価格設定に関する基本的な考え方

2020/08/07

価格設定に関する基本的な考え方

前回のコラムでダイナミックプライシングについて取り上げました。

ダイナミックプライシングは、需要に応じて価格を変動させることですが、前回のコラムを書きながら「価格に関する基本的な考え方」を本コラムでお伝えしておいた方が良いなと思いまして、今回は「価格」がテーマです。

価格に関する基本的な考え方

経済学における価格は、需要と供給によって決まるとされています。需要が大きく供給が小さい場合は価格が上がり、逆の場合は価格が下がるという考え方です。ミクロ経済学で必ず学ぶ価格決定理論です。需要曲線・供給曲線、均衡価格といったキーワードがそれです。

需要と供給により価格が決まる事例として最も分かりやすいのが「オークション」です。売りたい人と買いたい人がいて、最終的にせり上がり方式で落札価格が決定します。需要と供給が一致した金額が落札額となります。

つまり、欲しい人がたくさんいれば、価格は釣り上がり、欲しい人が一人もいなければ、価格が付かない(売れない)こととなります。

需要と供給により価格が決まるということは、同じものでも価格が異なることがあることを意味します。また、需要により決定されるということは、時間によって価格は変化することになります。

利益を最大化するために、ダイナミックプライシングの考え方が多くの業種業界で導入されていますが、その考え方は、経済学における価格決定理論が前提にあります。

価格決定理論の詳細は、多くのコンテンツがインターネット上にあるので、そちらに譲るとしまして、本コラムでは実務的な視点で価格決定の考え方を紹介しておきたいと思います。

価格設定の3つの考え方

マーケティングにおいて、利益を創出するための唯一の変数は「価格」です。企業が利益を生み出すためには「価格設定」が最重要といっても過言ではありません。

予約ビジネスを考えるうえでも、価格設定の問題を避けて通ることは出来ません。

マーケティングの教科書を開けば、必ず「価格」に関する内容が解説されていて、価格決定の考え方は3つに集約されます。

その3つとは、

であり、さらに「市場の状況」を加味して決定していくと説明しています。

理論的なお話は教科書等を参照していただくこととして、今回は上記の考え方を実務視点で(なるべく)平易に説明してみたいと思います。

実務レベルにおける価格決定の4つの視点

価格設定の考え方を元にすると、価格決定ための実務的な視点は以下の4つになります。

それぞれについて、簡単に解説をしていきたいと思います。

視点1:コストに着目して決定する

製品の仕入や製造、販売にかかるコストを積み上げ、それに自社の利益を乗せ、価格を決める方法です。自社利益をどの程度乗せるかは十分な検討が必要ですが、コストの積み上げで決めていく決定方法は最も一般的です。製品・サービスに独自性がある場合や、高付加価値製品・サービスの場合に有効な方法と言われています。

小売業などでは、損益分岐点を越えてしまえば、単品毎の利益は度外視して価格設定をする(売りつくしセールなど)などもありえますが、基本的にはコストを鑑み赤字にならないよう価格設定をします。

視点2:同業他社との比較で決める

価格を決める際に、同業他社が設定している価格を参考にする方法です。これも当たり前レベルで実施していることかと思いますが、他社より少しでも安く売りたい場合や、他者と横並びの価格にしたい場合など、製品・サービスの差別化が難しい場合に有効な方法と言われています。

例えばトイレットペーパーやボックスティッシュなど、消費者が品質よりも価格を重視する商品などは、この視点での価格設定が多くなります。

視点3:商品の価値で決める

商品の原価や同業他社の価格とは無関係に、自社の商品・サービスの価値に注目し価格を決定する方法です。価格を決める上で最も理想的な価格決定の方法と言われています。唯一無二の製品・サービスを提供している企業はこの方法を取ることができます。

高級ブランドをイメージしていただければ、分かりやすいと思います。また、任天堂のSwitchや、ソニーのプレーステーションなど、他に代替するものが無い唯一無二の製品を提供している企業は、同業他社の比較などせず自社の定める価値で価格を決めることが可能になっています。

視点4:顧客のコスト(予算)で決める

顧客がこの価格で買っても良いだろうと考える金額を予想して価格を決定する方法です。消費者調査を実施して決めるのは、この視点を重視しての決定ですね。ただし、この方法は価格競争に巻き込まれる可能性が大きくあると言われています。

ここで留意すべきは「安ければ買ってくれるはず」という視点で考えないことです。製品・サービスについて、「これ以上高い価格では誰も買わない」という一線を確認することがポイントです。

理想的には、視点3で価格を決定することとされていますが、実務レベルでは、視点1と視点4を踏まえ、視点3で希望する価格を仮決定してから、視点2で調整し最終決定するのが一般的でしょう。

予約ビジネスにおいては、早期予約に対してどの程度の特別価格を設定するのか、需要が少なくなるときの割引価格をいくらに設定するかなどが実務的な課題になりますが、実際の需要を鑑みて、視点1に留意しながら視点4が重視して価格決定する傾向があります。

以上が、価格に対する基本的な考え方、そして実務的な視点となります。

まとめ

価格は需要と供給によって決まるというのが基本的な考え方ですが、コロナ禍で全体の需要が激減している業界などでは、価格を下げても当面、需要は回復しそうにありません。

予約ビジネスにおいても、需要が減少しているからといって予約価格を大幅に下げて無用な価格競争を起こしたり、需要の先食いをしてしまったりしては本末転倒です。

苦しい状況であるからこそ、消費者のニーズをいち早くとらえ、自社製品・サービスの付加価値をあげ、企業として利益を生みだすかというマーケティングにおける本質的な考え方に立ち戻る必要がありそうです。

 

<参考文献>
「コトラー、アームストロング、恩蔵のマーケティング原理」(丸善出版)

中谷淳一
中谷 淳一

関東学園大学経済学部 准教授
2001年筑波大学卒。株式会社ベンチャー・リンク、株式会社購買戦略研究所を経て起業独立。2011年3月、早稲田大学ビジネススクール修了(経営管理修士・MBA)。早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2015年4月より現職。専攻はマーケティング戦略、ブランド戦略。大学教員の立場から企業や自治体の支援を行い、経営理論の実践に積極的に取り組む。

予約ラボでは、共同研究や予約に関する調査を行っています。

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