食品製造会社の工場見学の予約についての調査
調査
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家族連れをはじめ、レジャーとしても人気の高い「工場見学」。なかでも、食料品・飲料品の工場見学は、日々の暮らしで身近に感じているものであることから注目されることが多いようです。
今回は、国内の食品製造会社を対象に、工場見学の有無や、その予約について調べてみました。
・調査日:2024年5月30日(木) |
調査の対象としたのは、日本経済新聞企業一覧に掲載されている食品製造会社191社です。
▼参考:
https://www.nikkei.com/nkd/industry/complist/?n_m_code=051
前提として、工場見学を常時受け付けている企業をカウントし、「博物館」「ミュージアム」「資料展示室」といった施設で見学を受け付けているケースも含めました。ただし、バーチャル工場見学のみの場合は対象外としています。
目次
3割近くの企業が工場見学を実施
今回調査対象とした食品製造会社191社のうち、工場見学を実施している企業は53社(28%)となっていました。この53社のうち、見学者の対象を団体などに限定している企業は13社(25%)で、そのうち、学校に限定している企業は8社、とくに団体の指定をしていない企業は5社という結果でした。
工場見学を実施する企業の8割以上は予約制
工場見学を実施している53社のうち、予約が必要と明記されている企業は44社(83%)でした。予約不要の3件については、いずれも「博物館」「ミュージアム」などの施設となっています(残りの6件は不明)。
また、工場見学の予約が必要な44社のうち「完全予約制」と明記している企業は9社で、ほかは応募による「抽選制」での予約が1社ありました。「完全予約制」と明記している9社のうちの8社は予約開始日が指定されており、それぞれ見学希望日の3か月前からが2社、2か月前からが2社、1か月前かが3社、半月前からが1社で、随時予約を受付しているのは1社のみでした。
半数以上がウェブ予約を採用
工場見学の予約が必要な44社のうち、予約方法にウェブを含むものは24社と、半数以上がウェブ予約を採用していました。ウェブ予約の場合は、カレンダーまたは日程選択の項目で予約可能日、予約可能枠数を予め知ることができる企業が多数となっています。
食品製造会社の工場見学事例
ここからは、今回の調査対象となった企業のうち、いくつかの事例をピックアップして、その工場見学の内容や予約の内容についてご紹介します。
①株式会社湖池屋
総合スナック菓子メーカーの株式会社湖池屋では、九州阿蘇工場製造ライン見学とマイポテチ作り体験をすることができる、ガイド付きツアーを開催しています。
工場見学では専用の見学コースが設置されていることが多いですが、こちらは直接製造現場内に入って近くから製造ラインを見学するため、安全確保の観点から対象を小学4年生以上に限定しているとのこと。製造現場内には、原則すべての私物の持ち込みが禁止されており、服装についての注意事項も専用ページに詳しく記載されています。
工場見学は抽選制となっており、会員登録の上、ウェブで申し込みできます。予約受付は体験希望月の前々月の5日から20日までの間となっており、当選の可否は当選者にのみ体験希望月の前月1日までにメールで連絡されます。
②山崎製パン株式会社
パンをはじめ和洋菓子や製菓も販売する山崎製パン株式会社では、高校生の進路の参考として、応募前の職場見学会を「工場見学」として行っています。製造ラインや従業員の働く様子を間近で見学し、働くイメージを描いてもらうことが狙いとのこと。
高校の夏休み期間に合わせて全国の各事業所で開催されており、工場見学だけでなく、社内設備やサークル活動、福利厚生などの話が聞ける質問タイムも設けられています。
申し込みは、参加希望の事業所に学校の先生を通じて問い合わせるという形になります。
③アサヒグループホールディングス
大手飲料メーカーのアサヒビール株式会社では、リアルとオンラインで工場見学を楽しめる「アサヒミュージアムツアー」を実施。茨城と大阪に、それぞれ体験型ミュージアムがあり、双方の施設ではリアルならではの試飲などとともに製造工程やブランドの世界観を五感で体験できます。各体験型ミュージアムでのツアーは有料で、いずれもウェブ予約と電話予約が可能です。
オンラインでは360°の映像「スーパードライVRファクトリーツアー」と銘打つバーチャル工場見学も可能。VR専用ゴーグルや簡易型スマホ対応VRゴーグルを活用したVRモードで鑑賞することもでき、より迫力ある映像ツアーが楽しめます。
④日清オイリオグループ
油脂・油糧と加工油脂事業を展開する日清オイリオグループ株式会社では、横浜磯子事業場において、完全予約制で工場見学を実施。見学専用のバスで工場敷地内を巡回するほか、展示施設「ウェルネスギャラリー」において食用油の製造工程を紹介しています。原則として小学生以上、8〜20名までの団体のみが対象となりますが、観光バスで来場の場合に限り、バス1台分の乗車人数まで入場可能とのことです。
通常の工場見学は電話受付のみですが、7月下旬から8月末までの期間に限り、ウェブ予約受付のみで少人数を対象とした「夏休み工場見学会」が実施されています。
まとめ
食料品・飲料品の工場見学は、普段から馴染みのある製品の製造工程を学べるほか、試飲や試食などができる施設もあるため、レジャーとしても人気です。今回の調査対象では、工場見学を実施している企業は3割程度でしたが、多くの工場見学では事前予約制が導入されており、そのうちの半数以上はウェブ予約を採用していました。また、見学の対象を団体に限定している企業も4分の1ほどみられました。
実際の工場見学のほか、見学のための施設がある企業や、オンラインでのバーチャル見学を実施している企業もあり、工場見学によって自社ブランドの魅力を伝えようとする企業は多いと思われます。
実際の工場見学においては、試飲や試食を通じてより商品に対する愛着を深めることも期待できるため、今後も食料品・飲料品分野の工場見学における予約制は広がっていくのではないでしょうか。