ブッキングカーブとは|予約傾向の把握やレベニューマネジメントに活かそう
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「予約がなかなか埋まらない」「予約は埋まっても直前キャンセルが多く、結果的に稼働率が下がる」などで悩んでいませんか。
ホテルや旅館など宿泊施設や、飛行機、列車の搭乗券など旅行業で取り扱う商材は在庫の繰り越しができません。季節や施設周辺のイベントの有無など変動する状況を見ながら、予約を埋めるための戦略が必要になります。主に旅行業での経営戦略に有効なのが、ブッキングカーブの活用とレベニューマネジメントです。
この記事では今後の予約業の予約コントロールや経営に役立つ、ブッキングカーブやレベニューマネジメントについて解説します。ブッキングカーブが出せるツールも紹介していますので、ぜひ参考にしてください
目次
旅行業の経営を分析できる「ブッキングカーブ」とは
まずは、ブッキングカーブの概要と、ブッキングカーブからわかることについて解説します。
旅行業の予約傾向を可視化できるブッキングカーブ
ブッキングカーブとは、宿泊予定日までの予約ペースを把握できるグラフのことです。つまり「宿泊日の何日前に、どのくらいの予約が入っているか」を示すもので、ブッキングペースとも呼ばれています。リードタイムと呼ばれる、宿泊予約開始日から宿泊予定日までの間の予約数の変動を、折れ線グラフで表しています。
ブッキングカーブは予約ペースを把握できるだけでなく、予約傾向から施設の経営で重視すべきポイントも見えるのが特徴です。
たとえばブッキングカーブから「料金が安くて客室数が多い」と分析できる宿泊施設なら、回転を早くすることで稼働率を上げるための戦略を考えることが有効とわかります。「客室数が少なく料金が高い」と分析できる宿泊施設なら、高級感やプレミア感を売りにした戦略が効果的なため、ブランディングを考えるなどの対応をすることになります。
ブッキングカーブからわかること
ブッキングカーブから把握できる3つの情報やポイントを解説します。
ひとつめがOCC(稼働率)です。客室の埋まり状況の割合を指します。客室数100の施設で100室満室予約の場合は稼働率100%です。客室数100で50室のみ予約の場合は稼働率50%となります。
ふたつめがADR(平均客室単価)です。客室の料金が平均いくらで販売されているかの数値を指します。旅行業は、経営方法に後述のレベニューマネジメントが取り入れられている場合がほとんどのため、さまざまな状況や影響により客室単価が変動する仕組みとなっています。平均客室単価は、単価と予約の関係を把握するうえで重要です。
みっつめが、レベニューマネジメントで設定すべき単価やポイントです。旅行業では、必須かつ主流な経営方法としてレベニューマネジメントが取り入れられています。レベニューマネジメントのためのデータやポイントも、ブッキングカーブの中から把握できます。
次にブッキングカーブと深いかかわりを持つ、レベニューマネジメントについて解説します。
旅行業の経営手法として有効な「レベニューマネジメント」
レベニューマネジメントの概要や有益性、ブッキングカーブとの関係を解説します。
レベニューマネジメントとは
レベニューマネジメントとは、広義で「需要を予測することで適切な販売管理を行い、収益を最大化する」ことを指します。主に宿泊施設、航空業界などの旅行業の経営手法としてもちいられています。
宿泊施設の客室、乗り物の乗車券など旅行業における販売商品やサービスは「在庫の繰り越しができない」「販売数が限定されているため予測に応じた増減ができない」「キャンセルが発生すれば稼働率は下がる」などの特徴があります。そのため、あらかじめ予測した需要を元に商材の料金を変動させて、利益を最大限得るレベニューマネジメントが経営手法として有効です。
レベニューマネジメントの事例
レベニューマネジメントの代表的なふたつの事例を紹介します。
ひとつめが、イベントや季節で料金を変動させることです。たとえばオリンピック開催時は料金が高いなど、施設周辺での特定のイベントの有無によって料金が変動します。また、桜や紅葉シーズン、海開きシーズン、ウィンタースポーツのシーズンなど、季節に応じて旅行業の顧客ニーズも変動します。繁忙期と閑散期を設けて、同じ商材で異なる単価を設定するのもレベニューマネジメントの手法です。
ふたつめが、予約時期によって料金を変動させる事例です。旅行業の商材は、早く完売となってもキャンセルが発生することで稼働率は下がってしまいます。顧客が予約する時期によって料金が変動すれば、「早めに予約することで安く利用できる」「料金は高くなってもいいからギリギリでも予約を確保したい」というふたつのニーズを充足できます。具体的な事例としては、リードタイムが予定日に近づくに連れて販売価格が高くなっていく早割制度などがあります。
ブッキングカーブはレベニューマネジメントに欠かせない
レベニューマネジメントの実施には、お客さまの需要を正確に把握し、予測することが重要です。前年の同じ日や類似イベントの開催日周辺の予約状況などと比較して、予約を分析するうえでは、ブッキングカーブは有益なデータとなります。
レベニューマネジメントでは、将来的な利益向上のために、実際の収益と予測を比較することも重要です。収益が予測よりも低かった場合には、原因を考えて改善し、次回につなげるPDCAサイクルを回します。そのうえでも、ブッキングカーブは予測データとの比較がしやすく、経営の改善や利益の向上にもつなげられます。
レベニューマネジメントは、「ギリギリでも予約できた」「早く予約したら宿泊料金が安くなった」など、お客さまの異なるニーズを充足することも可能です。自社の顧客満足度の向上のほか、予約の余剰を防ぐことでオーバーブッキングの防止および有効活用にもつながります。
ブッキングカーブが参照できるツール3選
簡単、便利にブッキングカーブが参照できるツールを導入すると、レベニューマネジメントにも有効に活用できます。ブッキングカーブが参照できるツールを紹介します。
ANDPLUS(アンドプラス)
NBSホテルマネジメント株式会社が提供するレベニューマネジメント支援ツールです。ブッキングカーブは90日前から表示可能となっています。前年のブッキングカーブとの比較や、曜日または日付と合わせての一覧表示、予算との比較も可能です。個人、団体、団体+個人と予約セグメントでの切り替え表示もできます。
予約の動きを日ごとに確認できるオンハンド機能や、予約の急激な増減が見られた場合にお知らせしてくれるサマリー&アラートなどの機能を搭載。無料の試用もできます。
▼「ANDPLUS」公式サイト
https://www.nbs-management.com/andplus/
レベニューマネジメントツール
ダイナミックプラス株式会社が提供するレベニューマネジメント支援ツールです。ホテルや旅館、航空機や列車の乗車券など旅行業はもちろん、幅広い業種へのレベニューマネジメントが導入できるツールとなっています。将来の売上や客数の予測を元に、在庫の管理や予算、従業員のシフト管理などにも活かせます。
カレンダーダッシュボードでは、過去のブッキングカーブのほか、未来の日付をクリックすることで予測に応じた未来のブッキングカーブも参照できます。
▼「レベニューマネジメントツール」公式サイト
https://www.dynamic-plus.com/
メトロエンジン
メトロエンジン株式会社が提供するレベニューマネジメント支援ツールです。AIが最適価格を推奨する、競合施設の価格や周辺でのイベントなどのデータも一括管理できるなど、より効率的なレベニューマネジメントの実施につながる機能が搭載されています。
ブッキングカーブは予約データの分析ダッシュボードで参照可能です。部屋タイプなどの属性別でのブッキングカーブ表示もできます。
▼「メトロエンジン」公式サイト
https://metroengines.jp/
予約管理とブッキングカーブ参照を両立させよう
ブッキングカーブを出すと、レベニューマネジメントを踏まえた旅行業の利益を最大限向上させる経営につなげられます。ブッキングカーブを出せるツールなどを利用して、経営を有利に進めましょう。
ブッキングカーブを参照したうえでのレベニューマネジメントには、予測を踏まえた予約管理業務も必要となります。早割のお客さま、ギリギリでの予約を取りたいお客さまの機会損失とならないように、スムーズに予約を取れる予約システムの導入もぜひ検討してみましょう。
予約ラボでは、旅行業以外の価格設定にも役立つ基本的な考え方についての記事も公開しています。実務レベルにおける価格決定の「4つの視点」を解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
▼「価格設定に関する基本的な考え方」
https://yoyakulab.net/consideration/nakatani-column_06/