21_21-design-sight

2020/08/06

展覧会が事前予約制を導入するために必要な準備とは?~【21_21 DESIGN SIGHT |インタビュー】

はじめに

今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため2020年6月1日より「事前予約制」を導入し開館されている、21_21 DESIGN SIGHT企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」展を取材させていただきました。

今回の取材では、初めて事前予約制を導入するにあたり、運用・準備面で工夫をされている点や、大変だった点を伺いました。

「21_21 DESIGN SIGHT」の事前予約制の概要

2020年6月1日より順次プログラムを再開、不特定多数の方のご来館による新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止のため、ウェブサイトでの事前予約制によるご来館受付を開始しました。

21_21 DESIGN SIGHT 予約画面

http://www.2121designsight.jp/reservation.html

事前予約制は、時間ごとの来場制限を設けている中で、お客様が予めウェブサイトで来館の日時を予約するという仕組みです。
当然その目的は「混雑を解消し、密を防ぎながらお客様に安全に来場していただく」ことになります。

事前予約制を導入するまでの準備

これまで美術館や博物館など多くの展示施設では、ウォークイン(予約をしないで直接来館すること)による入場方式でした。事前予約制による入場制限を行う場合、どのような準備が必要となるのでしょうか。

時間当たりの来館数上限について

真っ先に私が気になったことが、『どのような基準で来館ルールを作られたか』ということです。
「密を避けながらお客様をいかに満足させるか」、このお題目を達成するためには、どのようなポイントで数値を組み立てるかが重要になってきます。
まずは、来場人数の設定について伺ってみました。

「仮に来館者全員がメイン会場で観覧された場合、一人当たりが確保できる面積に妥当性があるか」という観点から、メイン会場の広さ約500平米から時間当たりの上限人数を設定されました。
しかし実際には、観覧ペースも滞在場所もバラバラで、スペースにかなり余裕があることが判明しました。
そこで、当初スペースに余裕をもって時間当たりの入場数を40人でスタートしましたが、今では徐々に様子を見ながら受け入れ人数を増やされています。

初めてのシステムに合わせたオペレーションを組立

これまでの予約なしに来館、チケットを購入いただくというオペレーションとは全く異なる事前予約制を始めるにあたり、「21_21 DESIGN SIGHT」様ではWebによる予約システムを導入されました。その際にどのような準備や考え方が必要だったのでしょうか。

初めての試みの上、参考になる同業態の事例が少なく、何を決めればよいのかも分からなかったため「予約システムの導入で何ができるのか?」をもとに実際のサービスの流れを組み立てていきました。
事前予約という言葉にはあまり難しい印象はありませんが、まずはシステムを設定するために、例えば来館時間や、滞在時間、キャンセルの連絡方法などを決めていきました。

事前予約から来館までを顧客視点で体験

21_21 DESIGN SIGHT 入口

前述のお話を伺いながら、事前予約制を導入された展示会を、顧客視点で実際に体験してみました。

予約方法

空き状況が「〇△×」で表示されている

ウェブサイトの事前予約案内ページから「ご来場予約フォーム」にアクセスし、当日の来場人数等と共に1時間ごとに刻まれた来館日時を選択、個人情報を入力すると確認メールが送られてきます。
「ご来場予約フォーム」では、日時ごとの混雑状況がカレンダー表示で一目でわかるようになっており、スムーズに空いている日時を選択することができます。
来館日時を選択すること以外は、通常の問い合わせフォームと同じ流れといったところ。決済は予約時になく現地で行います。

予約時間に入場

受付にはデバイスが置かれ、スタッフが予約を確認しています

施設に到着すると、まず検温を受けたのち、スマートフォンの確認メールを見せ、事前予約の内容を確認してもらいます。その後に手指の消毒を受けてチケット購入しました。

来館にあたってのルール

来館されるお客様へ注意喚起も館内の随所にあります

グループでの入場は4人まで。自分が予約した時間の中であればいつ来場してもよい仕組みで、観覧時間は90分までとなっています。

入場制限により館内をゆっくりと見学できます

今回は、11時~12時の時間で予約を行っていましたので、その時間内に受付を終えれば、受付後90分が観覧時間となります。1時間あたりの受付人数は60人(2020年7月現在)となっています。

事前予約制に移行したことで得られるメリットや気づき

21_21 DESIGN SIGHT 舩山氏にお話を伺いました

入館状況の可視化

今までの通常営業時では意識していなかった時間ごとの入館者数。それがシステムによる事前予約制に移行したことで、予約データとして見ることができるようになりました。
例えば、これまでは平日と週末のお客様の違いを肌感覚でしか把握されていなかったのが、明確にどの時間帯に何人来場されるのかが見えるようになりました。
時間ごとの予約数と実際の来館状況が正確に把握できるので、今後の安全な集客対策に活かしていくことができます。

予約システムの役割と人の役割

「予約システムが『いつ・何人来館するのか』をコントロールしてくれるため、事前予約システムは混雑緩和には確実に貢献している。しかし実際に来館された後は、あくまでも人が対応するもの」と語る舩山氏。

事前予約の決済などで来館後の流れまで完全に縛ってしまうことは、逆にお客様への不便性を与えてしまうことになりかねないのではないか、というお話が印象的でした。
予約システムを使えない人には、電話などから予約代行をするケースもあるそうです。

キャンセルや入館時間について

キャンセル連絡は前日夜に最も多くなりますが、いわゆるドタキャン的なキャンセルは少ないとのことでした。これもデータの見える化により分かるようになりました。

また、予約はあくまでも「入館可能時間」に対する予約ですが、実際は予約開始時間の少し前に来られるお客様が多くいらっしゃいます。入場時の混雑を回避するために、今後は「入館可能時間の間であればいつでもよい」とご理解いただけるように、人の心理的な側面も考慮したオペレーションにつなげていきたいとのことでした。

これからの展示のあり方について

まだまだ世の中が自粛ムードで制限下にある中、いかに安全に来館してもらえるかが課題と言えます。
これまでは「いかにたくさんの人に来館してもらえるか」を考えてこられたため、まさに新たな課題に直面されている状況です。
事前予約により混雑は解消されていますが、これまで実施できていた「触れることのできる体験型の展示」は実施できていません。一方でSNSなどでは、ゆっくりと自分のペースで鑑賞することができた!との感想も散見されるようです。

経営的視点から鑑みると、混雑解消は来場数の減少を招きます。
単なる予約制の仕組み導入に終わらず、「より安全に、これまで以上のサービスを提供できるような現場オペレーションをいかに構築するか」がこれからの課題と話されていました。

取材を通じて

世の中には、既に事前予約制が定着・浸透しているサービスがたくさんあります。例えば、飛行機のチケットなどは既にほぼ完全予約制で、搭乗までのオペレーションやルールが完成しています。
しかしながら、博物館や美術館の業態における事前予約はこれまでの事例が極めて少ないのではないでしょうか。
システムを導入するだけで完結するのではなく、経験値をもとにサービス向上につなげていくことが必要と感じます。

仮にコロナと付き合っていかなければいけない時代が続くなら、分散化された集客と共に、これまで思いつかなかったようなサービスを作り出し収益力につなげていかなければなりません。
まさに現場では手探りの中、お客様に安全で喜んでいただけるサービスを作り上げていらっしゃる最中だと思います。
新たなサービスが生まれることを期待いたします。

『21_21 DESIGN SIGHT』様 概要

21_21 DESIGN SIGHTはデザインを通じてさまざまなできごとやものごとについて考え、世界に向けて発信し、提案を行う場です。「日常」をテーマにした展覧会を中心に、トークやワークショップなど多角的なプログラムを通じて、訪れる人がデザインの楽しさに触れ、新鮮な驚きに満ちた体験をすることができます。
●住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
●開館時間:11:00 – 18:30(入場は18:00まで)
●休館日:火曜日、年末年始、展示替え期間

『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』について

■会期:2019年11月22日(金)- 2020年9月22日(火・祝)
■会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
■休館日:火曜日(12月24日、2月11日、9月22日は開館)、年末年始(12月26日 – 1月3日)、2月27日 – 5月31日
■開館時間:11:00 – 18:30(入場は18:00まで)
■入館料:一般1,200 円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
■予約方法:以下の「再開と事前予約制の導入について」ページをご一読のうえ、ページ下部の「事前予約を行う」よりご予約下さい。
http://www.2121designsight.jp/reservation.html

高士加藤
加藤 高士

様々な企業へCRMの導入支援を経て2012年4月株式会社ビジネス・アライアンスを設立。20年以上にわたり企業へマーケティング活動の支援を行う。マーケティングの視点から、予約ラボを通じて予約の可能性について研究を行う。

予約ラボでは、共同研究や予約に関する調査を行っています。

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