需要予測に必要な10のデータと精度を上げるための方法
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適切な在庫管理のために需要予測を活用したいけれど、どのようなデータを用意するべきか迷っているという方は多いのではないでしょうか。
この記事では、在庫管理をするときに必要なデータと、データを活用するときのポイントをご紹介します。需要予測を始める前に知っておくと役に立つ情報ばかりなので、ぜひお役立てください。
目次
需要予測には社内データと外部要因データが必要
需要予測とは過去のデータから需要の見通しを立てて、適正な在庫管理や機会損失の防止に役立てることです。需要予測には「需要を予測するためのデータ」が必要ですが、主に社内データと外部要因データの2つを用意します。
必要なデータ | 概要 | データ項目 |
社内データ | 社内に蓄積されているデータや 社内で収集できるデータ |
・販売実績 ・在庫数 ・販売計画 ・販売チャネル ・顧客データ ・予約データ等 |
外部要因データ | 人的なコントロールの 難しい事象のデータ |
・天気や季節 ・曜日や時間帯 ・市場データ ・競合データ等 |
社内データとは、社内での蓄積や収集が可能なデータのことです。一方で、外部要因データは天気や季節、市場データなど、人的なコントロールが難しい範囲のデータを指します。この2つを組み合わせることで、需要予測の精度を高めることができます。
では、社内データと外部要因データには、どのようなデータが含まれるのか次の章から詳しく解説していきます。
需要予測に必要な6つの社内データ
まずは、需要予測に必要な社内データをご紹介します。需要予測の精度を高めるには、どのようなデータを収集する必要があるのかチェックしてみてください。
販売実績
販売実績は、過去から現在に至るまでの商品やサービスの売上実績のことです。
- 月ごとの売上実績
- 季節ごとの売上実績
- 年間の売上実績
など、さまざま切り口で蓄積しておくと、需要予測に役立ちます。例えば、毎月の販売目標との差や販売コストなどを把握できます。一時的に売れた商品や季節ごとに人気のある商品なども把握でき、販売戦略が立てやすくなります。
在庫数
商品ごとの在庫数は、蓄積しておきたいデータです。利益を最大化するには、適正在庫数の管理や維持が欠かせません。在庫の変動を把握しながら、欠品や余剰在庫が起こらないように適宜調整ができるようになります。
とくにクリスマスケーキやバレンタインチョコレートなどの季節商品は、多くの在庫を抱えると廃棄や値下げ販売をせざるを得ないケースがあります。在庫数を活用して需要予測ができれば、過去の傾向やデータを参考に戦略的な在庫管理や予約管理を実現できます。
販売計画
実際の販売実績だけなく販売計画データを用いることで、計画との差や過去の計画との比較ができるようになります。例えば、蓄積された販売計画を分析すると、需要の変化や販売計画の精度を可視化できます。
そのうえで、販売実績や在庫数など他の需要予測データを踏まえ販売計画を策定することで、経験や勘に頼らない適正な判断ができるようになります。
販売チャネル
店舗やECサイトなど1つのチャネルに限定せず複数のチャネルや店舗を展開している場合は、顧客が商品やサービスを購入したチャネルを蓄積しておくといいでしょう。
地域やチャネルによって売れる商品が異なる場合は、あらかじめ認識して在庫を確保することで機会損失を防げます。チャネルごとに売れる商品の傾向を掴めれば、チャネルごとの特徴を活かした販売戦略を考えることも可能です。
顧客データ
顧客データを蓄積しておくと、販売実績や販売チャネルと組み合わせて、より精度の高い需要予測ができるようになります。
例えば、人気がある商品を購入している顧客の年齢層や属性、特徴を分析すると、マーケティングに活用できます。リピートの頻度や再購入のタイミングなども把握できれば、需要の変化に応じたアプローチも可能です。
予約データ
販売データとは別に、事前注文など商品を予約販売することにより、予約データが蓄積されます。予約データには予約をした日(予約受付日)や予約したサービスや商品を受け取る日(予約日)等が紐づきます。
需要予測に必要な4つの外部要因データ
続いて、需要予測に必要な外部要因データをご紹介します。外部要因データがあるとさまざまな視点から分析ができるようになるため、参考にしてみてください。
天気・季節
天気や季節などの自然現象の変化は、顧客の購買活動に影響を与えます。分かりやすい例では暑い季節には冷たい飲み物が売れますし、クリスマスやお正月など季節のイベント時には関連商品が売れます。
これを自社の商品やサービスに置き換え、天気や季節による需要の変化を蓄積していきます。自然現象の変化による商品やサービスごとの売れ時を把握することで、長期的な販売計画が策定できます。
曜日・時間帯
商品やサービスが売れる曜日や時間帯を蓄積しておくことも大切です。とくに販売期間の短い商品や生鮮食品は売れる曜日や時間帯を把握して、利益を最大化するための工夫が必要です。
例えば、過去のデータから日曜日の午前中と夕方に売れる需要予測を立てた場合、この時間帯に商品を切らさないよう在庫を確保する手配ができます。
市場データ
自社の商品やサービスに関連する市場データは、需要予測に欠かせません。市場データの一例としては、下記のデータが該当します。
- 業種の市場規模の変化
- 業種が関連するトレンドやニーズの変化
- 業種が関連する価格の変化
- 業種が関連する法律や技術の変化
例えば、自社の関連する市場規模が拡大していれば、過去の需要予測よりも前向きな販売傾向が策定できるでしょう。一方で、自社商品やサービスが関連するトレンドやニーズに変化があった場合は、マーケティング戦略や需要予測を再検討する必要があるかもしれません。
このように、蓄積した市場データと社内データを組み合わせることで、客観的な視点を取り入れた需要予測ができるようになります。
競合データ
自社の競合データを取得できる場合は、需要予測に活用しましょう。自社との比較に使用したい主なデータは、下記のとおりです。
- 競合の製品やサービスのモデルや強み、市場規模
- 競合の詳細やサービスの販売、生産実績
競合他社のデータと自社のデータを比較することで、マーケティング戦略や販売戦略に活用できます。例えば、競合他社の商品の販売実績が伸び悩んでいるようなら自社の強みを全面に出して、市場拡大を狙う策略、的確な需要予測を検討することも可能です。
需要予測に必要なデータを活用するメリット
ここでは、需要予測に必要なデータを活用するメリットをご紹介します。需要予測をすると具体的にどのようなメリットがあるのか理解できるので、参考にしてみてください。
在庫を適正化できる
1つ目は、適正在庫を維持しやすくなるところです。在庫を抱える企業にとって、在庫管理は大きな課題となっています。余剰在庫と在庫不足はともに利益の縮小へとつながるため、適正な在庫を維持できるようにしたいところです。
余剰在庫 | 廃棄や値下げを検討しなければならない |
在庫不足 | 購入希望者に商品が渡らず機会損失となる |
在庫数や販売実績、天気や季節などのデータを使い精度の高い需要予測ができれば、適切な量の在庫を用意しやすくなります。その結果、在庫管理にかかる負担の減少や利益の最大化が実現できます。
長期的な計画が立てやすくなる
2つ目は、長期的な販売計画が立てやすくなるところです。時代の流れが早いといわれる現在においては、短期的な事業計画や販売計画だけでは利益を最大化できません。
例えば、今販売している商品が将来的にどの程度需要があり利益を創出できるのか、予測を立てて戦略を考える必要があります。
需要予測があれば過去のデータをもとに、今後の展開や売上が予測しやすくなります。長期的な計画を見越して、資金繰りや商品開発などを検討できるようになるでしょう。
競合他社との差別化を図れる
3つ目は、競合他社との差別化が図れるところです。日々の業務の中で自社の商品やサービスに焦点をあてて見ていると、強みや特徴が掴みにくくなります。
需要予測では自社の販売実績や顧客データ、競合データを扱います。分析をしている中で、自社にしかない強みやマーケティング戦略に気付くことも多いです。例えば、競合他社よりもECサイトで突出して売れている商品があれば、顧客のニーズと商品が一致しているといえます。
この需要予測をもとにECサイトで大々的に販売をすることで、利益の拡大が狙える可能性があります。このように、競合他社と差別化を図り、自社にしかできない商品展開や販売方法が検討できます。
需要予測は必ず当たるものではない
需要予測では、100%正確な予測ができるわけではありません。さまざまなデータを活用することで勘や従来の型に囚われない予測が実現できますが、どうしても誤差が発生します。
それは、日々の市場の変動や消費者ニーズなどさまざまな要因により、商品やサービスの需要は刻々と変化するためです。
しかし、ポイントを押さえることで需要予測の精度を高めることは可能です。次の章で解説するポイントを押さえると、需要予測の精度を高めることができるため参考にしてみてください。
需要予測の精度を高めるデータ活用のポイント
ここでは、需要予測の精度を高めるデータ活用のポイントをご紹介します。どのような点に注意するべきかチェックしてみてください。
基準とする項目を決める
需要予測をするときは、基準とする項目を決めておきましょう。項目の一例としては、下記が検討できます。
- 商品やサービス
- 時間帯や季節
- 販売チャネル
- 販売エリア
例えば、商品を基準とする場合には、販売している商品ごとの需要予測や商品カテゴリーごとの需要予測など商品を軸に検討します。
一方で、季節基準をする場合は、過去の夏や冬の商品の需要を分析します。分析結果をもとに夏に売れる商品、冬に売れる商品を検討し需要予測をおこないます。
複数の視点で需要予測をすると結果が定まらなくなるため、目的に応じて1つの項目に基準を絞ることで精度を高めましょう。
データの質を高める
需要予測に使用するデータの質が低いと、需要予測の精度も下がります。そのため、データの質を高める工夫が必要です。とくに、下記のようなケースには注意したいところです。
- データを紛失するまたはデータの一部ページがない
- データの信憑性が低い
例えば、1ヶ月分の売上実績がないと、その分需要予測に使用できるデータが減り精度が下がります。必要なデータを蓄積できるシステムやツールを活用して、データの質を向上させるようにしましょう。
異常値の基準を決めておく
需要予測を開始するときには、異常値を決めておきましょう。例えば、大々的な宣伝により一定の商品が大幅に売れたとします。しかし、これは一時的な需要の高まりであり、1ヶ月程度しか続きませんでした。
このようなイレギュラーな需要の高まりや落ち込みを含めてしまうと、需要予測の精度が下がります。「在庫数〇〇個以上は異常値」「販売数〇〇個以上は除外する」など需要予測に含めない範囲を確認しておくことが重要です。
需要予測には需要予測システムの活用がおすすめ
ここまで解説してきたように、社内データと外部要因データがあれば需要予測ができます。しかし、社内でデータを収集、分析し、需要予測を算出するには時間と労力がかかります。人的なミスや負担により、データの質が下がることも考えられるでしょう。
そこで、需要予測をおこなうときには需要予測システムを利用することがおすすめです。必要なデータさえあれば需要予測を自動化し、在庫管理や会社のマーケティングなど活用したいシーンで使えます。
昨今ではAIを活用し、予測の精度を高める構築システムも登場しています。在庫管理や販売戦略などに長期的に需要予測を活用したい場合には、導入を検討してみるといいでしょう。
需要予測に必要なデータを使い在庫管理を最適化する
需要予測に必要なデータを用意できれば、すぐにでも需要予測を開始できます。需要予測が活用できると、在庫の最適化や長期的な販売戦略の策定など的確な対応ができるはずです。
今回ご紹介した需要予測に必要なデータや精度を高める方法を参考にしながら、需要予測ができる基盤を整えてみてください。