自動車工場見学予約の調査~小学校団体優先予約もあり~
調査
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実際に製造工程をオープンにすることで興味や安心感をもたらすだけでなく、顧客ロイヤリティにもつながる工場見学。今回は、全国の自動車製造業の工場見学について調査しました。
実際の製造現場を見学するものと、博物館のような形をとるものを合わせて14社を対象とし、その予約の流れや詳細についてご紹介します。
<調査方法> 調査期間:2023年12月13日(水)~12月20日(水) 調査地域:日本全国 調査対象条件:独自のHPで自動車工場見学を実施している企業 調査対象選定方法:Google検索 調査数:14社 |
目次
自動車製造の工場見学
基本的に、工場見学では実際の施設や設備、製品が製造される過程を見ることができますが、近年は現場まで足を運ばなくても、インターネット上で同様の体験ができるものもあります。
今回の調査対象となった自動車工場見学は、以下の4種類に分類されます。
- 来場型見学:実際に工場に出向いて製造工程を歩きながらみることができる
- 博物館見学:歴史と製造にまつわる内容を写真、展示品、映像でみる
- リモート見学:企業とインターネットを通して接続し、リアルタイムで案内や映像をみて、質疑応答で交流する
- バーチャル見学:インターネットやVR機器などを通して映像で見学が体験できる
自動車工場見学のコンセプト
自動車工場見学をおこなう企業では、それぞれさまざまなコンセプトがあるようです。
各社のコンセプトは、概ね以下のようになっています。
- 車両の展示や体験コーナー(体験・発見できる施設)
- 製品や企業の歴史紹介
- 小学生をはじめとした子どものための社会科見学
- 大人の知的好奇心を刺激する体験
- 五感で感じる工場ツアー
- 設備や工場内環境、技術力を紹介
- 顧客や取引先、グループ企業の職員との情報交換・交流の場
自動車工場見学のターゲット
今回の調査対象となった工場見学のターゲットをみると、学校団体のみを対象としている施設は14社のうち5社で、残りの9社は一般にも解放しています。
中には、小学5年生のみと限定してツアーや枠を設けているところもありました。これは、社会科学習のカリキュラムの一環に関係していると推測されます。
予約について
ここからは、自動車工場見学における予約についてみていきたいと思います。
今回の調査対象の工場見学における「参加者の区分」による予約の流れに注目してみましょう。
参加者区分は、以下の通り大きく3種類に分かれています。
- 一般個人:要予約(博物館は予約不要のところもあり)
- 一般団体:要予約
- 小学生団体:要予約
予約は[予約フォームより必要事項を入力⇒申し込み受理の連絡受け取り⇒予約可否の連絡⇒確定]といった流れが主流となっていました。団体の見学については、事前に名簿の提出が必要となるところもあるようです。
予約が必要な場合は「予約制」「完全予約制」のように明記のうえ、予約の流れや予約可能な期間、予約フォームや連絡先などの詳細が記載されています。博物館見学の場合、一般個人は不要のケースもありますが、それ以外では基本的に予約が必要となっていました。
具体的な予約の事例を以下にご紹介します。
予約後は抽選による決定
静岡県にある「スズキ歴史館」では完全予約制で見学ができますが、毎年9月から1月の平日は小学校の社会科見学を優先的に受け付けています。小学校社会見学コースでは、スズキ湖西工場、または相良工場と合わせて見学することができ、先着順ではなく抽選で予約決定する形が採用されています。毎年6月から7月にインターネットで申し込みが可能です。
▼参考
https://suzuki-rekishikan.jp/pages/tour
小学校見学の予約を優先に開始
群馬県にある「スバルビジターセンター」では、希望日の60日前から見学予約ができますが、小学校は希望日の90日前からの予約が可能となっています。まずはカレンダーから希望日を選択し、仮予約として必要な情報を入力して申し込みます。その後、5営業日以内に予約の可否がメールで届き予約確定という流れになっています。
▼参考
https://subaru-factory.resv.jp/
申し込み後名簿提出
静岡県の本田技研工業株式会社トランスミッション製造部では、団体を対象とした工場見学を実施。希望日の3か月前の1日から10日にかけてインターネットで申し込みができます。申し込み月の25日までに見学可否の回答がメールで届くので、見学申込書と名簿を提出して申し込み完了となります。
▼参考
https://global.honda/jp/hamamatsu/
見学コースによって予約方法が異なる
いすゞ自動車藤沢工場に隣接する「いすゞプラザ」では、小学校5年生の授業の一環としてのみの社会科見学コースを設けています。こちらは開催日が明記されていないため、電話で問い合わせして予約する形となっています。
また、同じく小学5年生を対象に、各クラスとリモートでつなぎ双方向での質疑応答なども交えた「いすゞバーチャル社会科見学」も開催されていますが、こちらは申込書をFAXで送信して、実施確定日がメールで届くという流れになっています。
▼参考
https://www.isuzu.co.jp/plaza/exhibition/education/
参加人数で予約方法が異なる
大阪府にあるダイハツ工業株式会社の史料展示館「ヒューモビリティワールド」では、一般見学は毎週土曜日のみで事前予約不要(10名以上の団体は事前予約要)となっています。ただし、小学5年生を対象とした社会科見学は、休館日を除く平日の午前と午後の2部制で受け付けられています。希望日の2か月前からWebサイトの予約フォームより予約できます。
▼参考
https://www.daihatsu.com/jp/facilities/hw/guide//index.html
所要時間とアテンド
それぞれの施設見学に要する時間や、ガイドなどのアテンドがあるかについてみてみましょう。
所要時間は短いところで45分、最長130分、平均して約100分、最も多かったのは120分でした。
また、ガイドなどのアテンドについては、一部自由見学の施設もありますが、専任スタッフなどによる案内つきとなっているケースが多いようです。
独自の取り組み
ここからは、自動車工場見学において、独自の取り組みをしている事例をいくつかご紹介します。
川崎重工グループ
兵庫県神戸市、神戸海洋博物館内にある「カワサキワールド」は、科学館としても遊びながら学べる施設です。こちらでは、お仕事体験ができるイベントを開催しています。
▼参考
https://select-type.com/rsv/?id=_k2JJh_-LxA&c_id=223919
三菱自動車工業株式会社
国内の各製作所で工場見学をおこなう三菱自動車では、2005年より各自治体の教育委員会などと連携し、工場見学のための来場が難しい小学校を対象とした体験プログラムを実施しています。
人と環境に配慮した生産について学ぶ「SDGs編」や、スケッチや粘土のモデルを削る体験を通し自動車に携わる仕事を学ぶ「デザイン編」、工場での工具を使った体験を通し働く工夫を学ぶ「ものづくり編」などがあります。エリア限定で対面授業もおこなわれています。
▼参考
https://www.mitsubishi-motors.com/jp/sustainability/contribution/society/factory/
UDトラックス株式会社
埼玉県上尾市、UDトラックス本社工場では、敷地内にある「UDエクスペリエンスセンター」を中心に体験型プログラムを実施しています。同センターは一般公開されていませんが、担当者に問い合わせすることで、センター見学、工場見学、試乗という3つのパートで構成された体験が可能です。また、こちらではYouTubeで工場内の各製造工程を公開しています。
▼参考
https://www.youtube.com/playlist?list=PLaE-1HSbmr5WYvfnjCIWd8HoGnKxQXaD_
まとめ
自動車工場の見学の多くは事前予約が必要となっており、一般と小学校団体の枠が区別されているケースが多くありました。予約開始日についても小学校団体が優先されている傾向にあるようです。
また、全国を対象としたリモート見学や、エリア限定での対面授業といった取り組みをする施設もみられました。
いっぽうで、インターネット環境があれば誰でも閲覧可能なバーチャル見学、動画による工程紹介などを実施する施設も増えてきています。
小学5年生をはじめとした社会科学習カリキュラムの一環としてもニーズのある、自動車工場見学。ものづくりだけでなく、SDGsやデザインといった多くの分野への興味関心、そしてロイヤリティ向上などの面でも注目されています。