コールセンターの稼働率とは? 適正に保つポイントや稼働率以外のKPIも解説
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コールセンターの運営に携わる場合、必ず付いてまわる稼働率という言葉。稼働率という指標についてあらためて詳しく押さえておきたい、と考える担当者は多いのではないでしょうか。
この記事では、コールセンターの稼働率の意味や計算方法、そして稼働率とともに管理したいKPI指標をご紹介します。この記事を読めば適切な稼働率を保ちコールセンター運営ができるようになりますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
コールセンターの稼働率とは
コールセンターにおける稼働率とは、オペレーターの稼働時間の中で顧客対応にかける時間の割合のことです。
オペレーターの疲弊度を把握する目的や、コールセンターの生産性を確認する目的で測定します。
稼働率が高いとオペレーターの業務負担が大きく、離職や応対品質の低下につながる可能性があります。一方で、稼働率が低いと生産性も低く、適切な人材配置ができていないと考えられます。
このように、高くても低くても問題が潜んでいる可能性が高い稼働率は、適切な目標値を設定し維持することが求められます。
稼働率の算出方法
稼働率を算出するときは、コールセンターの生産時間と非生産時間に着目します。
生産時間は顧客対応に費やす時間のことで、非生産時間は研修やミーティングなど顧客対応以外の時間を指します。
生産時間 | 顧客との通話や顧客へのメール、後処理など顧客対応に使用する時間 |
非生産時間 | ミーティングや研修など顧客対応以外の時間 |
基本的には、生産時間にオペレーターの待機時間を足したものを、勤務時間(休憩や非生産時間を含む)で割ると稼働率が算出できます。
稼働率を算出する式の一例は、下記のとおりです。
(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間)÷ 勤務時間 |
例えば、勤務時間が8時間で通話時間や保留時間、後処理時間、待機時間の合計が6時間の
場合、稼働率は75%です。
オペレーター個人の稼働率を測定できるのはもちろんのこと、勤務時間をコールセンター全体のログイン時間に設定すると、コールセンター全体の稼働率を把握することも可能です。
稼働率の適正値は80%~85%が目安
稼働率の適正値はオペレーターの疲弊度と生産効率とのバランスを考慮して、80%〜85%を目標ラインに設定することが多いです。
稼働率の目標設定の目安 | |
90%以上 | 危険ライン |
85%~90% | 注意ライン |
80%~85% | 適正ライン |
70%以下 | 調整が必要なライン |
稼働率が90%を超えると稼働率が非常に高く、オペレーターの業務過多が懸念されるため何らかの対策をしなければなりません。稼働率が70%以下の場合はオペレーターが余っていると考えられるので労働環境の見直しが必要でしょう。
コールセンターは、季節や曜日によって入電量が変わるので稼働率が大きく変動します。また、新人のオペレーターは研修時間が多くなるため、稼働率が低くなる傾向があります。
コールセンターの状況も踏まえて1ヶ月を通して稼働率が適正でない場合は、適正ラインに近づけるための施策が必要です。
稼働率が高いときに起こる問題点
コールセンターの稼働率が高すぎる場合は注意ラインや危険ラインに達することが分かりましたが、具体的にはどのような問題が起こるのでしょうか?
ここでは、稼働率が高いときに起こる問題を具体的に解説していきます。
オペレーターが疲弊して応対品質が低下する
稼働率が高くなると、オペレーターの勤務時間の多くが顧客対応に当てられることになります。顧客との通話や後処理など、休憩時間を削り対応している可能性があるでしょう。
その結果、オペレーターの疲弊や応対品質が低下することが懸念されます。例えば、声のトーンが低くなる、言葉遣いやマナーに気を配ることができないなどの品質低下が考えられます。
応対品質が低下すると顧客に与える印象も悪くなるため、顧客満足度の低下や企業やブランドのイメージ悪化につながるかもしれません。
一定の品質を担保してコールセンターを運用するためには、オペレーターが応対品質を意識できるゆとりの確保が必要です。
離職率が高くなる可能性がある
コールセンター業界は離職率の高い傾向がありますが、稼働率が高いとオペレーターの離職に拍車をかける可能性があります。
その理由としては、2つ考えられます。
1つ目は、業務が忙しく顧客対応に疲弊してしまうことです。コールセンターにより担う業務は異なりますが、クレーム対応やアウトバウンド対応では顧客から怒られたり長時間の会話が続いたりすることがあります。
充分な心持ちの余裕や休憩がなく難しい対応が続くと、心身ともに疲れ果て離職へとつながるでしょう。
2つ目は、研修やミーティングなど、専門的な教育のための時間が確保できていないと思われることです。稼働率が高いと非生産時間が少なく、充分な研修やコミュニケーションが取れてない可能性があります。
その結果、スキルアップや意思疎通ができないと思い離職を選択することもあるでしょう。
稼働率が低いときに起こる問題点
稼働率が高いときに起こる問題点が把握できたところで、稼働率が低いときに起こる問題点も気になるところです。
ここでは、稼働率が低いときに起こる問題点を解説していきます。
適切な人材配置ができていない
稼働率が低い場合は、オペレーターの顧客対応時間に割く時間が短すぎると考えられます。見方を変えるとオペレーターが余っている状態となるので、シフト管理や適切な人材配置ができていない可能性があります。
例えば、毎年7月は顧客からの入電が少ないというデータがあるにもかかわらず、通常稼働時と同様の人員配置をすると入電対応をしないオペレーターが増え稼働率が低下します。
場合によっては無駄な給与を支払っており、コールセンター運営費用の高騰や費用対効果の低下につながっているかもしれません。
適切な勤怠管理ができていない
稼働率を正しく算出するには、オペレーターの勤怠管理が欠かせません。勤怠管理が疎かになっていると稼働率が低くなることがあります。
例えば、オペレーターが適切な顧客対応をしていないと、通話時間が短くなり稼働率が低くなります。また、休憩の申告や勤務時間の打刻などにミスがあると、稼働率に影響を及ぼすでしょう。
稼働率とともに管理したい生産性に関するKPI
稼働率はコールセンターの生産性を管理するKPIだと解説しましたが、他にもコールセンターの生産性を管理するKPIとして「占有率」と「応答率」があります。
占有率 | オペレーターの生産時間の内で顧客対応に従事した割合 |
応答率 | コールセンターへの入電に対してオペレーターが対応できた割合 |
両者とも稼働率とともに管理したいKPIなので、詳しい概要や稼働率との違いをチェックしておきましょう。
①占有率
占有率とは、オペレーターの生産時間の内で顧客対応に従事した割合のことです。占有率は、生産時間を、生産時間に待機時間を足したもので割って算出します。
【占有率の算出方法】 (通話時間+保留時間+後処理時間)÷(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間) |
占有率が高いと待機時間が短く、オペレーターの負担が大きいことが分かります。一方で、占有率が低いとオペレーターの待機時間が長く、適切な人材配置ができていないことになるでしょう。
占有率と稼働率の関係
稼働率はオペレーターの「労働時間全体」の中で顧客対応を行う割合を示す指標ですが、占有率は「生産時間」の中で顧客対応を行う割合です。
2つの指標を一緒に把握することで、生産性やオペレーターの管理がしやすくなります。例えば、占有率と稼働率が高い場合は、オペレーターの負担が非常に大きいことになります。オペレーターの増員を含めて、運営方法を見直す必要があるでしょう。
占有率と稼働率が低い場合は、オペレーターの待機時間が長く顧客対応時間が少ないと判断できます。オペレーターの配置や勤務時間の見直しを検討しましょう。
②応答率
応答率とは、コールセンターへの入電に対してオペレーターが対応できた割合のことです。
コールセンターへのつながりやすさを示す指標で、90%以上が理想だと言われています。
応答率は、オペレーターが対応できた入電数を全体のコール数で割って算出します。
【応答率の算出方法】 オペレーターが対応できたコール数 ÷ 全体のコール数×100 |
例えば、全体のコール数が200でオペレーターが対応できたコール数が160だとすると、160÷200×100で応答率は80%となります。
応答率が高いと顧客からの入電を逃すことなく、対応できていることになります。一方で、応答率が低いと顧客の対応ができるオペレーターが不足しており、顧客を待たせている状態です。
応答率はオペレーターの不足だけでなく1コール当たりの対応時間が長くても低下するため、適切なオペレーターの配置と対応時間の確保が必要です。
応答率と稼働率の関係
稼働率は勤務時間内にオペレーターが顧客対応をしている割合が把握できますが、適切な処理ができているのかまでは分かりません。応答率と一緒に管理をすることで、顧客が利用しやすい状態を維持できているのか分かります。
例えば、稼働率が高く応答率が低い場合は、入電が集中しておりオペレーターが対応しきれていない状態です。一方で、稼働率が低く応答率が高い場合は、適切な顧客対応ができ、かつオペレーターが余っていると考えられます。
このように、稼働率と応答率を一緒に管理すると、より現状が把握しやすくなり、的確な対策を検討できるようになります。
コールセンターの稼働率を適正に保つための4つのポイント
最後に、コールセンターの稼働率を適正に保つためのポイントをご紹介します。稼働率は、高すぎても低すぎても何らかの問題があります。
適正なラインを維持するにはどのようなことが大切なのか、参考にしてみてください。
適切な人員調整を行う
1つ目は、オペレーターを適切に配置することです。顧客からの入電が多いのにもかかわらずオペレーターが少ないと、一人当たりの負担が大きくなるので稼働率が高くなります。
逆に、オペレーターが大勢いるのに顧客からの入電が少ないと顧客対応時間が減るため、稼働率が低くなります。つまり、適切な人員となるように細かく調整することが稼働率を保つための重要なポイントとなるのです。
具体的には、過去のデータ一覧をもとに、必要なオペレーターの席数を分析するといいでしょう。例えば、週末に入電が集中する場合は週末のみ席数を増やす、午前中の入電が少ない場合はオペレーターの出勤時間を調整するなどの工夫が有効です。
また、オペレーターのスキルを考慮したシフト管理をすることも重要です。新人のオペレーターが多いと研修時間の確保が必要なので稼働率は低くなります。一方で、顧客対応に慣れているオペレーターが多いと効率的に業務を回せるため、稼働率が高くなる可能性があります。
このように、過去の稼働状況やオペレーターのスキルを踏まえて、稼働率が維持できる人材配置を検討してみてください。
非生産時間を計画的に取り入れる
2つ目は、非生産時間を計画的に取り入れることです。オペレーターを顧客対応業務のみに従事させると稼働率は高くなります。
オペレーター一人ひとりの稼働状況を見ながら、計画的に非生産時間を設けることで稼働率の上昇を抑えられます。非生産時間には、下記のようなことを行うといいでしょう。
・スキルアップに関連する研修を実施する
・新人のオペレーター向けにマナー教育などを実施する
・他のオペレーターと交流する機会を設ける
・オペレーター一人ひとりの課題や目標設定を行う1on1を実施する
研修は非生産時間ではあるものの、オペレーションのスキルの向上につながります。また、オペレーター同士がつながりを持つ機会を作ると相談がしやすくなり、働きやすい環境を構築できるでしょう。
オペレーションのコンディションに配慮する
3つ目は、オペレーターが疲弊しないよう工夫することです。オペレーターによって、疲労を感じる業務量は異なります。無理をして働くと、離職や体調不良を招くきっかけとなります。
体調不良や離職によりオペレーターが不足すると、限られた人数で業務を実施しなければなりません。その結果、稼働率が高くなりオペレーターの負担が大きくなるという悪循環が起こるのです。
そのため、オペレーターに無理をさせない仕組み作りが大切です。例えば、出勤時に健康チェックを実施して、一人ひとりのコンディションを確認するのもひとつの方法です。
また、定期的に管理者と面談して業務の負担感や悩みごとなどを確認するのもいいでしょう。このような資料や結果をもとに、オペレーターが働きやすいシフトを考慮することで、稼働率が高くなる原因を未然に防ぐことができます。
稼働率を適正化できるツールを導入する
4つ目は、稼働率を適正化できるツールや機能を導入することです。コールセンターの稼働率適正化をサポートするツールにはさまざまなものがありますが、今回は2つご紹介します。
①IVR
IVR(Interactive Voice Response)とは、自動音声応答システムのことです。顧客からの電話を受けたら、まずはIVRの自動ガイダンスが流れます。顧客の入電内容に応じてプッシュ操作を行い、自動音声での案内もしくは適切なオペレーターにつなげるところが特徴です。
例えば、修理案内担当のオペレーターや商品案内担当のオペレーターなど、オペレーターのスキルに応じて振り分けができます。顧客の要望を一からヒアリングする手間も省けるため、応答時間の短縮とオペレーターの負担減少につながります。
②コールバック予約
コールバック予約とは、顧客がコールセンターからの折り返し電話を希望する時間を予約し、指定時間にコールセンター側から電話をかけるサービスです。コールバック予約を活用すると、入電が集中してもオペレーターの負担を増やすことなく対処ができます。
また、顧客からの入電を分散できるため稼働率を管理しやすくなります。顧客側にとっても待機時間がなくなり、対応可能時間にゆっくりと話ができるため双方にメリットがあります。コールバック予約の活用事例やメリットは下記の記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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適切な稼働率を維持することが大事
コールセンターの稼働率は、高すぎても低すぎても何らかの問題を抱えています。適切な稼働率を維持できるように、適切な人材配置や非生産時間の有効活用が欠かせません。
今回ご紹介したコールセンターの生産性を管理するKPIとともに、コールセンターの最適化を図るための指標として取り入れてみましょう。