオーバースペックかも知れません。
▼Microsoft Azure提供サービスの具体的なラインナップ・内容については、こちらの公式サイトをご覧ください。
https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/
AWSの予約システム
AWSはネット通販で有名なAmazonが提供しているクラウドサービスです。利用できる製品数はAzureより少ないのですが、2006年サービス開始という長い提供期間実績、およびシェアNo.1の実績による豊富な活用事例がAWSの大きなメリットとなっています。無料で使えるサービスも多く、小規模のシステム構築であれば低コストで導入、運用ができます。
AWSの製品群に予約システムは含まれませんが、AWSを使った予約システムの活用事例も多く、AWSで利用できる予約システム(リザエンonAWSなど)を販売している企業もあります。
▼AWS提供サービスの具体的なラインナップ・内容については、こちらの公式サイトをご覧ください。
https://aws.amazon.com/jp/solutions/?hp=tile&tile=solutions
WordPressのプラグインを利用して予約システムを作る
ショップサイトやサービスサイトなど、顧客へ公開するサイトを既にWordPressを活用して作成している場合、プラグインの追加で予約システムを作ることができます。
おおまかな手順、機能概要、メリットデメリットを紹介します。
WordPressのプラグインとは
プラグインとは、何らかの既存アプリケーションやシステムに対して、拡張機能を追加できるプログラムのことを指します。WordPressの場合も、対応したプラグインを使うことによって、元々持っている機能以外の新たな機能や仕組みを追加することができます。
WordPressは利用者の多いCMSで、カスタマイズ性に優れています。そのためオリジナリティの高いWEBサイトを構築することができます。また多くのプラグインがサードパーティーやWordPressユーザーによって開発されています。
プラグインでできること、できないこと
予約システムを追加するプラグインは多数存在します。海外で開発されたものが多い傾向があります。高機能なプラグインも存在しますが、公式サイトが英語版しかないケースが多く、使い方を理解するのに苦労するかもしれません。またプラグインによっては機能は優れているものの日本語に対応していないものもあります。
セキュリティ面の不安もあります。プラグインには大手企業が開発したもの、ユーザー有志が作成したものなどがあります。開発が古いものやアップデートが止まっているものは最近のセキュリティホールに対応していない可能性もあります。
プラグインはWordPressのセキュリティ保証外です。インストールが自己責任であることを理解し、慎重にツールを選びましょう。
システム開発企業に依頼して予約システムを作る
この方法のメリットは、自社ニーズに最適な予約システムが出来上がることです。デザインや機能など理想の予約システムを作ることができます。
デメリットは費用と開発期間です。全く下地のない状態で新しいシステムを作るには相応の工数がかかります。工数が増えるほどに費用が増加し、開発期間も長くなります。
このデメリットを少しでも減らすなら、既存のサービスやパッケージを利用して不足する部分を開発することです。
例えば大枠はWordPressを利用し、プラグインを新規開発する。マイクロソフトAzureのようなクラウドサービスのデータベースを利用して、ユーザーインターフェースを新規に開発するといった方法です。
既存の予約システムを組み込んで予約システムを作る
予約システムのサービスは様々な企業から提供されています。それらと自社サイトと組み合わせて自社の予約システムとして利用します。
予約システムによっては、自社サイトへ埋め込みができないこともあります。その場合、予約時にURLが変わるので画面遷移時にアラートを表示するなどの気配りも求められます。
予約システムアプリtol(トル)
スマホアプリで簡単に自社用の予約サイトを作ることができる、シンプルさを売りにしたスモールビジネス向けの予約システムです。自社のサイトやSNS上に自社用予約システムへのリンクを貼り、tol上に作られた自社用サイトで予約を受け付けます。
予約受付や自動メール返信などは基本的な機能は無料プランでも利用できます。顧客管理やオリジナルの予約メニューなどのカスタマイズが必要な際には、3,980円/月のビジネスプランへの移行が必要です。
▼公式サイト
https://tol-app.jp/
SELECTTYPE(セレクトタイプ)
様々な業態向けの予約テンプレートが多数用意されており、テンプレートを選び、いくつかの設定を行うだけで自社向けの予約サイトが完成します。スポーツジムやヨガ教室で便利な登録済み会員限定の予約システムが作れる点もユニークな機能です。他にも決済機能やgoogleカレンダーとの連携やWordPressへの組み込みなど豊富な機能を揃えています。
無料プランでも多くの機能が利用できますが、予約受付日数7日以下までに限定されるなど制限が厳しいので、1,650円/月のベーシックプランか3,300円/月のプレミアムプランへの利用がおすすめです。
予約システム機能、フォーム(アンケートやメールフォーム、診断テストなど)機能、ホームページ作成機能が別々のプランになっており、いずれもベーシックプランで1,650円/月の費用がかかります。不要な機能にまでコストをかけたくない方にはありがたいプランです。
全ての機能を利用する場合はパッケージプラン(ベーシックで3,300円/月)がおすすめです。
既存ホームページへの埋め込みは前述のWordPress以外はできませんが、上位プランにはホームページ作成機能までついているので、全てをSELECTTYPEに任せてしまうこともできます。
▼公式サイト
https://select-type.com/
Airリザーブ
リクルートが開発した1対1、1対多のどちらにも対応できる汎用性の高い予約システムです。わかりやすい画面インターフェースが特徴でPCに不慣れな方にも使いやすいシステムです。無料プランもありますが機能制限が多いので、本格的に使うのなら5,500円/月のベーシックプランがおすすめです。
同社製品である決済や会計を支援するAirペイやAirレジと連携させることで、ビジネスに関わる作業をまとめてスムーズに処理することもできます。自社サイトに組み込むことも可能です。
▼公式サイト
https://airregi.jp/reserve/
ChoiceRESERVE(チョイスリザーブ)
2010年からサービス提供をスタートし、4,000件以上の導入実績を誇る予約システムの老舗サービスです。多くの実績を元に磨き上げられた機能と使いやすさは数ある予約システムの中でもトップクラスといってよいでしょう。
使いやすさだけでなく、分析や外部システムとの連携など拡張性の高さも、ChoiceRESERVEの特徴のひとつです。マーケティング、販促、高度な顧客管理を行うセールスフォースとも連携できます。店舗運営初心者から本格的なマーケティング活動まで支援することができます。使い込むほどに便利さを実感することができるシステムです。
汎用性も高く、複数店舗の予約をまとめて管理したり、セミナーなどのイベント管理も可能です。
初期費用33,000円、月額22,000円から利用可能であり、システムのポテンシャル、導入や運営についてのサポートも手厚く、おすすめの予約システムです。自社ニーズに合わせてChoiceRESERVEのサービスプランや運用方法をサポートするエンタープライズプランも用意されています。
▼公式サイト
https://yoyaku-package.com/
将来性も勘案して最適な予約システム導入を!
予約システムは様々な業界で欠かせないサービスツールになりつつあります。予約システムの活用によって、自社業務の簡素化と顧客マネージメント、お客様の利便性と満足度向上の両面を満たすことが可能になります。
予約システムは、利用者の増加や提供するサービスの多角化に合わせて進化させていく必要があります。今は小規模店舗だから、シンプルで無料のものを選ぼうという考え方もあります。しかしビジネスの成長に合わせて、機能や規模が拡張できる予約システムをあらかじめ準備しておくという考え方もあります。
広い視点を併せ持って、最適な予約システムを検討しましょう。